印画
その鳥居の色は 炎よりも紅かったね
歪んだ角度も 映っていたね
あなたの瞼の 裏側に
いつもそこに みつかる
そこでしか みつからない
あなたの見つめる 映像の複写だけ
いつもわたしは 探している

どこにでもある 今日のひとつの風景が
無惨に切り取られ 印画された遺物だとしても
大丈夫 同じ嘘をついているから
記憶を分かちあう 羊水の海で
つながっている
わたしたちの流れる この湿地帯でも
同じ春に かけがえのない光を知り
それぞれに降りかかる 美しさに泣き
溶けあう色を選んで 刻まれてきた
ちがうものは 言葉だけ

あの夕焼けを もういちど語って
わたしとちがう 台詞でも
もう こわがらない

鏡なんか見てないで
今すぐわたしの瞳を見ればいいのに