資料 「朝鮮学校外し」が妥当でない数々の理由
|
@
そもそも民主党はその「教育政策の集大成」としている「日本国教育基本法案」において「国民と限定するのではなく」、「何人にも『学ぶ権利』を保障」するとしている。このことは昨年の衆院選挙を前に出された民主党政策集INDEX2009にも書かれている。なお、この政策集では、国際人権A規約(社会権規約)13条についても触れられているが同条文では「締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。」と定めている。国民だけではなく外国人の子どもたちの学ぶ権利の保障を高らかに謳ったにもかかわらず、それが諸外国との関係によって左右されるというようなことは「権利」というものの性質からもあってはならないことであり、折角打ち出した理念に相反する行為である。 A
高校無償化施策の実施に伴い、特定扶養親族控除の廃止が予定されているため、朝鮮学校に対し高校無償化措置(就学支援金)が適用されないとなると保護者の負担は現状維持どころか、より大きくなる。これは差別を拡大することに他ならず、友愛精神に真っ向から逆らうものと言える。 B
朝鮮学校高級部に対する助成金は日本の学校のそれと比べて極めて少ない。東京都の場合などは、日本の私立学校と比べてもおよそ20分の1のレベルの助成金しか出ていない。*1 C
国際人権規約の自由権(B)規約委員会が2008年の日本政府報告書審査の結果出した最終見解においては、「朝鮮学校に対する国の補助金が通常の学校に対するものよりも相当低く、民間の寄付金に強く依存しているが、私立の日本人学校やインターナショナル・スクールとは異なり、これらの学校が免税対象外又は税金控除対象外であること、また、朝鮮学校の卒業証書がそのまま大学入学資格として認められないことを懸念する。(第26条及び第27条)締約国は、国による補助金を増大し、朝鮮学校への寄付を行う者に他の学校に寄付を行う者と同じ財政的な利益を与えることによって、朝鮮学校への適切な資金援助を確保し、朝鮮学校の卒業証書を直接大学入学資格として認めるべきである(外務省ホームページより抜粋)と勧告している。同様に社会権規約(A)委員会、子どもの権利(条約)委員会、人種差別撤廃(条約)委員会においても朝鮮学校への差別是正を求める勧告を出している。 D 日本弁護士連合会(日弁連)も1998年と2008年の二度に亘り、朝鮮学校などへの助成金が国からは皆無、各地方自治体からは少し出ているものの日本の公立はおろか私立学校と比べて極めて少額に過ぎないことについて「重大な人権侵害」「学習権の侵害」だとして日本政府へ是正勧告を出している。*2 なお、その勧告を出す判断材料として日弁連人権擁護委員会によってまとめられた調査報告書にもあるように、助成金が少ないため教職員は薄給に甘んじざるを得ない状況にあるなど、その分の負担が教職員及び保護者に肩に重くのしかかるという状態が続いている。 E
産経新聞が、朝鮮民主主義人民共和国からの教育援助費があることが「発覚した」「無償化の是非について議論を呼びそうだ」という記事を去る2月11日に一面トップで載せたが、教育援助費の送金は一貫して公開されて、朝鮮学校関係者や在日朝鮮人問題に関心のある人々の間では衆知の事実である。敢えて「発覚」というのは他に意図するものがあることからくる表現と思われる。なお、この教育援助費は1957年以降続いているが最近はその規模自体縮小しており、また日本の行政から一切、助成金を受けることのできない朝鮮大学校や地方にある初中級学校にそのほとんどが充当されている関係から朝鮮学校高級部がそこから受けている恩恵は極めて少ない。なお、他の外国人学校でも本国からの支援を受けているところは少なくない。 F この間、各地の朝鮮学校が当該地方自治体からの助成金を受けてきたが、当然ながらそれが適正に使用されてきたかをはじめ、学校の経理に関しての報告を認可・監督権を持つ都道府県等に対して行っており、これについてはこの間特段の問題が起こっているわけでもない。政治家の中にも「朝鮮学校にお金が渡れば北に送金されるかもしれない」という主張が一部あると漏れ伝わってくるが全く事実無根で的はずれの指摘である。 G 文部科学大臣は専修学校設置基準において「授業時数は、学科ごとに、一年間にわたり八百時間以上とする。」(第5条)、「一の授業科目について同時に授業を行う生徒数は、四十人以下とする。ただし、特別の事由があり、かつ、教育上支障のない場合は、この限りでない。」 (第6条)とするなど外形基準を用いている。また専修学校卒業生の大学入学資格においても修業年限三年以上で卒業に必要な総授業時数が二五九〇単位時間以上、普通科目の総授業時数は四百二十単位授業時数以上などの形式的・外形的な要件をみたせば学校単位で大学入学資格が認められるとしてきた。このように何も国際評価機関や本国の認定だけに依拠しなくても一条校の高校と同等の課程を有するものと認める線引きは可能である。*3 ※なお、朝鮮学校は上記の授業時数要件等を十分に満たすものの、専修学校を定めるの規定には「我が国に居住する外国人を専ら対象とするものを除く」という文言(学校教育法第124条)があるため、朝鮮学校はじめ外国人学校は専修学校となることはできない。 高校無償化法案と朝鮮高級学校について 1.何人にも保障されるべき高校無償化 今国会に提出される「高校無償化法案」の趣旨は、国際人権規約A規約に定められている理念を具体化したものであり、その内容は何人にも後期中等教育の機会を保障しようということにあるといわれています。 ※
国際人権規約A規約第13条の2(b)には「種々の形態の中等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること」という規定がある。 このような理念に基づき、法案作成に直接携わった文科省副大臣も「公立および私立学校のみならず外国人学校に在学している外国人もその対象に含む」と述べています。(第173回
国会衆議院文部科学委員会議事録第2回(2009年11月18日)参照)。 民主党は、教育基本法改定がなされた2006年の臨時国会において、独自の改定案である「日本国教育基本法案」を提示していますが、そこでは「学ぶ権利の保障」における対象が「すべての国民は」ではなく「何人も」となっておりますが、これは日本国民だけではなく、日本に居住する外国人も含むという意味だと解釈できます。 さらに学校教育について定めた条項においては「国及び地方自治体は、すべての国民及び日本に居住する外国人に対し、意欲をもって学校教育を受けられるよう、適切かつ最善な学校教育の機会及び環境の確保及び整備に努めなければならない」(法案第4条第1項)と、その対象者に「外国人」も含んでおります。 2.朝鮮高校の教育内容と水準 朝鮮学校は、全国28の都道府県で認可を得た学校法人朝鮮学園が設置運営している学校です。 全国に大学校1校、高級学校10校、中級学校33校、初級学校56校、幼稚園が40園あり、約1万人の在日同胞子女が通っています。 日本の高校に当たる高級学校は、東京、神奈川、茨城、北海道、愛知、大阪、兵庫、京都、広島、福岡にあります。 朝鮮学校は、同胞子女に母国の言語や文化を教え、民族のアイデンティティーをしっかり確立させることを目的に国籍や思想・信条・信仰の違いを問わず、すべての同胞子女を受け入れています。 現在、朝鮮学校には朝鮮国籍の子女が約46%、韓国国籍の子女が約53%、日本国籍やその他の国籍の子女が約1%通っています。(2008年資料) 朝鮮学校では、日本の学校制度に合わせて6・3・3・4制を取り、民族科目以外は、日本の一条校とかわりないカリキュラムで教育を行っています。 各地の朝鮮学園では、私立学校施行規則に基づき、所轄の都道府県に教育目的・設置学校名・理事会・評議員会の取り決めなどを記した寄附行為とカリキュラム・授業日数・生徒数・教職員数などを記した学則を提出しています。 各学校において学力向上に努めてきた結果、教育水準に関しては高い評価を得ています。 高級学校生の進学率は60%以上にのぼり、東京小平にある朝鮮大学校はもちろん、東京大学・京都大学を始めとする日本の有名国立大学にも現役で進学しています。 全国にある朝鮮高級学校(全10校)が、後期中等教育と認定するに足りる外国人学校であることは、朝鮮高級学校卒業生に、国立大学をはじめほぼすべての大学が受験資格を認め受け入れている事実や、作文コンクールや吹奏楽コンクール、英語弁論大会やNHK青春メッセージで優秀な成績を収め、夏のインターハイや冬のサッカーやラグビーなどの全国高校選手権大会で活躍している事実を見ても明らかです。今年1月、花園で行われた全国高校ラグビー選手権大会において大阪朝鮮高級学校は3位の栄誉に輝きました。 また、朝鮮高級学校の保護者たちは、日本国民と同じく、納税の義務を果たしており、このようなことから、各地方自治体において児童手当なども受給されております。 以上のように、高校無償化法案の趣旨や朝鮮高校の教育内容と水準からしても朝鮮高級学校が高校無償化の対象になるのは当然なことであります。万が一排除されるようなことが起きれば、きわめて深刻な民族差別、人権侵害であり、国際社会からの批判を免れないでしょう。 3.「教育援助費と奨学金」について 朝鮮民主主義人民共和国は、1957年4月から在日同胞子女の民族教育のために2009年4月現在まで毎年、155回にわたり総額で約464億円にのぼる「教育援助費と奨学金」を送ってきました。 朝鮮学校に対する地方自治体の補助が乏しいなか、「教育援助費と奨学金」は名実ともに同胞子女の民族教育のささえになってきました。1957年以降「教育援助費と奨学金」の恩恵を受けた児童・生徒・学生の数は数万人に上ります。 産経新聞は共和国の同胞愛に満ちた人道的支援、それも子供たちの教育への援助にかかわる問題が「高校無償化について論議を呼びそうだ」とする、事実にまったく反する記事(2月11日付)を掲載しました。これは、朝鮮学校を「高校無償化」の対象から外すため世論をミスリードすることを目的にしたものだと言わざるをえません。 *1 助成金比較 △朝鮮学校には? △日本の公立学校には? (国と地方公共団体の負担額の合計額〔2006年度〕「データからみる日本の教育2008年」文部科学省より) △日本の私立学校には? (1人当たりの全国平均〔2007年度〕「東京都の私学行政2009年」東京都生活文化局私学部より) ※ 朝鮮学校と、日本の公立学校についての金額は、経常費補助、施設整備、保護者への補助など様々な助成制度をひっくるめて計算した金額である。 一方、日本の私立学校についての金額はあくまで学校に対する経常費補助だけの金額である。 日本の私立学校には経常費補助以外にも保護者の負担軽減のための補助をはじめ、多目的室、図書室の整備やバリアフリー化整備、またカウンセリング機能の強化のための保健室の整備といったことに対する補助制度などが備わっている(中には時限的なものもある)。 *
2−1 日弁連総第99号 1998年2月20日 内閣総理大臣橋本龍太郎殿 文部大臣 町村 信孝 殿 日本弁護士連合会 会長 鬼追 明夫 勧 告 書 当連合会は、日本国に所在する朝鮮各級学校の教職員組織である在日本朝鮮人教職員同盟中央本部並びにその教職員と児童生徒の保護者の組織である在日本朝鮮人中央教育会から、自己の民族文化を保持する教育についての人権侵害救済の申立をうけて調査したところ、朝鮮各級学校のみならず、いわゆるインターナショナルスクールなど日本国に在住する外国人の自国語ないし自己の国及び民族の文化を保持する教育に関して重大な人権侵害があると同時に、子どもの権利条約など関係条約違反の状態が継続していると判断したので、次のとおり速やかに善処されるよう勧告します。 [勧告の趣旨] 1.日本国に在住する外国人が自国語ないし自己の国及び民族の文化を保持する教育をする学校と大学校及びその卒業者について、日本国の学校教育法第1条の各義務教育課程、高等学校教育、大学に相当する教育を授受しているものにその資格を認めず、 法律に根拠を持つ公的な資格を認定する試験を受験させないことは重大な人権侵害で あり、かかる事態を速やかに解消させるべきである。 そのための処置として、日本国に在住する外国人の学校について定める法律が制定 されるまで、とりあえず、朝鮮各級学校と大学校及びアメリカ合衆国カリフォルニア 州に本部を持つ西部地域学校大学協会(WASC)など国際的に一定の水準を維持している機関の認定している学校については、その教育内容に応じてこれに対応する学校教育法第1条の各学校と同等の資格を認める処置をとるべきである。 2.現行の私立学校助成制度は、学校教育法第1条に記載する認可を受けた学校と、これを受けていない学校との間に大きな差異を生じ、甚だしい不平等であるとともに、 上記1の結果とあわせて間接的に日本国に在住する外国人の自国及び自己の民族文化 を保持することを妨げ、日本国の教育を受けることを押しつけることになっており、 重大な人権侵害であるので、かかる事態を速やかに解消させるべきである。 そのための処置として、上記の各学校、大学校とその児童、生徒、学生に対して、新たに外国人の学校の振興助成に関する立法処置がなされるまで、少なくとも私立学校振興助成法によるのと同等以上の助成金が交付されるよう処置をとるべきである。 3.文部事務次官が、昭和40年12月28同「文管振第210号」として各都道府県知事に対して発した文書は、朝鮮人としての民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校について、これをわが国の社会にとって各種学校としての地位さえも与えるべき積極的な意義がなく、学校教育法第1条に規定する学校の目的にかんがみこれを学校教育法第1条の学校として認可すべきでないこと、今後朝鮮人のみを収容する公立の小学校または中学校及びこれらの分校または特別の学級を設置すべきでないこと、などを都道府県知事に求めるものであって、日本国に在住する朝鮮人としてその民族性ないし国民性を涵養する教育をなしまたこれを受ける人々の人権を著しく侵害している。 よって本文書を撤回させるなどこれによる人権侵害を除去し、その被害を回復する 適当な処置を取るべきである。 [勧告の理由] 別紙調査報告書記載のとおり。 ※勧告の趣旨の3にある「文管振第210号」は、勧告の原文には「文普振第210号」となっているが、明かな誤字なので修正しておいた。 *2−2 日弁連総第98号 2008(平成20)年3月24日 内閣総理大臣 福 田 康 夫 殿 日本弁護士連合会 会 長 平 山 正 剛 勧 告 書 当連合会は、学校法人横浜山手中華学園、学校法人東京朝鮮学園及び学校法人神奈川朝鮮学園並びにそれらに通う児童・生徒の各保護者の会からの申立に基づいて調査したところ、中華学校及び朝鮮学校は、自らの属する民族の言葉によりその文化・歴史を学ぶ権利をも実現するもので、確立したカリキュラムの中で安定的に教育を行ってきたものであるにもかかわらず、指定寄付金制度等の適用から排除されているものであり、また、朝鮮高級学校の卒業生ないし卒業見込生に関しては、大学・専門学校の入学試験を受験する資格の一律の認定の適用から排除されている。このことは、欧米系評価機関の認定を受けたインターナショナルスクールなどが指定寄付金制度等の適用を受けていることに比しても、また、他の外国人学校の卒業生ないし卒業見込生が入学試験を受験する資格を一律に認められていることに比しても、差別的な取扱いに当たるものであり、これらの学校に通い又は通おうとする生徒の学習権を侵害することとなるものである。 よって、次のとおり速やかに善処されるよう勧告します。 [勧告の趣旨] 1 日本に所在する中華学校及び朝鮮学校並びにこれらと同等のいわゆる外国人学校について、所得税法及び法人税法上の指定寄付金制度の適用対象法人等に該当しないとの取扱いを改め、指定寄付金制度の本旨に従って、関連告示を改正するなどしてこれら学校が適用対象に該当するとの取扱いを行うべきである。 2 同様に、日本に所在する中華学校及び朝鮮学校並びにこれらと同等のいわゆる外国人学校について、所得税法及び法人税法上の特定公益増進法人に該当しないとの取扱いを改め、特定公益増進法人制度の本旨に従って、関連告示を改正するなどしてこれら学校が適用対象に該当するとの取扱いを行うべきである。 3 日本に所在する朝鮮学校の卒業生ないし卒業見込生の大学・専門学校の入学試験を受験する資格について、学校教育法上、「高等学校を卒業した者と同等以上(に準ずる)」とされる対象となる学校に朝鮮高級学校が該当しないとの取扱いを改め、関連告示を改正するなどして同学校がこれに該当するとの取扱いを行い、もって同学校の卒業生ないし卒業見込生が個別審査によらずとも一律に大学・専門学校の入学試験を受験する資格を得られるようにすべきである。 4 なお、上記1項及び2項の関連で、現行の私立学校助成制度が学校教育法1条に基づく認可を受けた学校と認可を受けていない学校との間の大きな格差を出現させている問題については、当連合会が既に1998(平成10)年2月20日付け勧告書をもって勧告しているところであるが、未だ改善されていないことから、この点についても引き続き改善が図られるべきであることを、改めて付言する。 [勧告の理由] 別紙調査報告書記載のとおり。 *3 朝鮮学校高級部の授業時間数(2010年度 東京朝鮮中高級学校の学則より)
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||