空転する石


呪文を唱えて 転がる石が止まらない
呪文を唱えて 記憶のカーテン染みが消えない
重い願いに押し潰されて息さえ吐けない
どれほどブレーキ踏み込んだって遊びのないペダル

朝の気配が過ぎる瑠璃色の空に腫れた瞼を捧ぐ
輪郭を崩し取り乱した月は我を恥じ夜霧に紛れ
煙とともに吐き出す言葉がまた僕を絞首刑
暗転する画像に甘い夢だけ大事にしまって鍵をかけ
壊すことだけ怖がって触れられもしないその宝石


鳴らないクラクションを鳴らし続ける天に届けと
大地に唾した僕を雑草が哀しげに見上げる
神と悪魔は同じコインの裏表
翼を畳み石を握り続ける朴念仁
それがいつか卵のように孵るとでもいうのだろうか

呪文を唱えて 他のものなら何も要らない
呪文を唱えて まだこの息は続いている
夜明け前の空は一番暗いと誰かが云った
その文句は時代のエッジに擦り切れても
僕はあなただけを捜している

求めることはいつまでも若く苦い果実
腐りゆくことを怖れる僕の愚かな戯作