死ぬかと思ったダイビング

 日本人学校の生活も3年目になり、少し慣れてきたころ、後輩の教師にダイビングスポットを紹介しようと思い、マヤマヤビーチに教員の家族の大集団で出かけて行きました。ダイビングは必ず二人のペアーでもぐらなくてはなりません。私のパートナーはサッカー大会のときに、私のあばら骨を味方にもかかわらず骨折させた後輩教師です。嵐が近づいてきたせいで、波は荒く、海の透明度があまり大きくありません。浅瀬はジェットボートが近づけず、底の見えない深い場所でもぐることになりました。ジェットボートにはキャプテン他6人が乗り込み、他の4名はすでに別のスポットにもぐりました。私と後輩教師は島が見えず、水平線しか見えないスポットに行きました。初めての体験ですが、ボートが大きすぎてボートのから背中の向きに飛び込むわけにはいかず、ディバイスを海に投げ、海で装着することになりました。ちょっとジェームズ・ボンドになった気分です。ダイビングを始めるとまもなくジェットボートは流れがきつく、かなり遠くに行ってしまいました。そのとき、我がパートナーはダイビングには欠かせない、おもりつきのベルトを落としてしまいました。重いベルトはかなり早い落下速度で落ちていきました。私は垂直にもぐり、そのベルトを追いかけましたが、間に合いません。映画のワンシーンをみているようになすすべもなく、そのベルトは南シナ海の底に落ちていきました。
 水面に上がってみるとジェットボートの姿が見えません。見渡す限り水平線です。コンパスを見て、ジェットボートの方向に泳ぐことにしました。ディバイスを捨てるわけにいかず、タンクを背にしてあお向けになって泳ぎます。荒い波のため何度も海水を飲んでしまいました。このままボートが見つからなかったらどうしようと考えながら後輩と必死で泳ぎました。休み明けの新聞記事に「日本人学校の教師、ダイビング中行方不明」と書かれることを想像しました。灰色の空を眺めながら、泳ぎ続けます。南国なので、体感温度はそれほど低くはなく、むしろ快適です。こんな感じで簡単に死んでしまうのかと思いながら30分ほど泳ぎ続けたあと、イルカのようにジャンプしてみまわしてみると、白いジェットボートの姿が、はるかかなたの水平線の波間に見えました。次はジェットボートまで泳ぎ着くのが一苦労です。疲労困憊のあげく、遂にボートにたどりつきました。

フィリピン○×クイズ 

前回の答え ○
解説 ビデオ撮影をしていたらガードマンに注意されました。

問9 ビーチのそばのホテルにはプールがない。

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