深紅が渦巻いては収縮していく ペイズリーの天鵞絨を翻せば数無き落とし物 脈動が避雷針のてっぺんで高鳴りつづける 世界は膨らみすぎた水風船のように垂れ下がる あるいは老婆の乳房のように この腕の重みをあずけたい 何故に幻影は幻影を映し 存在し得ない苦しみを此処に奏でる 廃墟なら廃墟らしい唄を唄えと どうして赤は私を染め上げはしない 畳み込まれ熱情という十字架に晒されたいのに その小さな石のなか屈折する光の僅かな誤差が 私を破裂から守っている |
緩く揺さぶる透明で無機質な眠りを 狂った避雷針は何度でも突き刺した 今にも折れそうだと瞬きを叫き散らし ほんとうは殻を突き破りたいくせにその色は 静脈のなかだけしか流れない その欺瞞が愛しくてとても愛しくて 私は今日も気が遠くなる 貴方の色で私を中和して 囁く声は濁っていても閃光を放ち |