革命前夜


破滅的で愚直な魂を美しいと思うの
漁火 浮かび上がる炎
しじまに侵されるたび影は薄れゆく
もうわたしたちは光を遮断しないから
朝陽に溶けてしまうまで
ここで暗い海を見ていましょう

激しく願いつづけた神話への扉
決壊する前夜
手を握る 怖れはここにない
きみが残したサインを頼りに
ぼくは星屑を喉に宿した
その声を頼りにきみはここへ来た

狂った石は狂わせておけばいい
永久に続くのは前夜
目配せを交わす世界のシステム
軽々と時を跨ぎ 甦る絆
奔放に燻らす幻灯のなかの虚空
思うままを譲ることなく描き取っていく

豪奢にはみ出したインクの滲み
終わりなど来やしないのだから
ぼくたちはシステムより大きなコスモス
きみの窓辺に降らせた夜毎の花は
たった一輪 夢へと届いた
その髪に香る月下美人

たしか百万年ほど昔にも
わたしたちこうして出会ったわ

濁らせてきた夜の数だけ
瘡蓋の下の珊瑚
残さず取り出していくきみの指先はメス
ラピスラズリの朝靄が踊る
さざ波 新しい海 幾何模様の泡々
くちづけを 怖れはここにない