スコール


空が小豆色に折り畳まれる場所で
闇さえも小さな産声をあげる
線は切り裂き
粒子は拒絶する
知っています
あの場所でもういちど逢えること

仔牛の内臓に組み込まれた記号にも
涙を流すことを忘れて久しい
失ってきたの何をいつどうやって
悲鳴が悲鳴に重なる
ちがうちがうそれはまちがっている
顔という顔に
銃口に
羽音が降り積もる
聞こえるものは 静けさ
そして静けさ

それでもわたしの静けさは
あなたの静けさを知ることもなく
せまってくる あの扉が見える
ああ今日は何曜日

閉じこめられた石のなかから
世界が叫んでた
少女の手のひらに眠っても
天河をすべる夢の狭間にも
秘密は釘を刺したりしない
ありふれた小宇宙の在処など

せまってくる あの光が見える
波頭が輝いて
わたしはわたしの膜からあふれこぼれる

果てなど何処にもない
中心など何処にもない
だからわたしはもう叫ばない
あなたを呼んで泣いたりしない

黒い羽ばたきが西へと去っていく
蒼白い肌に影が移りゆく
古い地図は褪せ
太陽は干涸らびたわたしを照らしてる
だいじょうぶ
誰もがスコールを待っている
容赦ない黄金の雨が降る日
誰もがスコールを待っている