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俺は魔王に最後の一撃を加えた。

『ぎゃあああああああああああ』
絶叫とともに塵にかえるラスボス。
それとともに支配のオーブが煌き、まるで映画のプロジェクターのように目の前の空中に像を結ぶ。
どこからともなく流れる勇者のマーチ。
どうやらエンディグらしい。
オーブの映す光景は……
目の前には最初の勇者の家が映り、美母が勇者の帰りを手料理を作りながら待っている。
大神殿では光が戻った世界に聖母と神官たちが祈りを捧げている。
王城では王妃が民衆達の前に晴れやかな笑顔であわられ、白狼騎士団たちが女騎士団長を中心に歓声をあげている。
エルフの女族長も輝く湖のそばで小鳥達とたわむれ。
砂漠のカジノではバニーガール達が踊り歌い笑いが絶えることはない。
魔女の塔では、相変わらず忙しそうに研究が行われ、モンスターに脅えることのなくなった村人達が嬉しそうに手を振っている。
そして、幽閉された魔王も蘇り、娘と抱き合って喜んでいた。
って、この登場人物ぜんぜんあってないじゃん!
くうううう、ちゃんとゲームクリアしてれば、ここで、ああこいつ元気なんだとか、おお、この街なつかしぃ、とか後日談があるのに……
へたに強くなりすぎて王道を踏み外してしまったみたいだ。
そんな中、オーブの映像はすでにスタッフロールに移っている。
なんともむなしい……
まぁこれからは魔王のいない平和な世界でコツコツレベル上げでもしながら隠しイベントでも探しにいくか…
「ん?なんだ?」
その時、俺の体がゆっくりぼやけだした。
なんだか手も透明になってきてるぞ!
「ありがとう…異世界の勇者よ…」
え?俺がうすれゆく視界であたりを見渡すと、そこには七色に輝く髪をもった、この世のものとは思えないほどの美女が空中にふわふわ漂っていた。
虹色の衣からこぼれる光が床に弾けると、それは0と1のデジタル数字にかわって消えていく。
「あんたは?」
「私はデバッカ…ゲームの女神です」
天から響く神々しい声。
「なに?そんなキャラこのゲームにはいなかったぞ、何だ?」
女神と名乗る美女はゆったりと天を舞いながら俺のそばに降りてくる。
「勇者よ…この世界をすくってくれたこと…感謝しています…ありがとう…そして、さようなら」
女神はすっと指をつきだすと俺の額に触れる。
その途端、俺の体は0と1の数字の塊になり崩れて消えていた。
「ううううう……ここは…あれ?」
気がつくと、いつもの俺の部屋。
あまり整理されていないパソコン机の上のモニターには懐かしのゲームのエンディングが流れている。
「あれ?俺なんでこんなゲームしてたんだっけ?」
俺はあたりを見回す。
うーん、どうやら寝てたみたいだ。
……なんだか面白い夢をみた覚えはあるんだが。
まぁ考えるだけ無駄だな。
俺は明日も朝早くから始まる忙しい毎日を考え、パソコンの電源を落とすためにマウスを手にした……
そう、冒険の記憶を全て忘れて……

リアル帰還 (BAD END 1)
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