残照


照りつける路面に焦がされたゼリーの渦の中
目を閉じて歩み行く砂浜の砂時計
ゆるやかさに処罰されるひしゃげた快楽と共犯に
届かない宛名の滲んだ封筒を
涙とともにポストへと呑み込ませました

一番云ってはいけないひとことが
限りなく単調な潮風に乗り
紙上に倦怠を噛みしめながら踊り狂い

ささやかに気怠さ流れる午後の運針やら
向かう先を持たない生活の乱打やら
その残酷に今日も守られながら予定通りに
鍋から吹きこぼれたスープの池で溺れるのです
行間に眠る残照を溢れさせないためだけに
慌てて頁をめくる指にまたあの傷が増えました
うたた寝に隙をつき吹き出す溶岩が
夕闇の降りる頃にはまた冷え固まるのです
膝から滑り落ちた本が床の上で泣きました

秩序無く舞い散る情景たちの孕みつづける微熱
何度でも印画されて甦る記憶
少しずつ気づかれず嘘を吐いてきた壊れた映写機

貴方は誰だったのですか