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第47回 提物屋新宿御苑ギャラリーのご紹介
平成20年5月19日


 有名な提物屋(さげものや)さんの紹介です。東京都新宿御苑にある日本で唯一の根付・提物専門店です。正式な名称は、ヤバネ株式会社といいます。根付を集めていらっしゃる方であれば、一度はあのジャズが静かに流れるマンションの部屋を訪れたことがあるでしょう。現在は新宿区四谷4丁目にギャラリーを構えていますが、20年ほど前は品川区上大崎にアンティークギャラリーがありました。

 ギャラリーは、社長の吉田ゆか里氏と創業者のロベール・フレッシェル氏(Mr. Robert Fleischel)が運営しています。フレッシェル氏はフランス人で、大阪万国博覧会の時の仕事が縁で来日。その後根付に興味を持ち、以来、数十年間根付を取り扱い続けており、現在は国際根付ソサエティの日本支部代表として支部の定期的な会合を主宰されています。

このフレッシェル氏、現在では世界の中でもトップクラスの「根付の鑑識眼」を有していて、もし、根付に関して相談事や困り事があれば、気軽に何でも相談に乗ってくれることでしょう。また、根付や提げもののコレクションを本格的に構築しようと考えるならば、フレッシェル氏の次の助言を心にとどめておかれるのも良いでしょう。


”質の善し悪しを問わなければ、本物、偽物を含めて根付は内外にそれこそ山のようにある。しかし本物で質も良いとなると、そこここに転がってはない。ここでいう「本物で質が良い」とは、必ずしも値段が高いことを意味するものではない。時には少ない予算で面白いコレクションを構成することも可能だ。つまるところ、コレクションに必要なのは、本物の興味と作品に対する正しい評価を下せる目を持つことだろう。”
(「別冊太陽 印籠と根付」より)


 次に、社長の吉田氏は、根付や提げものの解題研究(表現された意匠やデザインの意味を解明し、作品に込められた題意を知ること)では世界の第一人者と言えます。世界の根付愛好家が参加している国際根付ソサエティが四半期ごとに発行する国際根付ジャーナルにおいて、根付の題材に関するQ&Aコーナーを担当していて、毎号数ページ分の原稿を書き下ろしています。また、古美術と工芸の専門誌「目の眼」では根付題材を説明するページを持っておられたので、ご存じの方も多いことでしょう。

 最近では、雑誌やテレビ番組、展示会の企画の面での協力を多方面でされていらっしゃるようです。近年、あちらこちらで根付が取り上げられ、多くの人達に根付のことが知られるようになってきましたが、その功績は大きいものがあります。もし、根付の意匠について分からないことがあれば、吉田氏に尋ねてみてください。きっと何かヒントが得られることでしょう。

 さて、そんな提物屋を今さらになって紹介する理由ですが、最近、ギャラリーを新装して、根付や提げもの関係のライブラリ(図書館)を本格的に開放し始めました。根付関連書籍は、根付の愛好家だけではなく、学術関係の研究者や雑誌や番組編集者等のマスコミ関係者にとっても情報を入手しにくく、アクセスするのに難渋していました。

”根付に関する情報や書籍、ネットワークについて、誰かがセンターとして集約する機能を担うようにしないと、根付研究は全然蓄積されないし、そのためには誰か学術サイドの若手研究家を育てるしかないかなぁ”

というような話を5年ほど前、吉田氏と話したことがありました。提物屋自身が本格的にその役割を担うように様変わりしてきたようです。

提物屋ギャラリ一では、もちろん実際に本物の根付や印籠、喫煙具、矢立などを多数見る事ができるので、その場で同時に関係書籍を閲覧可能なことは素晴らしいことで、いつまでも頑張っていただきたいものです。最近、海外において根付に関するオンライン・リサーチセンターが開設されたり、根付作品の膨大なデータベースが一般公開され始めましたが、この提物屋のライブラリーも存分に活用しつつ、日本からも良質な研究成果を発信し続けたいものです。

 最後に、提物屋を語る上で外せないのが”魅力的なカタログ”の数々です。毎回のように”テーマ”や作品を取り上げる”視点”をユニークに変えています。これは根付や提物の愛好家達との交流を根っからエンジョイしているフレッシェル氏と、奥深い解説や綿密な装丁に注意を払われている吉田氏の合作だからこそなし得る労作だと思います。ライブラリに置かれていますので、是非、ご覧下さい。


新宿の提物屋ギャラリー その1(許可を得て写真を転載)

新宿の提物屋ギャラリー その2
新宿の提物屋ギャラリー その3(根付関係のライブラリー)


 
過去に提物屋が発行した図録集


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