国際赤十字・赤新月運動の基本原則 |
■人道(Humanity)
国際赤十字・赤新月運動(以下、赤十字・赤新月)は、戦場において差別
なく負傷者に保護を与えたいという願いから生まれ、あらゆる状況下において人間の苦痛を予防し軽減することに、国際的および国内的に努力する。その目的は生命と健康を守り、人間の尊重を確保することにある。赤十字・赤新月は、すべての国民間の相互理解、友情、協力、および堅固な平和を助長する。
■公平(Impartiality)
赤十字・赤新月は、国籍、人種、宗教、社会的地位または政治上の意見によるいかなる差別
をもしない。赤十字・赤新月はただ苦痛の度合いにしたがって個人を救うことに努め、その場合もっとも急を要する困苦をまっさきに取り扱う。
■中立(Neutrality)
すべての人からいつも信頼を受けるために、赤十字・赤新月は、戦闘行為の時いずれの側にも加わることを控え、いかなる場合にも政治的、人種的、宗教的または思想的性格の紛争には参加しない。
■独立(Independence)
赤十字・赤新月は独立である。各国の赤十字社、赤新月社は、その国の政府の人道的事業の補助者であり、その国の法律に従うが、常に赤十字・赤新月の諸原則にしたがって行動できるよう、その自主性を保たなければならない。
■奉仕(Voluntary
Service)
赤十字・赤新月は、利益を求めない奉仕的救護組織である。
■単一(Unity)
いかなる国にもただ一つの赤十字社あるいは赤新月社しかありえない。赤十字社、赤新月社は、すべての人に門戸を開き、その国の全領土にわたって人道的事業を行なわなければならない。
■世界性(Universality)
赤十字・赤新月は世界的機構であり、その中においてすべての赤十字社、赤新月社は同等の権利を持ち、相互援助の義務を持つ。
*宣言:第20回赤十字・赤新月国際会議(1965年、ウィーン)
*改定:第25回赤十字・赤新月国際会議(1986年、ジュネーブ)
解説文
赤十字国際委員会(ICRC)は、1863年、16か国の参加の下にジュネーブにおいて会議を開催し、10か条からなる赤十字規約を制定しました。これにより各国に赤十字社を創設し、各国政府の承認と同意のもとに、この規約が軍の衛生部隊の補助の機能を果
たすことなどを定めました。翌64年には、ジュネーブ外交会議が開催され、ヨーロッパの16か国の代表が参加し、「1864年8月22日のジュネーブ条約」に署名しました。
この後改正を重ね、第2次世界大戦後、ジュネーブで開かれた「戦争犠牲者の保護のための国際条約決定のための外交会議」で、以下の4つがジュネーブ条約として採択されました。人道の原則、相互依存の原則及び世界性の原則がそのジュネーブ4条約の本質的な三原則です。
1.
戦地の軍隊における傷者及び病者の状態改善に関する条約
2. 海上における軍隊の傷者及び難船者の状態改善に関する条約
3.
捕虜の取扱いに関する条約 4. 戦時における文民保護に関する条約
この4条約には、現在188か国が本条約を批准または加盟しており、わが国も1953年4月に加盟しました。