窪み


試験管に掬った青酸化合物の吐息
緩く揺さぶると あなたの香りは燃えさかる
漆塗りの雲がちぎれ 闇にはだけた月の肌
風が今 立ち止まった

夜の雫流れる 背中の窪み
その歌声に爪を立ててもいいですか
幻は殺し 幻として甦り
あなたは永遠に私のもの
指紋を埋め込むための平坦すぎる肌
気配が今 立ち止まった
舞い降りる音律たちの宴
折り重なる欠片のなかに私は捜す
約束なき約束を 揺れる炎を
此処に欲しい背中を 最後の一滴を
気狂いの狼は吠え方を忘れ
水際に立ち止まり ただ渇きを癒している