被災地救援・支援ボランティアの行動

 下記のものは、ボランティアが実際活動する際に注意する点と、その対応方法をまとめたものです。
           

活動中の事故防止や対処について

1 グループでの行動について

○ボランティアは最低でも2人以上で組んで行動します。特別の事情がない限り単独での行動は慎んで下さい。活動が終わって事務所に戻るまでは、グループの責任者の判断で行動して下さい。

2 危険の判断について

○倒れそうなビルに近寄らない。崩れそうな橋は渡らない。崖のそばは迂回するようにして下さい。
○依頼された仕事でも身の危険を感じるようであれば、丁寧に断わって事務所に戻って下さい。
○天候が悪化したり、コーディネーターから説明された依頼者の場所が見つからなかった場合は、迷わず事務所に引き返して下さい。

3 ボランティアの皆さんが、体調を崩したとき
○ケガをしたり、体調の悪くなった方は、活動を中断していったん事務所に戻って下さい。その際一人で帰るのではなく、必ずだれかが付き添うようにして下さい。
○急病と思われる時は、すぐに近くの病院に駆込んで下さい。その際も必ずだれかが付き添い、付き添った方は事務所に連絡を入れて下さい。

4 依頼された以外の仕事も頼まれた場合

○基本的にはボランティアの判断で、やるかやらないかを決めて下さい。簡単にできることや短時間に済むことであれば、お受けしても良いでしょう。
○日を改めてやった方がいいと判断した場合は、その場で仕事に取りかからず、仕事の要点をメモして、事務所のコーディネーターに渡して説明して下さい。
○そのほかボランティアの皆さんが、「頼まれた仕事はこれだけだけど、これはやった方がいい」と感じるケースがありましたら、報告書に記入しておいて下さい。

5 依頼された仕事に関して苦情を言われたとき
○苦情を言う方は、私たちの活動の弱点を教えてくれる先生だと心得て下さい。良く話を聞いて、その場で改善すべき点があったらやり直して下さい。
○どう考えても相手の主張が不合理だと考えられる場合やボランティア活動に対する一般的な不服に関する苦情については、事務所のコーディネーターに電話をするようにお話して下さい。
○苦情を通り越して、ただ単に絡んでくる依頼者に関しては、「次のスケジュールがありますと告げて、事務所にお戻り下さい。コーディネーターにもその様子を報告して下さい。

6 依頼者のお宅の家財道具を壊してしまったとき
○あなたの誤りによって、物を壊してしまった場合は、心からお詫びして下さい。
○弁償を求められた場合は、その要点をメモしておいて、事務所に戻ってからコーディネーターに相談して下さい。保険に加入している場合は、保険金が支払われる可能性がありますので、その場で弁償金を支払わず、あなたの名前と事務所の連絡先を教えておいて下さい。

7 言葉づかいに気をつけましょう

 被害に遭われた人に対して、あるいは移動中の電車やバス、食堂やコンビニなどにいるときの会話では、次のことに気をつけて下さい。
救援活動の様子を声高かに話題にしない。茶化さない。
被害に遭われた人に対して、安易に「頑張って下さい」と言わない。むしろ「一緒にやりましょう」「一緒に頑張りましょう」という。
「何か困っていませんか」ではなく「どなたか困っている方がいたらお知らせ下さい」と尋ねる。

8 「私にして下さいボランティア」は迷惑

 災害の現場に際して、寝具や食糧、日用品の提供を要求し、揚げ句の果は活動し終わった際のゴミの処理や清掃まで頼むボランティアは迷惑です。周囲の配慮に期待をかけずに、自分のことは自分で処理しましょう。

9 「私が主人公ボランティア」は困ります

 「してあげる」ことに意義を感じ、「してあげているのだから自分が主人公」と思って行動するのは困ります。例えば避難所は被災者の生活の場。ただでさえプライバシーの守られないストレス空間にあって、ボランティアが主人のように振る舞い、あれこれと指示を出して仕切ることはもってのほかです。避難所ではそこに生活する人が主人公であって、ボランティアはあくまでもサポーター、応援団。ボランティアは被災者の人権を尊重する支援者に徹することです。

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 その他

 ボランティア同士のトラブルや活動上の疑問があるときは、コーディネーターにご相談下さい。



救援活動に参加するボランティアの持ち物、装備

服装(装備)


服装
 気候に合わせた動きやすい服装が肝心。特に冬場の服装には注意を払いたい。下着はなるべく綿製品を避け、汗を発散する化学繊維または羊毛の下着を選びます。綿の下着は汗を吸収し体を冷やし、体力を奪います。風邪をひいては元も子もありません。上着は保温性の高いセーターやフリースにダウンジャッケトの組み合わせが良いでしょう。雨具(カッパ)の備えも怠りなく。

底の厚い靴
 ボランティアの売りは、行動力。足元には細心の注意を払います。底の厚いワークブーツが最も無難。バスケットシューズやテニスシューズもまずまずです。欲をいえば、靴の内部に水がしみこまないトレッキングシューズやキャンピングシューズなら足元は万全。雨の日の行動も快適です。

帽子
 地震の直後は、建物の倒壊や落下物によるケガの危険があります。余震もいつ起こるか分かりません。ボランティアは体が資本。まず自分の身を守ることが先決です。ヘルメットならば頭を守る点では申し分ないのですが、せめて野球帽ぐらいはかぶって行動しましょう。もちろん危険な建物には近寄らないことが前提です。

手袋
 ガレキをどけたり、物資を運ぶ際も手袋は欠かせません。お進めの品は軍手。使い捨て感覚では問題がありますが、価格は安く、汚れを気にせず使えるし、洗濯もききます。革製の作業手袋は用途も広く頑丈。目的に合わせて使い分けましょう。

マスク
 都市型災害では、倒壊家屋やビルの取り壊しによって、おびただしい粉塵が発生します。問題はその粉塵に含まれるアスベスト。アスベストは断熱材などに使用された物質ですが、これを吸い込むと10年後20年後に肺ガンを誘発すると恐れられています。マスクの着用はこれを遮断するには最も効果的。不織布を用いた工業用のマスクが最も優れています。普通のマスクでは効果がありません。ホームセンターなどでお求めを。



持ち物


リュックサック
 ボランティアは自己完結が原則、自分の荷物は一つにまとめて行動します。そのためにはリュックサックが必須アイテム。中に物を入れる場合は、軽いものを下に重いものを上に入れます。サイドポケットにはすぐに使うものを入れておきます。新たに購入する場合は、登山やキャンプ用品の専門店に相談し、多少高価でも体格に合わせたものを選ぶと良いでしょう。普段はハイキングに使えます。

寝袋(シュラフ)
 被災地に日帰りで通って活動する場合は必要ありませんが、宿舎の提供を受けられる場合やテントの用意がある場合に必要な装備。災害の現場には布団は無いと心得ましょう。ましてや現場の人に布団を貸して欲しいと要求するのはもっての外。となれば、寝袋持参です。なるべくコンパクトなマミー型が望ましいのですが、快適さでは封筒型が勝ります。夏用と冬用では性能が異なるので、必ずチェック。持ってない人はだれかから借りればよいでしょう。寝袋は湿気がこもりやすいので、使ったら陰干しに。さらに快適を求める方は、エアーマットかウレタンマットを追加します。

食べ物
 日帰り活動ならお弁当ですが、宿泊して活動するなら最低3日分程度の携帯食を準備しましょう。かさばらず保存がきくものがベスト。飲み水も用意したい。高カロリーなクッキーやビスケット、フリーズドライ食品、レトルト食品などが中心。ゴミを持ち帰るための袋も忘れずに。

救急セット(医薬品)
 包帯、応急バンソウコウ、頭痛薬、うがい薬、風邪薬、胃腸薬、ビタミン剤などを活動する日数に応じて用意しましょう。健康保険証のコピーも念のため用意します。

被災地及び周辺の地図
 携帯しやすいコンパクトなものを選びましょう。事前に被災地の道路、鉄道などの交通情報も調べておきましょう。

洗面用具
 いうまでもなく、身だしなみセット。タオルと石鹸、歯ブラシ、歯磨きの類。

お金
 あまり多くを持ちすぎないように適当な額。泥棒だっているわけですから、ウエストポーチなどに入れて、絶対に体から離さないようにします。連絡を取り合う際には、テレホンカードも必要になるでしょう。

その他の装備
 携帯電話、ラジオ、懐中電燈、筆記用具、ノート、マジックなどがあれば便利。女性の場合は、チカン防止のブザーや催涙スプレーも装備したいものです。どさくさにまぎれて悪いやつも出没します。備えあれば憂いなし。



支援のタイミングや被災者の気持ち
 災害時の救援に参加するボランティアの動機は、「黙って、見ていられない」「ほおっておけない」「少しでも手を貸したい」などのシンプルな感情からです。そしてボランティアは、生活再建に向けて歩き出そうとする人々の傍らにあって、そういう人々と共にありたいと思い、共に復興の道を歩んでいるという実感を得ることにやりがいを感じているのです。


支援のタイミング

だれしもこのような気持ちで行動する訳ですが、時間の経過とともに被災者の求める支援は変化しますから、昨日までは役立った活動も明日からは必要のない活動になってしまうことがしばしばあります。
 例えば、営業を再開する商店が出始めた時期に救援物資の無償のパンを配ることは、パン屋さんの復興を邪魔するばかりです。たとえそれが、悪気のない行動であっても被災した人々の自立を支援する活動ではなくなっているのです。また、避難所などで、ボランティアの炊き出しや物資の提供を長期継続することは、復興を目指す被災者の自尊心を傷つける行為にもなりかねません。
 ボランティアに求められることは、自分たちの普通の暮らしに照して、被災者に不足している部分や困っている部分の全てをではなく、一部を補う支援者の姿勢です。もう必要のない活動だと判断したら、活動を終結する方向に導き、新たな支援の必要を感じたら、その時点からスタートを切ります。


被災地には色々な状況や境遇の方が。

 

災害の被災者といっても一口では言い表せない様々な人がいます。 親や子供、友人を失った人。自分自身や家族、親族が傷つき、療養が必要な人。家や家財道具などの財産を失った人。勤め先の商店や工場、会社を失った人。ライフラインや物流が途絶して日々の暮らしや通勤に困る人。復興に向けて意気盛んな人。明るい表情の人。悲しみにくれている人。冷静な人など様々な人々がいます。さらには、被害を受けた人の中でも財産に対する保険の補償がある人とない人。元々の蓄えにより自力復興できる人とできない人。近隣の親しい間柄であっても被害の大きい人と少ない人等々、感情的にも複雑です。
 また、被害を受けた人が被災者という名のもとに一括され、哀れみの視線を送られることには多くの人が抵抗を覚えます。

ボランティアとしての姿勢


 このように複雑な思いが渦巻く被災地の多くの方々に共通していることは、人としての尊厳の守られる生活を再建したいとの願いです。
 様々な感情が錯綜する中で、ボランティアは個々の人々の気持ちを汲んで活動をしなければならないのは当然ですが、被災者の心理的な側面を察知し、対応することは難しいことかもしれません。ですから、せめて被災者の気持ちは複雑で、時間とともに変化が激しいのだということを心得て、自分の行動や発言に見直す点はないかどうかを毎日振り返る心の整理が大切です。仮に間違ったことをしていたと気づいたら、その段階で改めれば良いのです。



被災地でのコミュニケーション


 ボランティア活動でとまどうことは、被害にあった人々との会話、コミュニケーションです。悲観している人もいれば、元気な表情の人もいます。無邪気に過す子どももいます。
 しかし、注意すべき点は、表面的な様子だけで、被害にあった人々の心情のすべてを理解できないということです。被害に遭った人々は、多かれ少なかれ「心の傷」を負っていると考えて、次のような会話の例をあげてみました。

活動を終えた別れ際などに

×「頑張って下さい」

「明日も一緒にやりましょう」

 決して「頑張って下さい」とは言わないようにします。「頑張って」と言われても、頑張る目的の家族を失った人や財産を失った人に対しては、いたずらに無力感を増幅させる言葉になります。「元気だして下さい」の方が比較的抵抗がないと思います。
 「元気になってもらいたい」との気持ちを伝えようとするなら、「明日も一緒にやりましょう」とか「どなたか困っている方がおりましたらお知らせ下さい」など、間接的な支援の姿勢を表します。
 「頑張って下さい」の言葉は、頑張ることのできる背景(経済力、健康、家族状況、身体能力)がある人に対して言える言葉です。

「生きていても無駄」「死にたい」などと悲観された時

×「そんなこと言われても困ります」

「辛いことがあったんですね」

 相手が何かを話そうとしているときに、「困ります」と言って、聞くことを拒絶してはなりません。相手の感情に圧倒されるかもしれませんが、できるだけ聞き役に徹することです。
 「生きていても無駄」という言葉には、それを否定して欲しいという気持ちも含まれています。ですから「そんなことはありませんよ」とか「辛いことがあったんですね」などと対応し、相手が話を続けるような場合は、話した相手の最後の言葉を反復するようにして、話を聞きます。
 ボランティアは、構えることなく、その人なりの聞き方をすればよいと思います。

ボランティアの仲間同士で活動内容を話題にする時

×「被災者が、・・・・」

「△△さんが、・・・・」

 被害の現場にいるボランティアが、声だかに活動の感想を語ることは、被災した人に強い不快感を与えます。電車やバスの中、食堂、コンビニなどで「被・災者が・・・・」「・・・・で大変だったよ」などと雑談することは止めましょう。特に安易に「被災者」という言葉を多用しないように心がけて下さい。活動を終えても自宅に戻るまではボランティアと自覚し、活動のルールを守りましょう。
 活動を進める上で情報交換が必要なときは、必ず「△△さんが、・・・・」「▽▽小学校で・・・・」「何時に・・・・で」というように、正確な名前をあげて客観的に意志の疎通を図ります。


 『福祉救援ボランティアマニュアル』