人魚


木漏れ日の下
あなたが一面に纏った鱗片が揺れた
玉虫色の光
あなたはそれでできている
言葉をください
たとえあなたがその声を差し出し
悪魔と取り引きしたのだとしても
芳しい真珠の地球を掌に
白亜の鐘楼を泳ぐ人魚よ

あなたの響きだけがこの胸に
限りのない祈りを呼び覚ます
茜の笑顔は容赦なく
僕の心を絞り出す
その滴と引き替えに
あなたの真珠をくれないか
この腕のなか微睡む人魚よ

あなたの声が僕に宿るなら
ふたりぶんの命振り絞り叫ぼう
それがどんなにちっぽけな呟きだったとしても
構わない
世界など揺るがせなくてもいい
僕らの真珠は今ここに
震えながら鳴っているから