南の涯て


熱砂に埋もれた慟哭を轍がまた轢いてゆく
かたむく地平線に熔けゆく錆びた鉄
軋んだ車軸 色褪せた両脚
失いつづけることで 炎にくべる
その横顔が澄み切った歓びが
残酷に飾り立てた額縁に眠るくらいなら
掻きむしる渇いた酒
始まりを追い 眩暈する終焉
右手のなかの右手を

焼却を繰りかえしても消えぬ灰
無垢な骨格さえ解きほぐしても
あの肌が薫らす微粒子(ヴェール)
窒息させるなどできやしない
記憶に繋がれた首で十字星に吠える
南の夜が仕立て上げた紙芝居を着込み
砂糖より苦い 後味の
大地に捧げる くちづけの

黄昏に浸された蝋燭のなか
貴方にまた逢えるなら
今宵も貴方を吹き消す風よ
神の吐息がふたりを分かてば
その喉仏にさえ手を伸ばす
同じ基音を持つ魂よ
煙る場末の夢の痕 映り込んだ澱むはずのない眼
時を殺すため歩み行く 未来
見知らぬ国に惑い もとめる
天球を滑る預言のような貴方を