

こすられている間、私はカムサハムニダと練習していたのにも関わらず、言えなかった。ロンちゃんに聞くと何も言わなかったといい、会長は「アンニョンハセヨ。」って言ったという。挨拶もしない礼儀知らずの日本人と思われたのだろうか。だって、私は裸だ。理由にはならないけど、やっぱり恥ずかしい。こちらにどうぞと案内されたのでそのままついていき、シャワーを渡されて「自分で」といって、おばさんはどっかにいってしまった。自分でシャワーを浴びると他の人がしていたように出口にたって、別の係りのおばちゃんから、赤いバスローブを着せてもらった。そのおばちゃんにありがとうと日本語で言ってしまった。こすってくれた人にいうべきせりふだったのに。上にどうぞといわれて階段をのぼりかけたら、1番近いところにすわっていた人が「さよなら」といった。わたしも小さな声でさよならといいかえした。上にいくと、誰もいない。どこからかお姉さんが飛び出してきて、手首のかぎとオプションの札をみて「足ー足ー」と韓国語で叫んだ。足のマッサージと書いたついたてのむこうに呼ばれてまた、ベットに横になった。
係りの人は、股の間にタオルをはさんでくれて足をうごかしても見えないようにしてくれた。隣のベットに私よりも遅くおわった二人がやってきて、顔の石膏パックをしている。私は一分もしないうちに、このオプションを後悔しはじめた。くすぐったいのだ。足のうらに触るたびに体をよじってしまう。「感じる?」私の足を持つお姉さんがいう。なに、私は感じるつぼをおさえられているのか?石膏パックの係りの人も、「感じる感じる」と笑っている。そこらじゅうにいるひとが感じるといってくすくす笑っている。「感じる?」ってなんだろう。私は、かあなありい、我慢をしたけど、ほんとにかんべんしてくれとずーっと思ってしまった。地元のデパートに英国式の足のマッサージができてた。それに行った人が気持ちいいよっていってあったのを思い出して、これを頼んだのだ。わすれてた。私がくすぐったがりやなのを。笑いだしたくなるほど苦痛。ひーひーでひだり足が終わると、今度は右足。それほどこちらは感じなかった。わら。左足に重心があるので、足の裏も、痛んでいたのだろう。私は目の上にうでをのせて、くすぐったいのを我慢した。30分は長い。へろへろになって、ようやく終わった。おきあがるとみぽりんに似た人がにやにやしてロッカーに案内してくれた。私は変なところが感じるのだろうか。
私は、着がえてイスに座ると、今日はじめての化粧をした。のるのる。ファンデーションがきれいに塗れる。これだけでも、来てよかったと思えた。化粧をしていると石膏パックが終わったふたりがもどってきた。どうだったって聞くと、温かいのが固まってきたナーと思った瞬間にばきっと顔をゆがめて取られたとか。まるで製氷皿の氷を取るようにくいっとされたとか。もっと丁寧に扱って欲しいと、笑いながら言ってた。それなりにたのしかったみたい。
灰皿があったので、タバコをぷかぷかしていると、係りのお姉さんがきて、なにやら韓国語で言っている。状況から判断すると、ロンちゃんと会長は、お香を立てるものを灰皿にしてしまったらしい。ちょうどいいころ、ちぇいさんも迎えにきた。ちぇいさんは私たちにウーロン茶を買ってくれた。おいしい。胃にしみこむ。本物の灰皿がきてゆっくりしていると、後から戻ってきた人から、退いてくれといわれた。多分言われた。日本人にだ。はあーと思いながら更衣室をでて、部屋の真中にあるイスに座っていると眠くなってあくびがでる。ちぇいさんが眠くなったでしょうという。眠くなるのでほんとうは、夕方にきてそのままホテルに帰って寝るのがいいのですとも、いった。台風はこちらにむかっているらしい。傘をとりにホテルまで帰りますと、ちぇいさんは主張した。3人そろったところで、私たちはエステを後にした。もう午後1時をかなりすぎていた。入り口にたって呆然とした。外は嵐だった。横殴りの大雨。車がまだきてないとちぇいさんがいう。車がきてない?ちぇいさんはなにをしていたのだろう。あそこにずっと待っていたのだろうか。よくわからない。ガイドもたいへんだよね。やっと車がきたようで、私たちは相々傘をして、車に戻った。そのたった数メートルで、会長は決めた。なんでもんにいくのは無理。ロッテホテルをうろうろして過ごそうと。ちぇいさんにいうと、えー、せっかく韓国に来たのに、何も見ないんですか。とんでもんはどうですか?とか、困ったようにいう。きのう、なんでもんにいきたいというのを却下して、とんでもんに案内したのは誰だよ・・・とはいわない。夕食はどうするのかというので、自分達で適当に探していくというと、ロッテホテルにある食堂街を教えてくれた。ちぇいさんは、「じゃああ、ホテルについたら、午後からすべての予定をキャンセルすることを一筆ください」という。話がとぎれたとき、ちぇいさんに聞いてみた。「感じるってどういうことでしょうか?」「感じる?こころが感じることでしょうか。」「いや、・・・・・あの足のマッサージを受けたときに、感じる?っていわれて笑われてたんですけど。」「ああ、カンジロね。くすぐったいという意味です。カンジロカンジロ」・・・カンジロだったのか。感じる?に聞こえてた。なーんだ「くすぐったいのね?」って笑われていたのだ。最後にありがとうございましたと出口に案内してくれたみぽりんは、私の顔をのぞきこむように最後まで笑っていた。かわいいから、許せるけど。わら(きっとたくさん整形してる)