< バイオ・セーフティ安全性分類 >
抜粋: WHO 実験室バイオセーフティ指針 第3版    
NPOオメガ 文責: 宮崎碩文
出典: 原  版 :英語  [Laboratory biosafety manual:Third edition]
翻訳版 :和訳  [WHO: 実験室バイオセーフティ指針]
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目  次
はじめに
   表1:感染性微生物のリスク群分類
   表2:リスク群分類とBSレベル分類の関連,主な作業方式,機器
   表3:BSレベル別施設基準要約

第T部 バイオセーフティ指針
 2.微生物学的リスク評価
 3.基本実験室 バイオセーフティレベル 1,2
   図2:実験室[バイオセーフティー・レベル 1]
   図3:実験室[バイオセーフティー・レベル 2]
 4.封じ込め実験室(Containment Laboratory)バイオセーフティレベル 3
   図4:実験室[バイオセーフティー・レベル 3]
 5.高度封じ込め実験室(Maximum Containment Laboratory)
                   ―バイオセーフティレベル4
 6.実験動物施設
    表4:動物施設封じ込めレベル:作業原則と安全機器の要約
     動物施設 バイオセーフティレベル1
     動物施設 バイオセーフティレベル2
     動物施設 バイオセーフティレベル3
     動物施設 バイオセーフティレベル4
     無脊椎動物
 7.実験室/ 施設運営管理指針
 8.実験室/ 施設検証指針
第U部 実験室バイオセキュリティ
 9.実験室バイオセキュリティの概念
第V部 実験機器
 10.生物学的安全キャビネット
     クラスT生物学的安全キャビネット「図6」
     クラスU生物学的安全キャビネット「図7」「図8」
     クラスV生物学的安全キャビネット「図9」
     生物学的安全キャビネットの排気接続
     必要とされる防護タイプ別による生物学的安全キャビネット(BSC) の選択「表8」
     生物学的安全キャビネット(BSC)のクラスT、U、Vの相違点「表9」
     実験室内の生物学的安全キャビネットの使用
 11.安全機器
     陰圧柔フィルムアイソレーター
     ピペットエイド
     ホモジナイザー、シェーカー、ブレンダーおよびソニケーター
     使い捨て式の移植ループ
     微少焼灼装置
     個人用防護具と防護服
第W部 基準微生物実験技術
 12.実験室内技術
   実験室における試料の安全取り扱い
   ピペットとピペットエイドの使用
   感染性材料の散乱を避けること
   生物学的安全キャビネットの使用
   感染性試料の経口摂取、皮膚および眼への接触を避けること
   感染性材料の注射を避けること
   血清の分離
   遠心器の使用
   ホモジナイザー、シェーカー、ブレンダー、および
                                   ソニケーターの使用
   組織磨砕器の使用
   冷蔵庫と冷凍庫の注意と使用
   凍結乾燥した感染性材料を含むアンプルの開封
   感染性材料を含むアンプルの保存
   血液、その他の体液、組織、および排泄物の取り扱い
                                      における標準的注意
   プリオンを含む可能性のある材料に関する注意
 13.突発事態対応計画と緊急時対応手順
   突発事態対応計画
   微生物実験室の緊急時対応
 14.消毒と滅菌
   定義
   実験室資材の清掃
   化学殺菌剤
   室内環境汚染除去
   生物学的安全キャビネットの汚染除去
   手洗い/ 手の汚染除去
   加熱消毒と滅菌
   焼却
   廃棄
 15.感染性試料の運搬序論
   国際輸送規則
   基本的な三重包装システム
   漏出清掃手順

第X部 バイオテクノロジー序論
 16.バイオセーフティと組み換えDNA技術
   生物学的発現系のバイオセーフティ面からの考察
   発現ベクターのバイオセーフティ面からの考察
   遺伝子導入用ウイルスベクター
   遺伝子改変およびノックアウト動物
   遺伝子改変植物
   遺伝子改変生物のリスク評価
   その他の考慮
第Y部 化学物質、火災、電気の安全確保
 17.有害化学物質
   曝露経路
   化学物質の保管
   化学物質の配合禁忌の一般原則
   化学物質の毒作用
   爆発性化学物質
   化学物質の漏出
   加圧ガスと液化ガス
 18.その他の実験室災害
   火災
   電気災害
   騒音
   電離放射線
第Z部 安全組織と訓練
 19.バイオセーフティ管理者とバイオセーフティ委員会
   バイオセーフティ管理者
   バイオセーフティ委員会
 20.補助職員の安全
   設備および建物の維持管理業務
   屋内清掃業務
 21.訓練プログラム
第[部 安全点検リスト
 22.安全点検リスト
   実験室構内
   保管施設
   衛生と職員用施設
   暖房と換気
   照明
   基本機能
   実験室バイオセキュリティ
   火災防止と火災防護
   引火性液体の保管
   加圧ガスと液化ガス
   電気災害
   個人防御
   職員の健康と安全
   実験室機器
   感染性材料
   化学物質、放射性物質
第\部 文献、附録、索引
  文献
  附録1 応急手当て
  附録2 職員の予防接種
  附録3 WHO バイオセーフティ協力センター
  附録4 機器の安全
      災害を生ずる可能性のある機器
  附録5 化学物質:災害と予防のための注意
  索引

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はじめに

本指針の中では一貫して、感染症微生物の相対的災害は、リスク群(WHO リスク群1,2,3,4)で表現される。
このリスク群分類は実験室内の作業に関してのみ適用される。

表1 感染性微生物のリスク群分類
リスク群1:(個体および地域社会へのリスクは無い、ないし低い)
ヒトや動物に疾患を起す可能性の無い微生物。
リスク群2:(個体へのリスクが中等度、地域社会へのリスクは低い)
ヒトや動物に疾患を起す可能性はあるが実験室職員、地域社会、家畜、環境にとって重大な災害となる可能性の
  ない病原体。実験室での曝露は、重篤な感染を起す可能性はあるが、有効な治療法や予防法が利用でき、
  感染が拡散するリスクは限られる。
リスク群3:(個体へのリスクが高い、地域社会へのリスクは低い)
通常、ヒトや動物に重篤な疾患を起すが、通常の条件下では感染は個体から他の個体への拡散は起こらない
  病原体。有効な治療法や予防法が利用できる。
リスク群4:(個体および地域社会へのリスクが高い)
通常、ヒトや動物に重篤な疾患を起し、感染した個体から他の個体に、直接または間接的に容易に伝播され得る
  病原体。通常、有効な治療法や予防法が利用できない。

実験施設は,
     基本実験室 バイオセーフティー BS レベル1,BS レベル2
     封じ込め実験室           BS レベル3
     高度封じ込め実験室        BS レベル4         の何れかに分類される。

BS レベルの分類は,
     設計上の特徴
     建設方式
     封じ込め設備
     機器
     各リスク群の病原体に対して指示される作業と操作の方式   の組合せに基いて行われる。

表2に各BS レベルの各事項の基本を示すが、BS レベル分類に取り扱われている病原体のリスク群分類とは
相関するが必ずしも一致するものではない。


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表2 リスク群分類と、BSレベル分類の関連、主な作業方式、機器
リスク群バイオ・セーフティー・ レベル実験室の型作業方式安全機器
1基本-
        BS レベル1
基本教育、研究GMT 特に無し;開放型作業台
2基本-
        BS レベル2
一般医療, 診断
  検査、研究
GMT+ 保護衣、
 バイオハザード標識
開放型作業台+ エアロゾル
  発生の可能性ある場合はBSC
3封じ込め-
       BS レベル3
特殊診断検査、研究BS レベル2 + 特別な保護衣、
  入域の制限、一定気流方向
全操作をBSC/ ないし、その他の
  封じ込め機器を用いて行う
4高度封じ込め
  実験室-
       BS レベル4
特殊病原体施設BS レベル3 + 入口部は
  エアロック、出口に
 シャワー、特別な廃棄物
処理クラスV BSC または陽圧
  スーツ+ クラスUBSC,
 (壁に固定した)両面オートクレーブ;
 給排気は濾過
略語: BSC = 生物学的安全キャビネット ; GMT = 基準微生物実験技術(本指針第W部参照)
 各国(地域)は、下記の事項を考慮して、各国(地域)独自の微生物のリスク群分類を作製する:

1. 微生物の病原性。

2. 微生物の伝播方式と、宿主域。これには、当該地域の人口群の有する免疫レベル、宿主人口の密度と移動度、該当する
     媒介動物の存在、当該地域の環境衛生基準等により影響される。

3. 現地において、有効な予防法が利用できるか否か、考慮の対象は:予防接種または抗血清投与(受動免疫),衛生手段,
     例. 食品および給水の衛生、保有動物または媒介節足動物の駆除。

4. 現地において有効な治療法が利用できるか否か。考慮すべき対象は:受動免疫、曝露後予防接種、抗菌剤、抗ウイルス剤、
     その他の化学療法剤の利用、等であり薬剤耐性株の出現の可能性も考慮しておく必要がある。
   実験室内で取り扱う病原体へのBS レベル指定は、リスク評価に基づいて行う。リスク群分類および他の要因も考慮に入れて
     適切なBS レベルを指定する。
     例えば、リスク群2に指定された病原体は通常、BS レベル2の施設、機器、操作方式を指定
     して、作業上の安全を確保する。しかし、特定の実験で高濃度のエアロゾル発生が避けられない場合は、実験室施設内の
     エアロゾル封じ込め性能が一段上のBS レベル3を適用して、必要な安全度を確保する。
   従って、特定の作業に指定されるBS レベルは、使用する病原体のリスク群分類に基くBSレベルを自動的に適用するのではなく、
     実験の行われる場所でのリスク評価に基く職業上の判断により指定されなくてはならない(第2章参照)。


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表3 BSレベル別施設基準要約
BS レベル
1234
実験室の隔離 *a不要不要
汚染除去時の実験室気密封鎖性能不要不要
換気:
   内側への気流
   制御換気系
   排気のHEPA濾過

不要
不要
不要

望ましい
望ましい
不要



要/不要 *b



入口部二重ドア不要不要
エアロック不要不要不要
エアロック+ シャワー不要不要不要
前室不要不要-
前室+ シャワー不要不要要/不要 *c不要
排水処理不要不要要/不要 *c
オートクレーブ:
   現場処理
   実験室内
   両面オートクレーブ

不要
不要
不要

望ましい
不要
不要

要*z
望ましい
望ましい



生物学的安全キャビネット不要望ましい要*z
職員安全モニタリング設備 *d不要不要望ましい
 *a : 一般交通より、環境的、機能的に隔離。        *b : 排気系の位置による。
 *c : 実験室内で取り扱われる病原体による。        *d : 例、覗き窓、有線テレビ、2 方向通信系。
 *z : 日本語版:WHO第3版 「実験室バイオセーフティー指針」の「表3」には 「不要」と記載されてるが  WHO原版英語版「Table3」の記載に従い
     「Yes:要」 に 「訂正」 しました。  本HomePage文責者:宮崎碩文   2008/11/26

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表4 動物施設 封じ込めレベル : 作業原則と安全機器の要約
リスク群封じ込めレベル実験室作業原則と安全機器
ABSL 1立ち入り制限、保護衣および手袋
ABSL 2ABSL 1 の作業原則に加えて:災害警告標識。 エアロゾルを発生する全作業に
  クラスT BSC  または
  クラスU BSC
洗浄前に廃棄物および飼育ケージの汚染除去。
ABSL 3ABSL 2 の作業原則に加えて:立ち入り管理。全ての作業にBSCおよび特別保護衣。
ABSL 4ABSL 3 の作業原則に加えて:厳格な立ち入り制限。入室前の更衣、クラスVのBSCまたは
  陽圧宇宙服。退出時のシャワー。 施設から搬出する前に全廃棄物の汚染除去。
ABSL = 実験動物施設バイオセーフティレベル(animal facility Biosafety Level)
BSC, 生物学的安全キャビネット(biological safety cabinet)

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典型的な バイオ研究 基本実験室
図2 実験室: 典型的な[バイオセーフティレベル1] ↓
図3 実験室: 典型的な[バイオセーフティレベル2] ↓

図4 実験室: 典型的な[バイオセーフティレベル3] ↓
↑ 図3 実験室: バイオセーフティレベル2
エアロゾルの発生しやすい作業は生物学的安全キャビネットの
  中で行われる。
ドアは閉鎖しておき適切なハザード標識を表示する。
汚染した可能性のある廃棄物は一般の廃棄物の流れとは隔離
  する。

 
← 図4 実験室: バイオセーフティレベル3
実験室は、一般の気流の流れとは分離され、前室(二重ドアの
  入口または基本実験室バイオセーフティレベル2)または
  エアロックから入る。
廃棄物を処分する前に汚染除去するため、オートクレーブが
  施設内に設置されている。
手を使わずに操作できる流しが設置してある。
出入り口から実験室に一定方向の気流が確保され、感染性の
  試料を取り扱う作業は全て安全キャビネットの中で行われる。


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生物学的安全(バイオ・セーフティー)キャビネット : BSC   クラスT   クラスUA1   クラスUB1   クラスV
◎ 生物学的安全キャビネット (BSC)は、初代培養、保存材料や診断試料などのような病原体を含む材料を操作するときに発生する可能性のある感染性エアロ
ゾルや飛沫への曝露から作業者、実験室環境および材料を保護するように設計されている。

◎ エアロゾル粒子は、液体か半流動体の試料の中にエネルギーを伝達するあらゆる作業、例えば振盪、注入、撹拌や他の液体表面や液中への滴下、によって
産生される。
他の実験室活動、例えば寒天平板への塗布、ピペットによる細胞培養瓶への接種、多チャンネルピペットを用いたマイクロカルチャープレートへの感染性材料
浮遊液の分注、感染性材料のホモジェナイズや渦流磨砕、感染性液体の遠心、あるいは動物を用いた作業などにより感染性エアロゾルが発生する可能性がある。

◎ 直径 5 μm以下のエアロゾル粒子および直径 5-100μmの小滴は肉眼で見ることはできない。 実験室職員は、一般に、そのような粒子が発生していて吸入
するかもしれない、または作業表面の材料を相互汚染するかもしれないことに気づいていない。

◎ BSCは、適切に使用されれば、エアロゾル曝露による実験室感染および培養物の相互感染を減少させるのに非常に有効である事が示されている。
また、 BSCは環境も保護する。 時間経過と共に、 BSCの基本的な設計はいくつかの変更を受けている。
= 主要な変更は、排気系への高性能粒子吸着空気HEPAフィルターの組み込みです。
   HEPAフィルターは、直径 0.3μmの粒子は99.97%、直径 0.3μmより大きいか、より小さいサイズの粒子を 99.99%捕捉する。これは、事実上、 HEPA
   フィルターが、すべての既知の病原体を効果的に捕捉する事を可能にし、無菌の排気だけがキャビネットから放出されることを保証する。
= 二番目の設計上の修正は、作業表面に HEPAでろ過された空気を導入し、作業表面上の材料を汚染から保護する事である。
   この特色は、しばしば生産物防護(product protection)と呼ばれる。これらの基本設計概念から,BSCは3つのクラスに分化することとなった。

 注意:水平および垂直方向に空気が排出されるキャビネット (“清浄空気作業台” clean-air work station)は、生物学的安全キャビネットではないので、
      安全キャビネットに相当するものとして使用してはならない。

表8 必要とされる防護タイプ別による生物学的安全キャビネット(BSC) の選択
防護タイプBSC 選択
職員防護、リスク群1-3の微生物クラスT、クラスU、クラスV
職員防護、リスク群4の微生物、
グローブボックス実験室
クラスV
職員防護、リスク群4の微生物、宇宙服実験室クラスT、クラスU
生産物防護クラスU、層流が形成される場合のみクラスV
揮発性放射性核種/ 化学物質防護、少量クラスU B1、室外排気型のクラスU A2
揮発性放射性核種/ 化学物質防護クラスT、クラスU B2、クラスV

表9 生物学的安全キャビネット(BSC)のクラスT、U、Vの相違点
BSC前面開口部風速
(m/sec)
気流比率(%)
再還流  排出
排気システム
クラスT *0.36  0    100固定ダクト(hard duct)
クラスU A10.38- 0.51  70    30室内排気あるいは円筒接続
クラスU A2 室外排気 *0.51  70    30室内排気あるいは円筒接続
クラスU B1 *0.51  30    70固定ダクト
クラスU B2 *0.51  0    100固定ダクト
クラスV *該当せず  0    100固定ダクト

*:すべての生物学的に汚染しているダクトは陰圧下であるか、あるいは陰圧ダクトと排気口部によって囲まれている。

クラスT生物学的安全キャビネット  「図6」
 図6 にクラスT BSC の模式図を示す。室内空気が最小0.38m/sec の速度で開口部を通って流入し、作業表
面を通り過ぎて、排気ダクトを通してキャビネットから放出される。気流は作業表面で発生するかもしれない
エアロゾル粒子を実験室職員から払い出して排気ダクトへと導く。作業者はガラス窓を通して作業表面を目視
し、キャビネット内の作業表面の作業は前面開口部から腕を差し込んで行う。また、窓部分は、清掃や他の目
的で作業表面に到達するために押上げて完全に開放することができる。
 キャビネットからの空気はHEPA フィルターを通して:(a) 実験室内へ、その後建物排気を介して建物の外部
へ(b) 建物排気を介して外部にまたは(c) 直接外部へ排気する。通常HEPA フィルターはBSC の排気口部か建
物排気系内に設置する。排気ファンを内蔵したクラスT BSC もあるが、建物排気系の排気ファンを利用してい
るものもある。
 クラスT BSC は最初の認定されたBSC であり、その単純なデザインのために、世界中でまだ広く使用され
ている。それは、作業者防護と環境防護に有用であり、また放射性核種と揮発性の有毒化学物質を用いた作業
にも使用することもできる。滅菌されていない室内空気が前面開口部から作業表面に引き込まれるので、生産
物防護に関しては一貫した信頼性を与えるものとは考えられない。
クラスU生物学的安全キャビネット
 ウイルス増殖やその他の目的で細胞培養や組織培養の利用が発達した結果、滅菌されていない室内空気が作
業表面を通過することは実験条件として望ましいものではなくなった。クラスU BSC は、単に作業者防護を提
供するだけではなく、汚染室内空気から作業表面の試料を防護するように設計されている。クラスII BSC の4
つのタイプ、(A1、A2、B1 およびB2) は、HEPA によって濾過された( 無菌) 空気のみが給気として作業表面を
流れる点で、クラスT BSC と異なる。クラスU BSC は、リスク群2 および3 の病原体を用いた作業に使用でき
る。クラスU BSC は、陽圧宇宙服(スーツ)を使用する場合、リスク群4 の病原体を用いた作業に使用するこ
とができる。

クラスUタイプA1 生物学的安全キャビネット  「図7」
 クラスUタイプA1 BSC を図7 に示す。内部ファンで室内空気( 給気) を前面開口部を介しキャビネット内と
前部吸気グリルに引き込む。この空気の流入速度は前面開口部面において少なくとも0.38m/s でなくてはなら
ない。給気は作業表面へ下向きに流れる前に、給気HEPA フィルターを通る。下向気流は作業台の表面からお
よそ6-18cm 離れたところで「分岐」し、半分は前部排気グリルを通り、残りの半分は後部排気グリルを通る。
作業表面で発生するどんなエアロゾル粒子も、速やかにこの下向気流で捕捉されて、前部または後部排気グリ
ルへ導かれ、その結果として最高水準の生産物防護を提供する。 その後、空気は後部排気口部を通過してキャ
ビネットの上部に設けられた給気および排気フィルターの間にある空間内に放出される。これらのフィルター
の大きさの相対比によって、およそ70% の空気が給気HEPA フィルターを通過して作業ゾーンへ再還流する;
残りの30% は排気フィルターを通過して部屋の中、または外部に放出される。
 クラスU A1 BSC からの排気は室内へ再還流し、あるいは円筒接続(thimble connection) を通して専用ダク
トへ、または建物の排気システムを通して建物外部に放出することができる。
 部屋に排気を再還流させることは、空調した空気を外部環境へ放出しないことにより、建物空調の燃料コス
トを低減する利点がある。排気をダクトに接続したBSC の場合、揮発性放射性核種と揮発性有毒化学物質を用
いた作業での使用も可能である(表8)。
外部排気型クラスUタイプA2、およびクラスUタイプB1、B2 生物学的安全キャビネット  「図8」
 外部排気型クラスU A2、U B1( 図8) およびU B2 BSC はタイプU A1 の変型である。それらの特徴を、クラ
スTとクラスV BSC のものと共に、表9 に示す。各変更点により、各タイプのBSC は夫々特定の目的に適した
ものとなる( 表8 参照)。これらのBSC はいくつかの面でお互いに異なる:前面開口部を通過する流入空気速度;
作業表面への再還流空気量およびキャビネットから排出する空気量;排気系キャビネットの排気が室内へ排出
されるか、それとも専用排気システムあるいは建物の排気系統を通した外部への排出であるか;圧力の配置(キャ
ビネットの生物学的に汚染しているダクトと排気口部が陰圧であるか、あるいは生物学的汚染ダクトと排気口
部が陰圧のダクトと排気口部によって囲われているかどうか)。
 種々のクラスU A とU B BSC に関する完全な記述は、文献(7) と(8) および製造者の添付文書から得ること
ができる。
クラスV生物学的安全キャビネット  「図9」
 このタイプ( 図9) は、最高水準の職員防護を提供し、リスク群4 の病原体に使用される。全ての貫通部分は“耐
気性(gastight)”に密封されている。給気はHEPA でろ過され、排気は二重のHEPA を通過する。気流はキャ
ビネット外部の専用の排気システムによって維持され、キャビネット内部を陰圧( 約124.5Pa) に維持する。作
業表面への到達は頑丈なゴム手袋を用いて行われ、ゴム手袋はキャビネットのポートに取り付けられている。
クラスV BSC には、滅菌することができ、かつHEPA 排気を備えているパスボックスを配備すべきである。ク
ラスVキャビネットには、キャビネットに搬出入するすべての材料を汚染除去するために、両開きのオートク
レーブを接続することも可能である。数個のグローブボックスを連結して作業表面を広げることもできる。ク
ラスV BSC はバイオセーフティレベル3 と4 の実験室の作業に適しています。

生物学的安全キャビネットの排気接続
 「円筒(thimble)」あるいは「天蓋フード(canopy hood)」が、室外排気型クラスU A1 とU A2 BSC で使用す
るために排気口部用に設計されている。円筒接続はキャビネットの上の排気口部に取り付け、キャビネットの
排気を建物排気ダクト内へ吸い込む。通常直径2.5cm の小さな隙間を円筒とキャビネットの排気ハウジングの
間に設ける。その上、この小さな隙間は室内空気が建物の排気系に吸引されるのを可能にする。建物の排気容
量は、室内空気とキャビネット排気の両方を十分にまかなえる量でなければならない。円筒は、取外し可能で
あるか、またはキャビネットの操作テストができるよう設計されていなければならない。一般に、円筒接続さ
れたBSC の性能は建物気流の変動にはあまり影響されない。
 クラスU B1 とU B2 BSC は固定ダクト(hard duct) で、どのような開口部もなく堅固に建物の排気システ
ム、あるいは望ましくは専用の排気ダクト系に接続される。建物の排気系は、製造者によって指定された気流
要件に容量と静圧の両方で正確に合っていなければならない。固定ダクトBSC の検証は、室内に再還流させる
かまたは円筒接続されたBSC よりは慎重に、時間をかけて行わねばならない。