2007.2.19

「東京マラソン」

   
           東京マラソンの完走メダル



 夢のような時間でした。

 昨日、私は「第1回 東京マラソン」を走りました。
 今夏に行われる世界選手権の男子代表選考レースを兼ねた今大会は、トップランナーと市民ランナーが一緒に走る、日本では初めてのタイプの大会です。
 その記念すべき第1回大会に、抽選で選ばれし者の一人として出走したのです。

 昨日は朝からあいにくの天候でした。
 スタート時の気温は5℃、雨は結局、昼過ぎまでやむことはありませんでした。
 そんな悪条件でしたが、選手たちはひたすら走れる喜びでいっぱいでした。
 スタートにはやはり時間がかかりました。
 ちなみに、私がスタートラインを通過したのは、スタートの号砲後、12分近く経過したころでした。
 とにかく人の多さに驚きました。
 そして、それはすぐに感激へと変わりました。
 新宿の大通りを埋め尽くすランナーの群れ。
 その中の一人として、己も走っていました。
「世の中に、これほど愉快なことがあるだろうか……」
 まさに、自分は夢の中の人でありました。
 目の前の光景が、しばらくしても信じることができないほどでした。

 つぎに感激したのが、銀座の街並みでした。
 もともと私は、銀座のど真ん中を疾走したくて、この大会にエントリーしたのです。
 それが現実となりました。
 銀座の中心部は、アスファルトの色がちがうのです。
 そのアスファルトを踏みしめながら、時計台や木村屋の前を走りました。
 浅草を折り返すと、選手たちは再び銀座へと向かいます。
 そのときの光景を、私は一生忘れないでしょう。
 銀座の街頭に、今大会のペナントがぶら下がっていました。
 それらがはるか向こうまで続いています。
 そのブルーのペナントが、鮮やかに私の目に飛び込んできました。
「銀座の通りが、私たちを歓迎してくれている……」
 そんな感覚が、体中を包みました。
 涙が出そうになりました。

 この日の私は、いつもは20キロ手前には感じるはずの疲労を、30キロまで感じませんでした。
 しかし、さすがに30キロを過ぎると、そうはいかなくなってきました。
 でも、私のペースは落ちませんでした。
 東京の景色が、そして人々の声援が、私にペースを落とさせなかったのです。
 幸い、35キロを過ぎ、雨が上がりました。
 私はそれまで着ていたポンチョを脱ぎ捨て、ペースを上げようとしました。
 脚は、私の期待以上に動いてくれました。
 まだ余力があったのです。
 ペースはなお上がり、周囲の人をどんどん追い越していきました。
 残り4キロ。
 そのときの私は、心身ともに間違いなく“飛んで”いました。
「早くゴールしたい、でもレースが終わってしまうのはもったいない……」
 複雑な思いを胸に、私はゴールに向かって飛び続けました……
 13時30分、ゴール。
 ネットタイムは、4時間09分ちょうど。
 自己記録を、何と28分も更新していました。

「もしかしたら、昨日は夢を見ていたんじゃないか……」
 実は、今もそんな感覚が頭を離れずにいます。
 そんな余韻を感じずにはいられない、あまりに長く、短かった42.195キロでありました。

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