甘い水


真夜中過ぎの喪失は
歯止めの利かない連鎖の刃
リプレイされる画像の劣化を
分別ある毛細血管が鎮魂する
破れた瞼の負債が走り
辻褄を合わせる涙は忙しく

庭の香草に水を撒いたの
余白に注ぐ甘い水
晩春の地殻に置き忘れられたその鞄
わたしはそれをひらけない
土の香がうねる
静けき自然は暴君で
率直な花の時間でさえ乱す
チキンスープに浮かぶ蝿
窓の外に赤らんだ闇

わたしは花を開いていますか
綺麗だと云ってくれますか

あしたの朝に訊ねよう
夜露が乾くその頃に
とおい泉は湧き溢れ
森は湖水に沈んだという








2002/4/04