防災手帳

 防災手帳は震災発生時に必要と考えられる個人情報、緊急時の連絡先などを載せておくものです。
 震災発生時には、様々な衝撃を受けるため、冷静な行動がとりにくくなります。混乱を防止し落着いた行動がとれるように、震災後の生活に必要な事柄を「防災手帳」に記入しておきます。コンパクトサイズなので、単独で行動する場合などには、必ず携帯しましょう。障害者手帳に挟みこんでおくのもよいでしょう。

(1)防災手帳の準備

 手帳をもらったら、27頁の記入例を参考にしながら必要なことを書き込んでおきましょう。


(下部イラストをクリックすれば防災手帳の内容が拡大して見ることができます)
 

【記入する事柄】
氏名  生年月日  住所  電話番号 (FAX) 血液型  障害種類・等級 障害者手帳番号 保険証記号・番号(種類) 緊急連絡先(家族・知人など) 避難予定場所(「避難所」) 地域拠点 家族等集合場所 関係機関連絡先(かかりつけの病院・診療所) 他地域の関連医療機関情報など 日頃通っている場所(作業所・職場など) 所属団体(障害者団体・ボランティア団体など) 補装具およびケアに必要な物品(メーカー名、商品名、サイズ等) 取り扱い企業連絡先 治療中の疾患 服用薬の種類、服薬上の注意 薬局名 食事の目安、注意が必要な食品など 治療・ケアのスケジュール 介助・介護と対応上の配慮点 援助を求めるメッセージ メモ 福祉事務所、保健所などの連絡先 手帳の発行窓口
 ことばによるコミュニケーションが困難な人は、手帳をめくりながら相手とやり取りができるように、必要になると考えられることを「援助を求めるメッセージ欄」に記入しておきましょう。
(例) 「安全な場所につれていってください」
「○○(家族など)へ、この場所に安全でいることを連絡してください」
 ふだん処方されている薬の種類、量、服薬方法などを分かりやすく記入しておきましょう。
 医療的ケアを必要とする人や合併症がある人の場合は、適切な対応が一刻も早く受けられるように、合併症名、服用薬、治療・ケア、配慮点などについてそれぞれのページに記入しておきましょう。
 心疾患、高血圧、糖尿病などの合併症のある人で、食事について配慮が必要な人は「食事の目安」のページに指示されたカロリー、塩分、水分などを記入しておきましょう。
 食事、排泄、入浴などの介助・介護に特別な配慮やコツが必要な場合には、はじめての人(「避難所」での介助・介護者)にも分かるように具体的に記入しておきましょう。


聴覚障害のある人は?
  • 障害者団体に加入されている方は、その連絡先も記入しておきましょう。
  • 手話通訳派遣協会や聴力障害者情報文化センター(要約筆記派遣)、その他に区市町村で聴覚障害者を支援しているグループ(手話サークル、要約筆記サークルなど)の連絡先を記入しておきましょう。
  • 「援助を求めるメッセージ」のページに「聞こえませんので、何を放送しているか、書いてください」などと記載しておきましょう。


肢体不自由のある人は?
 ことばが不自由な場合、相手に伝えたいことやどのような対応をしてほしいのかを「介助・介護・対応上の配慮点」「援助を求めるメッセージ」のページに具体的に記入しておきましょう。

 (例)
  • 「車いすに乗せてください」
  • 「(車いすを使用しています)凸凹、段差、坂道などがあったら押してください」
  • 「右側の手足に障害があり、ゆっくりなら歩けますが安定しません。右側の後方に立ち一緒に歩いて下さい」
  • 「安全な場所まで連れていってください」
  • 「トイレに連れていってください」
  • 「家族(連絡先電話番号)へ、この場所に安全でいることを連絡してください」
  • 「ことばが不自由なため、うまく話せませんが、あなたの話すことは理解できます」
*防災手帳の所在が誰にでも分かるように、車いすのポケットなどに「防災手帳が入っています。緊急時には取り出して見てください」と表示しておきましょう。


内部障害のある人は?
 防災手帳には、できるだけ分かりやすく「こういうときは、このような治療が必要で、こういう処置や介護をしてほしい」などを次のようなページにそれぞれ記入しておきましょう。
 「治療中の疾患・合併症」「服用薬の種類」「食事の目安」「治療や介護のスケジュール」「介助・介護と対応上の配慮点」など
 また、必要に応じて「補装具および医療的ケアに必要な物品」も記入しておきましょう。
 以下に、代表的な例を挙げておきますので、27頁以降の記入例と併せて参考にしてください。
 居住地域以外の対応可能な各専門医療機関や、その他の関係機関も記入しておくようにしましょう。

★心臓に障害のある人は?
(例) 疾患名: 狭心症・心筋梗塞  服用薬、食事療法の内容と注意点
 胸痛発作時の対応(ニトログリセリン1錠を舌の下に入れてください)
高度不整脈  ペースメーカー植え込みの有無、
 機器の種類とメーカー名、連絡先
合併症: 高血圧  服用薬(血圧200以上の時、○○を1capなど)、食事療法

★呼吸器に障害のある人は?
(例) 疾患名: 肺気腫  在宅酸素療法の内容
 濃縮酸素(安静時:1リットル/min、運動時:2リットル/min)
 酸素供給企業名、連絡方法
合併症: 心疾患  服用薬、食事療法の内容、安静度など

★腎臓に障害のある人は?
(例) 疾患名: 慢性腎不全  人工血液透析の頻度,服用薬、食事療法の内容
 治療用特殊食品(低蛋白高エネルギー食品・低リン食品)
 注意の必要な食品(カリウムの多い食品)
 腹膜透析(CAPD)
 透析液、カテーテル交換日
合併症: 糖尿病腎症  服用薬、食事療法の内容
 低血糖・高血糖時の対応方法など
*透析治療を受けている人は、カリウムの多い食品を記入しておきましょう。

★膀胱・直腸に障害のある人は?
(例) 疾患名: □□□癌  1990年0月 ××病院でストマ造設
 ストマ の種類、サイズ、付属品、メーカー名など
合併症: 肝疾患  服用薬、食事療法の内容など

★小腸に障害のある人は?
(例) 疾患名: 消化管仮性閉塞症  中心静脈栄養24時間持続、輸液製剤、一日量・時間など
 栄養補給の方法(経口・カテーテル・中心静脈など)
 栄養・輸液内容、必要物品、メーカー名
合併症: 胆石  服用薬、疼痛時・発熱時の対応

服用している薬については、手帳の「服用薬の種類」のページに、次の例のように記入しておきましょう。
(例) 薬名 時間 作用
 ○○○○   ○.○○mg   ○錠   朝食後前   強心剤
 ▲▲▲▲   ▲.▲▲mg   ▲錠   胸痛発作時   冠拡張剤
 □□□□   □.□□mg   □錠   朝・夕   抗血栓剤


知的障害のある人の家族、援助者は?
 防災手帳を破いたり捨ててしまったりして、防災手帳を携帯できない人もいます。持ち方の工夫をしましょう。

(例)
  • いつも持ち歩くカバンに入れておく。
  • 家族以外の人(作業所職員、援助者など)から防災手帳の必要性を話してもらう
  • 服用薬の種類や服薬上の注意はそれぞれの欄に記入しておきましょう。
 特に震災発生時には服薬の管理が大切です。服用薬、服薬の仕方、飲み合わせなどに配慮することがあれば、誰にでも分かるように記入しましょう。

(例)
薬名 時間 作用
 ○○○○  ○○mg  朝食後 昼食後 夕食後  抗てんかん剤
 ▲▲▲▲  ▲▲mg  朝食後 夕食後 就寝前  向精神薬
服薬上の注意

(例)
「一人では服薬できません。水では薬が飲めず、スープ、ヨーグルトなどと一緒に飲ませています」
「薬は、オブラートに包んで飲んでいます」
「△△△剤と□□□剤を一緒に飲ませないでください。」

 コミュニケーションが困難な人や対応に配慮を要する人は「介助・介護と対応上の配慮点」「援助を求めるメッセージ」のページに記入しておきましょう。

(例)
「命令口調で話すと興奮しますので、柔らかい口調で話しかけてください」
「腕を引っ張られると嫌がりますので手をつなぐか、肩にそっと手をかけて誘導してください」
「『ダメ』という言葉に反応をし、機嫌が悪くなりますので使わないでください」
「『大丈夫』という言葉をかけると落ち着きます」


精神障害のある人は?
  • 服用している薬については、手帳の「服用薬の種類」のページに、次の例のように記入しておきましょう。
(例)
薬名 時間 作用
 ○○○○  ○○mg  朝食後 昼食後 夕食後  向精神薬
 ▲▲▲▲  ▲▲mg  不安が強くなったとき1錠  不安を抑える

服薬上の注意
 デポ剤(ハロマンスなど)を注射している人は、その量と注射の頻度を聞いてメモしておきましょう。
(例) ☆☆☆☆(デポ剤の種類の名前)を○週間に1回、△mg筋肉注射

 上記の内容を記入するかどうかは自由ですが、記入をしておくと震災発生時にふだん飲んでいる薬の情報を医療救護所のスタッフなどに伝えやすくなるため、薬がより確保しやすくなります。