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「俺は勇者だ」

それからの展開は驚くほど速かった。
群がる兵達に勇者の剣をみせてやると、まるで黄門様の印籠よろしく全員が一斉に頭をさげる。
そして気がつけば王都の中心部、王の御前にふんぞり返って立っているわけだ。
「おぉ勇者よ、よくぞ参られた」
定番通り赤絨毯がひかれ、一段高い王座に腰掛ける老齢の国王。
先代勇者とともに戦った老練の魔法使いだったはずだが、今は白髪によぼよぼの肌の棺おけに片足をつっこんだような耄碌ジジィだった。
そしてその王座の横に優雅に立つ王妃の姿。
夫である老王とは4,5回りほど年齢の違う若々しい美貌とカリスマ性に優れた実質的な王家の指導者だ。
まぁもっともゲームの時は「がんばってくださいね」「頼みましたよ勇者」しか言わないキャラだったのだが…まぁこんな美女になってくれたんだからよしとするか。
俺がちらりと目線を向けると、艶やかな美しい王妃は頬を染めて長いまつげをそっとふせる。
くくくく、また可愛がってやらないとな。
そして、赤絨毯を挟むように数十人の近衛兵と大臣達が整列し、勇者である俺に期待と尊敬の眼差しを向けている。
「勇者よ、先ほど西の大地母神の聖堂から使いがあり勇者殿を迎えに騎士団を派遣しておったのじゃ」
「あぁ、転移魔法を使ったからな入れ違いだろ」
「おおぉ戦士でありながら、高等魔法も使いこなせるとは、さすが勇者様」
大臣の一人が感涙でむせび泣きながら汗や鼻水を飛ばしている。
うげっ汚ねぇなぁ
「しかも大聖堂を襲った邪龍グルバルドゥーンを一撃で倒したとか」
『おおぉ〜〜』
王宮中が感嘆の声でどよめき、一呼吸おいて俺を賞賛する声があがる。
「いやぁ、どもども」
俺はおざなりな返事をしながら軽く手をふってやった。
まぁ名声最大だからな。
みんな俺の名前を聞いただけで感涙してくれる。
それに大臣や護衛の兵士のさらに向こう、謁見の間を見下ろすテラスに貴族の夫人や侍女達がこちらを伺っているのも忘れちゃならい。
くくく、さすがどれも高貴で美味そうな女どもだ。
そのうち全員……
「勇者よ、そちも知っておろう……魔族達の軍勢はもう我等ではどうにもならんほど強大じゃ」
王は震える声をあげる。
自分の無策を誇らしげに語るなよ、このボケ王が。
ってことを思いながら、俺はニヤリと不敵に笑って答えてやる。
「あぁもちろん」
「すでに我が軍は敗退に敗退を重ね、この王都の他は幾つかの街をのこすのみ…外にはモンスターが溢れ、すでに魔界を化しておる」
まぁなぁ外はワンダリングモンスターでいっぱいだ。
「そこで勇者よ、お前にこの世界の明暗をたくす…ぜひ魔王を打ち倒し世界に再び光を」
耄碌ジジィの王さんはゼイゼイ言いながら皺だらけの両手を天に掲げ、喘ぐようにお決まりのNPCの名ゼリフ『勇者よ!後はまかせた』をお気楽にぶちかましてくれる。
しかし、あれだな
勇者一人に世界の責任押し付けんなよ……あんたそれでも一国の王か?
「たのみましたよ勇者殿」
「お願い致します殿」
「攻撃のときは道具を装備するのですぞ」
「薬草はHPを回復します」
だれもかれもが勇者頼みだ…中には操作方法をチュートリアルしだす奴まで。
あぁうざい。
だいたい、この手のは、やってるうちに覚えるんだよ!
…」
そんな中、王妃エスカリーナだけがそっと両手を、ザックリと襟首の開いた魅惑的なドレスの胸元で祈るようにしている。
「さぁ勇者よ、旅立つのじゃ」
王がなんかあらぬ方向をびしっと指差して涙なんか流している。
「これは旅の用意にお使いください」
そこで、大臣の一人が金貨のつまった袋を持ってくる。
うむ、話が前後しているが本当の筋ならば俺はここで金をもらって旅の支度を整えたりするんだよなぁ。
ってか世界の命運を託す相手にはした金程度をわたすんじゃねぇよ。
「いや、いらん、必要な物は全てある」
俺は王や大臣に向かって、カバンの中を見せてやる。
もちろん、そこには重要なアイテムがずらりだ!
老王や大臣どもは口をパクパクさせる。
ふむぅまぁびびるわな、中には王家の紋章とか、神々の秘薬とか真実の鏡とか……ああ!
『ウゴォオ〜〜バレカタァ』
途端に王のすぐ側にいた一人の大臣が巨大な化け猿に変化する。
「ひぃい、どうしたんじゃ、ザキロフ宰相…まさかお前!」
あたふたとする老王と大臣達。
ふむ、しまった真実の鏡は人間に化けたモンスターを暴くアイテムだった。
宰相がモンスターと入れ変わっていたの忘れていたよ。
「ひぃいいい、お助けぇ」
「わぁぁモンスターだぁぁ」
勿論、衛兵達はまったく役にたたない。
「これはいったい何事?」
そんな中、王妃は王座の横に立てかけられた宝石で飾られた剣を取ろうとしている。
あいかわらず、気丈な美女だ。
だがあんなお飾りの剣ではあのモンスターに勝てやしない。
「エスカリーナ、はやくこっちだ」
「はい」
腰を抜かす老王をほうっておいて王妃はドレスの裾を翻して俺の腕の中に従順に飛び込んでいる。
!」
王妃の弾力のある挑発的な巨乳が、むっにゅっと俺に押し付けられ、そのままぴったりと抱きついてくる。
「あぁまたすぐに会えると思っていた、嬉しい、
そっと俺の耳元に高貴な人妻が甘くささやく。
「くくく、俺もだ、会いたかったぞ」
俺は王妃を抱きしめたまま、ドレスの上からむっちりとした桃尻をぐっと掴み、こねまわす。
「あん…だめだ…こんなところで、んっ」
抜群のスタイルが俺の腕の中で身悶える。
「くくく、忘れたのか?俺にいつでも体を差し出すと言ったのはお前だぞエスカリーナ、王宮でもどこでもな、俺専用の淫乱王妃なのは嘘なのか?ん?」
「ぁぁ、そうだったな…わたくしはお前の物だ…専用の淫乱王妃だ、また可愛がってくれ、わたくしの勇者よ」
はむっと俺の耳たぶが王妃の艶やかな唇に甘く噛まれる。
うひっ、たまんねぇほんとスケベでエロエロな王妃だ。
などと俺たちが乳繰りあっていると、その横で……

『ウガァアアアーーー』
「ぐはぁぁ」
『グルルルル、ミナゴロシダ』
「ひぃぃ、お助けぇえ」
化け猿がぐわっと口を開いて火炎を撒き散らし、手当たり次第に衛兵をちぎっては投げ、大臣どもを踏み潰す。
「くそぉよいか、今こそ王国黄金騎士団の力を見せる時だ!」「おお!」
ガチャリと剣や槍を構える騎士達。
『グハハハハ、ファイアーブレス〜〜』
「ぎゃあぁ」
あっという間に着飾った騎士の一団のローストの出来上がり。
「むぅ王国最強の騎士団が!壊滅とは…ぎゃああぁ」
『グハハハハ、メガフレイム!』
「うわぁぁぁ」
王宮の謁見の間は一方的な戦場と化していた。

「あぁだめだ、あん、そこ、そこはまだ、あんっ、お尻に指を入れては…んん」
「いいじゃねえぇか、ほら」
スカートをたくし上げむっちりとした桃尻を後ろから弄ぶ。
「んんっ、だめ、あぁん」

ドガ〜〜〜ン
「くぅこなれば王家最大の秘宝「諸刃の剣」を」
「なりません隊長それは!」
「はなせ、今やらねばいつやるのだ」
『グルルル〜シネ』
「のわぁあぁぁぁ」
なんだか血気速ったおっさん達がいちゃいちゃする俺達の横を黒焦げになって吹き飛んでいく。

「あん、またキスをしてくれないか…あぁ、勇者の舌を啜らせてくれ」
「くくく、いいのか?王が、お前の亭主が見てるぞ」
「何を言っている?わたくしの主人は、お前ではないか?」
王妃は淫蕩に微笑むと、俺にその美貌を寄せてくる。
 ちゅくっ ちゅちゅちゅ じゅるるるっ
相変わらずのいやらしく飢えた舌が、俺の口の中を隅から隅まで舐め尽くす。
「あん…んんっ…うんんん」
もちろん俺もドレスの胸元からも手を突っ込み十二分に熟れた巨乳をひっぱり出すと、揉みつねり絞り上げる。
「あふぅ…あぁまた胸をいじめて…ああぁん…お尻も…くっ狂うっ、あうっ、んぐっんんっ」
王妃は俺の唾液をすすり上げ、喉を鳴らして飲みながら、柔らかい肢体をからませてくる。
そんな俺たちの横で、化け猿が咆哮をあげていた。
『グルルルルル…ヨワイ、ヨワイワ!魔王サマノ手ヲ借リズトモ皆殺シダァァアア』
王座を踏み潰し胸を叩いて歓声をあげる化け猿が、ふと横を向く。
そこにはしっかり抱き合いディープキスをする俺たち。
『オア?……コレハ?』
化け猿もついていけないのか、意見を求めようと辺りを見渡すが。みんなのびて床に倒れている始末だ。
「あぁん…ちゅちゅ…んんっ」
「くくく、本当にいい体だぜ」
上品で気品の高いクールな美貌に、このスケベな本性のアンバランスさがまたなんとも堪らんな。
『アノ…チョット、イイデスカ?』
トントンと俺の肩を叩く毛むくじゃらの指。
「…あぁ?なんだよ?俺は今忙しいんだが」
「あぁん、、ダメだぞ、よそ見するな、んっ、やめてはならん…あぁ…ちゅ…あん、もっとキスをしてくれ、んんっ、…あんっ」
化け猿のほうに振り向いた俺は、すぐに美女の両腕でがっちりと捕らえられると、また顔を横に向けて舌を深く絡めて接吻をする。
 ちゅ じゅるぅ ちゅちゅ
『ア、オ邪魔シマシタ…ッテ、テメェ〜〜勇者!殺スゥウウ』
ちっやっぱり気がついたか。
「んっ…ちょっとまってろよエロ王妃、野暮用だ」
「あぁん、そんな…」
俺はエスカリーナ王妃の細い腰に手をまわすとしっかり抱きしめ直す。
『グアアアァァ死ネエェ、メガフレア〜』
一人ノリつっこみをかましてくれた化け猿は、がばっと大口を開けると火炎を吐き出そうと大きく息を吸い込みだす。
そのバカみたいに開けた大口に…
 ガポッ
俺はちゃっかり貰っていた金貨の詰まった袋を無理やり押し込んでやる。
『フガ!フガガガガ』
喉の奥から吹きあがった火炎が行き場無く、化け猿の口の中で踊りまくっている。
「じゃぁな、宰相殿」
 ボフッ
まるで壊れたストーブのように鼻と耳から立ち上る黒煙。
『ンガンフ』
化け猿がぐるっと白目をむくとズドンと倒れふす。
「おお〜」
「やった〜」
「さすが勇者殿」
今までどこに逃げていたのか老王や大臣達が俺の側に寄ってきて歓声をあげていた。
「さすがじゃ勇者……し、しかし…その王妃とそのような関係とは……」
老王は小姓に肩を借りながら真っ青な顔でフラフラと歩いてくる。
ふむ、いつもヨボヨボでわからんが相当ショックを受けてるみたいだな。
すっごい恨めしそうにこっちを見ている。
「エスカリーナよ……おっ、お前はワシの妃でありながら、そっそのような不貞を……」
「王よ不貞とは!何をいっているのですか?これは勇者にとって正当な権利なのです!そう、こうなるのことは全て神々が定めた必然なのです、何故ならわたくしの達の王国は今も昔も勇者の物…先代が城を去ったとき、後継ぎ無くあなたが王に代理として立ったのではなくて?」
王妃は当然の事といわんばかりに老王にそう言い放つと、俺の側に毅然とした姿で立っている。
「…たっ確かにそうじゃ、じゃが…じゃが…」
老王はそれでも、美人で妖艶な王妃に未練タラタラの様子で、モゴモゴと言葉を続ける。
「お黙りなさい古き代理人よ!勇者が帰った今、王位は正当なる王者に返還されるべきなのです。そう全ては神の血を引くこの勇者に!それが世の道理…そう王国も、民も、そして…わたし自身も…全ては真なる王の所有物なのです」
王妃はピシリとそういい切ると、最後は俺に向かって「勿論、この淫乱おま○こも勇者の物ですわよ」っとそっと愛しげに囁くと、それとは真逆の目線で年老いた元夫を見下げている。
なんだか、すげぇ展開になってきたな。
「うううぅぅ、たっ確かにそうじゃ、王家は元々勇者の物じゃ、ワシも先代が去られしかたなく空位の代理と引き継いだだけ…………うむ、いまこそ勇者にすべてを返す時なのかもしれん、王位は真の王に返すとしよう」
なんか老王は悟っちゃったみたいにそう呟くと、ゆっくりとその白髪頭から王冠を脱ぐ。
いいのか?そんなんで?
「さぁ勇者殿、本日を持ちまして王の座をお返しいたします…この国も城も民も全て」
王は震える声でそう言いながら、ゆっくりと王冠を差し出す。
「しかし…」
俺はあまりの展開についていけず困り果てる。
たしかに、ゲームでは真の魔王である古代龍を倒し、最後は王様となってハッピーエンドを迎えるが…。
いいのかこれ?
「さあ勇者、王冠をとり魔王軍を打ち倒してくれ、さあ」
老王は魔王と戦うぐらいなら、王の位なんていらないと言うように、俺に責任を押し付けようと必死みたいだ。
その時、展開の速さに悩む俺の横で、王妃が甘い息と共に耳元で囁いてくる。
「もちろん、王家の財宝も土地も、そして王家の象徴たる王妃のわたしもお前の物だぞ…それに王家に連なる貴族の女全てもな……全てお前の物だ」
王妃は俺の顎先に白い指を這わして、まるで舐めるように頬に唇を寄せてくる。
「さぁわたくしを、そして王家に連なる全ての女をもっらっておくれ…勇者…いや新たなる王よ」


俺は……

もちろん、今日から俺が王様だ!
いんや、俺は旅の勇者、王になるのは魔王を殺してからだ!


(C)MooLich 2001