俺は次の試合にでることにした。
「それでは一般参加、対、白狼騎士団所属シェスタ・ミレニードの試合を始める」
うおぉおお--っと盛り上がる大歓声が闘技場を包み込む。。
まったくすごい声援だな。
あれ今そう言えば今何試合目だ?なんだかもう何十回と戦った気がするし、いやぜんぜん戦っていない気もする。
う〜ん、まぁいいか。
『シェスタ様ぁっ』
『がんばってくださいませ』
『ジーラ様の敵を!』
よく見れば観客席の最前列に、金色やプラチナ、それに青や緑といったいかにもファンタジーらしい髪の色をした美少女達が並んで俺の対戦相手に黄色い声援を送っている。それにつられてか闘技場全体も盛り上がっているようだ。
最前列に陣取る娘達はどれも一般NPCとは思えないほど容姿のレベルが高いらしく、整った顔立ちと品がある雰囲気を放っていた。
お揃いの白銀の鎧に、マント止めの装飾のこったブローチの飾りからすると、この美少女サポータ軍団は王侯貴族の乙女達を集めて結成された白狼騎士団の騎士団員達に間違いないだろう。
そして彼女たちの声援と、それに同調する有象無象の観客の声援に後押しされ、俺の前に立つのは、透き通った蒼い髪の物憂げな様子の美女だった。
瞳の色もこれまた髪と同様なスカイブルーのまるで氷のような冷たい美貌は……そう確か前に見たことがある。
王宮にもぐりこんで王妃を頂いちゃった時にみかけた白狼騎士団の副団長様だ。
ほうほう、ジーラに続いて、このシェスタとか言う副団長とは、美人揃いの白狼騎士団二連戦とはついてるね。
基本、この武道大会イベントは、対戦相手は王都にる騎士やら戦士、魔法使いのNPCがレベルに合わせてランダムにでてくる仕様だからな。
だが、本来のゲームでは、白狼騎士団は王都の賑やかしというか、王妃の周りのオブジェクトといった具合で、大会にも白狼騎士団の騎士とかな具合で名前もない非常にしょぼい相手だったはずだ。
しかも、ゲームの戦闘画面でも確か金ぴかの王直属騎士の色違いで、女性といのも設定資料を見ないとわかない程度だったんだがな。
「お前が…か」
ゲームとは違い非常に個性的なスカイブルーの髪の涼やかな美女騎士は、真珠のように艶やかな光沢のある唇を微かに開いて、ぼそっとクールな声で尋ねてくる。
「あぁ、そうだが?それが何か?」
う〜む、ジーラもそうだったが、ゲームの時はほとんど台詞もなくただ立っているだけの女騎士A、Bってな具合の存在だったからな……正直データがわかっているモンスターの方がやりやすいぜ。
実際ゲームの中じゃこんな個性をもった騎士団員とは対戦することはなかったわけだ。
シナリオにない展開なわけだ。
例え最強といえそれはゲームのシステムの中だ。
ここは慎重にいかないといけんぞ、俺。
「先ほどの対戦相手……ジーラを何処にやった?」
ばさっと薄いコバルトブルーのマントを翻しシェスタはさらに重苦しい声で聞いてくる。
「さあねぇ、俺は知らなえねぇ、あんな恥ずかしい負け方したんだ、いまごろどっかでシクシク泣いてるんじゃねぇか」
正解は俺の肉棒にさんざんあんあん泣かされ肉穴家畜に堕ちて、俺の帰りを健気に待っているんだけどな。
俺は相手を挑発するようにヘラヘラと笑いながら肩をすくめてみせる。
「……ジーラの居場所吐いてもらうぞ、」
そう言うやいなや、物憂げな美貌の女騎士は再度ばっとマントを翻す。
「うおっ」
その途端、マントの後ろからすっと自然な動作でレイピアの刃先が飛び出ると、正確に俺の額めがけて襲い掛かってきていた。
空気を切り裂く鋭い音と共に、俺の前髪が数本もっていかれる。
「ひゅぅ」
「……はずしたか」
あくまで冷静な女騎士。
たくっ!あぶねぇ、
もう少しでとっさに反撃してシェスタを即死させることころだった。
俺は別の意味で冷汗をかいていた。
ふぅ、こんな美女を傷物にしたら、それこそ世界の損失だからな。
やれやれと胸をなでおろす俺の耳に遅ればせながら、
「しっ、試合開始っ」
ようやく審判の声が闘技場に鳴り響く。
『シェスタ様ぁ、素敵ですぅ』
『速攻ですぅ、シェスタ様ぁ』
『がんばってぇええええ』
白狼騎士団の美少女騎士達の黄色い声援がさらに激しさを増し出す。
どう考えても蒼い髪のシェスタの反則なのだが……どうやら無かったことになっているらしい。
さすがに白狼騎士団の副団長を反則負けにはできないのだろう。
それに俺はみんなのアイドル白狼騎士団のNO3、ジーラを失神させた上に公衆の面前で辱めちまったしな、う〜ん、つくづく勇者に向いてないな俺。
「……死ね」
そんな隙だらけの俺にむかって、マントをひる返しまた鋭い突きで迫ってくる美貌のシェスタ。
だが、いかんせん素早さ最強の俺の前ではすべて虚しく空を切るだけだ。
「----っ」
だがレイピアの切っ先が外れても、シェスタは慌てることなく落ちついた表情を崩さない。それどころか冷静に俺の出足をくじくジャブのような鋭い突きとフェイントで牽制をかけてくる。
どうやら俺に手数を打たす気はないらしい。
「ほ〜ぅ」
俺は相手のなかなか鋭い観察眼に驚きながら、今頃になってやっと腰からコレル秘蔵の魔剣を引き抜くと、こちらも対戦相手のシェスタをまじまじと観察する。
何はなくともまず、その整った顔立ちに目が移る。
すっと伸びた秀逸な眉に、すらりとした鼻筋、長いまつげが物憂げに伏せられスカイブルーの瞳。
まるで彫像のように表情を崩さないクールな美貌。
そして見事な比率で形成されたスタイルの肢体が、まるで機械仕掛けの人形のように的確な動きでレイピアを振るい、床をけって間合いを詰めてくる。
常人では見えないほど素早く動くたびに、首の後ろでひとまとめ編まれた長い髪が左右に揺れて蒼い残像を残している。
ふむ、コバルトブルーの長いマントで隠しているが、あの素早い身のこなしは普通の騎士団の乙女たちが来ている金属製の鎧とは違うとみた。
おそらく軽装の魔法強化された皮鎧を着ているのだろう。
シルフアーマーか?白銀の胸当てか?う〜ん、それともミラージュメイルあたりか?
まぁなんにしろ、そのおかげでそのすらっとした肢体のシルエットが十分堪能できて役得役得だ。
聖女や王妃と違い目立つようなエロエロ爆乳ではないようだが、腰の位置も高く、ブーツへと続く太腿のラインは絶品だ。
くくくく、ジーラに続いてなかなか上手そうな女騎士だ。
あの冷徹な美貌から熱い喘ぎ声を出すまでヤリまくってやる。
「くくくく」
思わず声が外に漏れてしまう。
「なるほど……このような攻撃は余裕というわけか」
俺の笑い声をどう判断したのか、シェスタは突然その白い手からレイピアからはなす。
カシャンと涼やかな音をたてオリハルコン製のレイピアが闘技場の石畳の上に転がっていた。
「ん?もう降参か?」
意外な美女の行動に俺がとまどっていると、スカイブルーの瞳に狡猾な光が宿り出す。
「いや、この程度の武器はお前に効くとは思えないからな、早速だが奥の手を出させてもらう」
淡々と話しながら、シェスタは腰の後ろから一本のワンドを引き抜いていた。
彼女の手にしたワンドは、ゴツゴツとした無骨な作りでいくつものルーン文字が掘り込まれている。
このために用意したのか、あまり手になじんでないようだ。
だが、ワンドを取り出しもう片方の空いた手で複雑な印を組みだしたということは……
「ほう、お前魔法も使えるのか…なるほどな魔法騎士だったのか」
まぁ勇者である俺にとっては剣も魔法も全て万能だが。
一般人はそうはなかなかいかない。
魔法も剣も仕えるということは、その肢体と同様な相当良いバランスのとれたステータスしているわけだ。
涼しげな無表情のシェスタが持つのは「大地の杖」と呼ばれる魔力増幅の効果がある魔法のワンドだ。
おそらくあれで足りない魔力を補う気なのだろうか?
いやまてよ、そう言えば、確か「大地の杖」は道具で使えば…
というか、何だか前に一度こんな光景を見た覚えもなきにしもあらず。
というかデジャヴュ?
「…覚悟しろ、、いや勇者よ」
俺がそれ以上考えをめぐらそうとした時、シェスタがぐいっとワンドを突き出しその艶やかな唇から魔法の詠唱を始める。
んんっ!おそらくジーラから聞いたんだろうが……この美女、俺の正体を知っていて勝負を挑んできた口のようだ。
しかも力押しのジーラとは異なり、どうやら何か策があるみたいだが……
これはマジでやっかいかも知れんぞ。
俺はここで……
くくく、無駄無駄、シェスタの攻撃を受け止めてやる、防御魔法だ
くくく、無駄無駄、俺の特別魔法をお見舞いしてやる、攻撃魔法だ
くくく、無駄無駄、策には策で返して罠に嵌めてやる、幻覚魔法だ
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