エキス




化粧する世界に舞い落ちる現
貴方の指を弄りながら
居るだけでいいと低く呟く
満ち足りた湖水の面によぎる静けさ
此処には何もない

仮象が鎧を纏い闊歩する現
眉間の奥の象牙色したスクリーン
映し出されるすべての年輪
すべての葉脈すべての根髄
貴方のエキスは生れ育った
雷雲より高く聳え立ち
雨の被膜で視界を包む
貴方が此処に居なくとも
目に映る何もかもに宿る
抱擁されず打ち捨てられる夜は無い
霧のように歌は流れる