標本


光炎の紅く燃えたぎる導線を手繰ると
何時でも輪廻する意志を持つ地球と
貴方の燦々とした灯火(ともしび)に辿り着きます
爆発は予期されたことですかそれとも
鱗粉がいちめんに舞い息が出来ない
そうでなければあの蒼白い光が
二度と腐敗することのない酸素を送り届けてくれるのですか
おぼろげに白すぎる夢では
色のないやつれきった装飾でさえ
手を伸ばすに余りある贅沢に躊躇う
そして此処では色が在りすぎて
混じり合い生まれ来る命が名乗る
懐かしい沖積世の響きを聞き取るのに忙しく
それでも私は貴方に会うために
この旧い山道を一歩ずつ歩まなくてはならないのです
のし掛かる汎い空の重みを痺れるように受け止める
それは妖艶な苦痛で
苦痛とは常に妖艶なものです
透明さを焚いて立ちのぼる吐息のように
十三番目の虹の色を待つ峠にて
私はそれが既に成就したことを知りました