私のなかの海




その眸のなかに魂の輪郭を幾度もなぞりました
あなたのなかに何人ものあなたを見つけました
差し伸べられた指のかたち腕の曲線に
遠い記憶が泣きました

影が揺らぐたび蝋燭は冷え固まり
氷盤の上で花びらは散ることを拒み続け
何処にも雪崩れ込むことのない海は
荒れ狂う波で自らを削り取ってゆきました

だから私の海はとてもとても小さくなりました
この胸のなかに収まりきるほどに
だから誰にも告げずにこんなにも波打つことが出来ます
私の海にはあなたしか融けていない
何処を嘗めてもあなたの味がします

そして私の海はもっともっと小さくなりました
掌に掴めるほどに
頬を伝う涙の粒ほどに
そのちっぽけな鏡には宇宙の全てが映り込み
白い白い家のなか永久に透明な世界で
今日も愛が編み出されていくのを眩しく見つめています