俺は聖女のもとで予言を聞くことにした……
「その時、天空に7つの星が煌き…」
聖女はうっとりとした顔をしながら次々と予言を話続ける。
勇者である俺に話せるのが嬉しくてたまらないのだろう。
だが……
全部知ってるよ。
っていうか、この予言の大半がゲームの世界観を盛り上げるための意味のないものばかりだ。
それを一生懸命暗記して誇らしげに話してるのをみると、なんとも言えない思いに駆られるが、まあ人生そんなもんだろう。
覚えたって使える機会がない知識なんて、意味のない予言と一緒さ。
などと俺がぼんやり思っていると、目の前のテーブルに心地のよい匂いのするティカップが差し出される。
「聖母様、それに殿も少し休憩されては?」
そこにはきっちりととした正装に着替えた神官戦士団長のクレア・シーンが直立不動で立っていた。
「あらクレアめずらしいわね、あなたが給仕をしてくれるなんて、いつもはフレイルしかもたないのに…ふふふ勇者様がいるからかしら?」
ニコニコ笑いながら聖母レイナはその白魚のような指先でカップを手にとる。
「いっいえ、その…部下たちが神殿の復旧で忙しいので私が…その…」
最後はもごもごと言いながら大柄な女神官戦士は頬をさっと染める。
「ふふふ、いいのですよ…わたくしたち大地母神の信徒にとって勇者さまは光のメシア、何にもかえて奉仕する存在です」
熱にうかれたように聖母は熱く語る。
う〜〜ん熱狂的信者って感じだな。
まぁ俺にとって都合のいい美女ばかりの教団だからいいんだけどな。
俺はニヤニヤ笑いながらハーブの香りのするお茶に口をつける。
「それでは殿失礼します」
まるで外人モデルのように大柄でスタイルのよいクレア隊長が俺の足元に膝まづくようにして最大級の礼をする。
「あぁおいしいお茶ありがとう」
まあこれくらいのリップサービスもいいだろう。
いずれは……
「もっもったいないお言葉ありがとうございます」
額が床につくほど、その短めに切りそろえた金髪をさげるとクレアは顔を真っ赤に染めながら退席する。
それからも美聖母が予言を話す間、次から次へと神官戦士の女の子たちがお茶のお代わりやらお菓子やらをもってきた。
どの子も美と豊穣の女神に仕えるために地方の神殿から選抜されここに遣わされてきただけある。
色とりどりな美貌と涎のでるばかりのボディが俺の目を十二分に楽しませてくれた。
しかも、全員が俺の前で全てを捧げんばかりの礼をつくしたお辞儀をして去っていく。
一度なんかはお礼代わりにその手をとったら、頬を染めて失神してしまったほどだ。
「勇者さま、これでわたくしの知る限りをお話しましたわ」
ちょうど神官戦士達の顔見せが終わった頃に、聖女の予言話も終わったようだ。
その頬はちょっとふくらんでいる。
俺が他の女神官たちに見とれたりしてからだろう。
「レイナありがとう、役に立ったよ」
本当は全然役にたっていないのだが、俺は勇者っぽく爽やかに笑いかける
「はっはい、わたくしお役にたてて幸せですわ、ほんとに、ほんとに」
その豊穣を地でいく巨乳の前で白い腕を組んで涙ぐむ。
ほんとに俺のことが大切なのだろう。
可愛い奴だ。
「…それで勇者様はこれからどのように?」
「え?」
なんかぼーとしてて話を聞いてなかった。
ふむ、これからか…。
「…わたくしとしてはできれば、その…勇者様には…」
どうするかな…
どうもゲームがいままでと違う展開をむかえているのは間違いない、
「…その勇者様がよろしければ…いつまでも…ここで」
邪龍と魔界の王女がこんな序盤にでたしなぁ
やはりここは、物語通りに戻ったほうがいいかな?
物語通りなら次は国王に会うはずだな…
「ここにいてください…わたくし達と」
「そうだな、王城に向かうかな」
『え?』
ここにいる?
類まれな美貌と奉仕精神旺盛な美聖母レイナ、それに俺に絶対の服従をちかうクレア隊長率いる女神官達。
それはそれでおいしい話だな。
くくくくく
「…そうですか、旅立たれてしまうのですね」
「あ、いや」
「わたくし…泣きませんわ…ええ、泣きませんとも…きっと魔王を倒してここに帰ってきてくださいますよね」
「いや…その」
うるうるっと潤む青い瞳は盲目的に俺を信じている。
かならず魔王に勝って帰ってくると。
「その時は…その時はわたくし…勇者様にすべてを…」
ぽっと頬をそめ聖母はもじもじと指をからませる。
「いや…その…俺は…」
「がんばってくださいませ、勇者様」
これは…後には引けないのね
とほほほ
こうして俺は、大地母神の大神殿を後ろ髪引っ張られまくりながら後にすることになった。
ボロボロと涙をながす聖母や下唇をかみ締めるクレア、それに俺についていくと騒ぐ女神官達をふりきって歩き出した。
ううぅうもったいねえぇえ
さて、
俺は……
まぁ話通り王城へ向かうとするか
くそぉこうなったら即効魔王殺してやる