非常持出用品と備蓄品の用意

 震災が起こったときに、すぐに役立つものを非常持出用品・備蓄品として用意しておく必要があります。一般的な防災グッズの他に、自分の障害や病気に関係するものも、必ず用意しておきます。また、日頃から食料や水などについては必ず備蓄しておきましょう。


(1) 非常持出用品はリュックサックなどに入れて、すぐに持ち出せるようにしておきましょう。介助が必要な人の場合には、介助者・救援者に分かりやすい場所に置いておくようにしましょう。
(2) 一年に数回は非常持出用品・備蓄品のチェックをしましょう。特に、飲料水、食料品、医薬品は賞味期限や品質保証期限、使用期限を確かめましょう。

【非常持出用品・備蓄品(例)】
□飲料水 □食料 □医薬品 □懐中電灯 □防災頭巾・ヘルメット □携帯ラジオ □携帯電話
□SOS発信用の装置(笛、緊急通報システム、防犯ベル、非常ベルなど) □防災手帳(写し)
□障害者手帳(写し) □その他手帳(ペースメーカー手帳など) □健康保険証(写し)などの貴重品
□マスク □衛生用品  □生理用品 □タオル
□ティッシュペーパーやウェットティッシュなどの日用品 □電池  □軍手
□補装具・自助具(必要な人のみ)□担架などの移送用具(必要な人のみ)
□肌着 □現金(小銭)□筆記用具  □その他必要なもの(例)フードカッター
(3) 最低でも5日間分の食料、飲み物などを用意しておきましょう。
(4) 特に、食物形態に留意する必要がある人の場合には、食べやすい食品(お粥やベビーフードなど)や食べやすくするためのもの(とろみをつけるためのものやフードカッターなどの器具など)を非常持出用品として準備しておきましょう。
(5) 服薬治療中の人は、5日分程度の薬を備えておくことが必要です。かかりつけ医と相談の上、なるべく、手持ちがなくなる前に薬をもらうようにしておきましょう。また、薬の名前と量、飲み方などを聞いて防災手帳に書いておきましょう。
(6) SOS発信用の装置(安全笛など)は家屋の倒壊で閉じ込められたときに、自分の所在を周囲に知らせる場合に役立ちます。
(7) 夜間に地震が起こったときのために、懐中電灯、携帯ラジオ、SOS発信用の装置、携帯電話などは枕元に置いて寝るようにしましょう。蛍光テープなどを貼っておくとよいでしょう。
(8) 担架の代わりに、毛布や服、雨戸などを利用して移送する方法もあります。
(例)


視覚障害のある人は?

 FMを受信できるラジオ、軍手(手で触れて自分の周囲の状況を知るとき手を保護するために必要)、運動靴、折りたたみ式の白杖(ふだん白杖を使っている人)、カセットテープレコーダとテープ(紙に書いた文字が読めない人)、音声時計や触知式時計を非常持出用品の中に入れておきましょう。


聴覚障害のある人は?
  • 携帯情報端末(コラム参照)を備えておくと連絡が取りやすくなります。
  • 予備の補聴器と電話拡声アダプター(持っている人)や電池を非常持出用品の中に入れておきましょう。電池はときどき新しいものと交換しましょう。
  • 補聴器は、寝る時に枕元に置くなどして、とっさの時にすぐ付けられるようにしておきましょう。

コラム震災発生時に役に立つ情報機器

 震災発生時は正確な情報を的確につかむことが大切です。聴覚障害の人にとって便利な情報機器には次のようなものがあります。ふだんの生活でも便利なものです。

1.文字情報が受信できる携帯電話(PHSを含む。)
 携帯電話・PHSの中には文字情報を受けられる機種があります。震災発生時でも連絡をとることができます。中には、インターネットメールのやりとりのできる機種もありますが操作は難しい面があります(但し、災害時には回線が復旧されるまで混雑する可能性があります)。

2.インターネット・パソコン通信
 パソコンと電話(無線や携帯電話などを含む。)を利用して、お互いに情報のやりとりができます。阪神・淡路大震災時には被災者の安否確認などに役立ちました(但し、災害時には回線が復旧されるまで混雑する可能性があります)。

3.テレビの文字放送
 テレビ電波のすきまを使って、文字情報が発信されています。見るためには文字放送用デコーダが必要です。

4.FM多重放送
 FM放送の電波のすきまを使って、文字情報が発信されています。FM多重放送対応のラジオ(通称:みえるラジオ)が必要です。

5.情報配信型ポケベル
 ポケベル各社のサービスとして情報配信サービスがあります。緊急情報をすぐに知ることができます。着信は振動で分かります。

6.筆談電話
 ペンタッチで手書きした文字を相手の筆談通信端末に送ることができます。電話回線を通して一枚の紙の上でやりとりをしているように使えます。


肢体不自由のある人は?

 必要な人の場合には、以下のものを用意しておくとよいでしょう。
  • 当面必要な枚数の紙おむつ
  • 食事や排泄などで衣服を汚すことが多い人の場合には、肌着の他にズボンや上着の着替え(1、2着)
  • おぶい紐(幼児など)
  • ビニールシートなど(おむつ交換時や着替えのときのために)
  • 経管栄養の人の場合には、かかりつけ医と相談の上、注入物を5〜7日分程度を備えておくようにしましょう。また、かかりつけ医などと相談しながら、緊急時の取り扱い手順のメモを作っておきましょう。
【緊急時取り扱い手順のメモ記入例】
一回の量 一日当たりの回数  時間 介護の方法(例:姿勢) 注入物の名前(製品名) どういう器具が必要か 器具の扱い方 医療関係者との確認が必要な事項(例:チューブの交換)


内部障害のある人は?

 障害によっては、医療的ケアに必要な装具などがあります。常時、使用するもので保存できるものについては、かかりつけ医と相談の上で5〜7日分の用意をしておきましょう。

  • 心肺機能の低下や、体力の低下している人などは、感染や合併症の予防のために、かかりつけ医と相談して、うがい薬、解熱剤、抗生物質などの感冒薬、胃腸薬、栄養剤なども用意しておきましょう。

呼吸器・心臓に障害のある人は?

  • 酸素の備蓄はできません(危険なため)。
  • 在宅酸素療法をしている人は、医療機関に相談して、酸素吸入用カニューラ1本を余分に用意しておきましょう。
  • 人工呼吸器を装着している場合は、ライフラインが寸断されたときを想定してアンビューバック、バッテリー、手動式吸引器などを用意しておきましょう。
  • ペースメーカー手帳を持っている人は、写しを非常持出用品に入れておきましょう。

腎臓に障害のある人は?

  • 「避難所」では、細かい食事管理までできないことが予想されます。人工透析をしている人は、特殊食品を準備し、食事の自己管理に注意しましょう。
  • 腹膜透析をしている人は、供給企業の担当者と話し合って最低5〜7日分の透析液を用意しておきましょう。

膀胱・直腸に障害のある人は?

  • 直腸ストマを装着している人は、下部開放型袋を用意するとよいでしょう。ストーマケア用品(皮膚保護剤、絆創膏、ガーゼ、ウェットティッシュ、ビニール袋、消臭剤など)を一式一回分ずつセットして5〜7日分用意しておきましょう。
  • 膀胱ストマの人は、採尿袋、脚用収尿器を用意しておくとよいでしょう。
  • 自己導尿をしている人は、導尿用品を5〜7日分セットして用意しておきましょう。

小腸に障害のある人は?

  • 中心静脈栄養、その他の経管栄養をしている人は、必要な機材や用品を使いやすいように1回分ずつセットし、5〜7日分は用意しておくとよいでしょう。

 「避難所」では限られた食品しかないことが予想されます。また、経口摂取している人は、食べやすい食品の他にかかりつけ医に相談の上、栄養剤を用意しておくとよいでしょう。


知的障害のある人の家族、援助者は?
  • 服薬の際にオブラートを使用している人は、その用意をしておきましょう。
  • 備蓄品とする食料品について、好き嫌いがある場合には、試食して本人が食べられる物を用意しておきましょう。
  • 緊急時に非常持出用品を持って逃げることにこだわって、それがないと逃げられない状況も考えられます。
 必ずしも持って逃げることを伝えることがよいとは限りません。日頃の行動から判断しましょう。


精神障害のある人は?

  • 毎日飲んでいる薬以外の追加薬などについても、かかりつけ医と相談して用意しておきましょう。