夕凪




剥がれた雲のかたち 瞼に描き出し
誘う風の香 浮かべた羽衣
色を失くした鼓動 鼓膜の中の揺らぎ
かけがえのない声 

張りつめた弦に触れ 弾け染まった指
時躊躇い 夢語る 余剰の中の海原へ
漕ぎ出す命 羽音に騒ぐ向日葵
黄金の影

虹と共に散る夕陽 世界に融け入る恋の詩
滲む闇 透き通る呼吸
ぬくもり孕む 正八面体の光跡
重なり合う姿無きふたつの輪郭へと
今くちづけを捧ぐ