筆跡

駿馬のなかの歪み
表層に浮かんでは消える泡が
速度を散りばめた風前で言い做す
スリット越しに覗く迷いの無いはずの筆跡

置き去りにされた熱帯夜
とぐろを巻いた裏庭で
新芽は本能を零して走る
千切れた膜に気付こうともせず
生き急ぎすぎる性癖
待ちきれず迸る蜘蛛の糸
投げかけられた疑問符に
嘆声だけで答えていく

敢え無く冷えた珈琲の底の砂
沸き立つ憤りにも似た激情に
遠くとも確かな愛惜の香をおくる
今も貴方を想っています