盗人


世界中があなたを 盗んだまま
返してくれないのは
私が 世界より大きく育つのを 待っているからでしょうか

手のひらに握った 石を
握りしめたまま 忘れ去っていた
異物は 身体の一部と化した
そうでなければ
その冷たさを 消せば
なだらかな 転落がつづくと 夢みていた

運針のかける 催眠に
目を閉じる
日常は乱雑に または
精密に降り積もる 不自然に白い粉
戸惑いつづけた脚は びしょぬれで
私を大地に 縛る
愚かさを 母に持つ 膠の匂い

中空に張りつめた 銀色の糸
どうしたらその一線を越せる
何故祈りは屈折し 空の隙間にこぼれ行く
黴の生えた 光の 速さ

いたみに膨れあがるなら そのかわりに
重力を解き放ち イカルスのように 陽に洗われて
恍惚のうちに 消えてしまいたい
そして私は 世界を 光にくべよう




2003/11/16