梳る


滑り行く熱源
炎となって舞い散ろうとする乱麻
その痼りを切り取るように
焼け焦げた記録帳の頁に鋏を立てる

止血する指紋の記憶が髪を撫で
あなたはただ眠ればいいと誘う
わたしの愛撫を覚えているなら
あなたには合致するはずだから

暗号めいた細い電波がコイルのように
あなたとわたしを縛り付け
茨となって苛もうとも
玩ぶべき唯一の希

ふたつの血が融解する試験管で
遠音さす山彦の彼方で
黒い穴たちの永遠の孤独のなかで
深い緑に祀られた水晶のなかで

その糸は梳 (くしけず) られていく 限りない柔らかさで
整列したその囁きにそわそわと 車輪は軋む