温かい雨


雨垂れが零れている
限りある命の飛沫 さざめかすため
曇った硝子を流れ落ちる水滴の描線
色のように寄り添いましょう
小さな部屋 灯りの陰に琥珀が踊る

冷えた指が舞い 貴方の肩に蝶となって留まる
闇に装飾されたその瞳は光を宿し
私の髪のひとすじずつを梳いてゆく
水瓶に溢れんばかりに詰め込んだ花束を背景に
流れる術を知らなかった涙は地下水脈へと還っていった
ささめごと 白い蒸気 狼煙となって宙に棚引く
貴方の背負った龍神がふたりを護りに駆けつける
雷鳴よ 酷い日々の悪戯から遠ざけて
その白さで儚いこころを霧のように潤して
散った花びらが手向けられた薔薇のように凍っても

温かい雨 夢もうつつも洗い流していく
知らず知らずそのスピードで旅をする
ギベオンの時計は進みを弛めた
刹那という名の鳥籠に飼われたカナリア
美しい歌しか知らずに生きた