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<この項目の目次>
1.期分け(ピリオダイゼーション) 2.正しい投球フォーム

2.正しい投球フォーム
 (1)2つのキーワード、「肩甲骨面」と「ゼロポジション」
 (2)投球フォームのチェックポイント(オーバースローでのピッチングフォームを基準に)
 (3)投球相による解説
 (4)肩・肘の張り・痛みと投球フォームの関係


 (1)2つのキーワード、「肩甲骨面」と「ゼロポジション」
① 肩甲骨面(Scapula Plane)
 下図の通り、人間を頭の上から見てみると、肩甲骨は背中にまっすぐ水平に付いているわけではありません。多少の個人差はありますが、気をつけの姿勢で力を抜いて立った状態では、約30度前後斜め前に角度を持って付いています。この角度の延長線上で作った平面のことを「肩甲骨面(Scapula Plane)」といいます。
 さて、この状態(気を付けの姿勢=手の甲が外を向いている)から腕を下から上に上げるとき、どこで上げるのが一番上げやすいでしょうか?皆さん、ちょっとやってみて下さい。
 肩甲骨面よりも前で上げると楽に上がりますが、肩甲骨面よりも後ろに行けば行くほど、上げ辛くなるのがおわかり頂けたと思います。もし、肩甲骨面よりも後ろで無理やり上げようとすると、肩の後ろ側の筋肉がパンパンに張り、とても疲れます。もちろん、肩甲骨を内側に引き付ければ、肩甲骨面は後ろ側に広がります(下図)。肩甲骨面は常に一定ではなく、肩甲骨の位置により変わってくるのです。
 投球動作において、ボールがトップの位置に来るまでの過程(テイクバック)で、このことは非常に重要なチェックポイントになってきます。詳しくはあとで具体的に説明しますので、まずは肩甲骨面の存在を押さえておいて下さい。

肩甲骨面の前後で腕の上げやすさは変わる
 肩は、肩甲骨面を境にして、その前側では内旋していた方が、逆に後ろ側では外旋していた方が、それぞれ腕は上げやすくなります。これも試してみて下さい。手の小さい子供が、ボールを落とすまいとして、ボールを上に向けてテイクバックをとるのをたまに見かけますが、これは外旋位でのテイクバックとなるため、注意が必要です。

② ゼロポジション(Zero Position)
 次に重要なのが「ゼロポジション(Zero Position)」という肢位です。これは説明がちょっと専門的になりますが、難しいことは覚える必要ありません。ただ、できるだけ正確にこの肢位をチェックして下さい。
 肩甲骨には、下図(右の肩甲骨を後ろから見た図)のような肩甲棘(けんこうきょく)という骨の出っ張りがあります。まずはそれを確認して下さい。
 この骨の出っ張りが確認できたら、先ほど説明した肩甲骨面で、腕をゆっくり上げてみて下さい。皆さんは"グリコマーク"を知っていますか?グリコキャラメルの箱に描かれている、両手を上に上げたランナーの有名なマークです。イメージとしてはあの腕の角度の辺りがゼロポジションです。厳密に言うと、下図のように、肩甲骨面でかつ、肩甲棘と上腕の骨がまっすぐ一直線になる肢位を指します。この肢位では、肩の関節(肩甲骨と上腕骨のジョイント部分)が最も安定し、臨床医学的にも重要なポジションとされています。
 投球動作においては、ボールリリース時の理想的な肢位として、よく頭に入れておいて下さい。これはオーバースローに限らず、スリークォーター、サイドスロー、アンダースローもまったく同じです。肢位はそのままで、体の傾きが変わるということに注意して下さい。

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 (2)投球フォームのチェックポイント(オーバースローでのピッチングフォームを基準に)
 下のビデオ(1コマ1/30秒)を観ながら、以下のチェックポイントについて考えていきましょう。このビデオでは、一応すべてのチェックポイントを意識して投球動作をおこなっています。

IBM HotMedia®
このビデオは、映像上でマウスをクリックするたびに再生と停止を繰り返します.
停止しているときに、マウスの左ボタンを押しながら、画像を左から右(→)または下から上(↑)になぞると映像が先に進み、逆に右から左(←)または上から下(↓)になぞると映像が逆戻りします.
さらに、マウスの右ボタンを押しながら、画像を左から右(→)または下から上(↑)になぞると画像がズームインし、逆に右から左(←)または上から下(↓)になぞると画像がズームアウトします.

① テイクバック(肩甲骨面)
 ボールを持っている腕(投球腕)を、振りかぶった状態からトップの位置に持ってくるまでの注意点です。
a. 振りかぶった状態からボールをいったん下に降ろす際(ボールはグローブの捕球面を向く)、腕が下に伸びてボールが最も低い位置に来たとき、腕全体が脱力していること(前腕回内回外中間位・肩内旋外旋中間位).
このとき、ボールを持った手の位置は、後ろ脚太もものすぐ前にあること.ここから絶対に体の後方に持って行ってはいけない.
b. そこからトップの位置、つまり頭の近くにボールを持っていく際、上腕が肩甲骨面より後ろに行かないように注意しながら、投げる方向と反対の方向に腕を振ってテイクバック動作をおこなう(このとき肩は絶対にすくめず、脱力したまま→肩が内旋しない程度に前腕をわずかに回内させると、投球腕は肘から上げやすくなる).
投球腕が上がるに従って肩甲骨を内側に引き付ければ(肩甲骨内転)、無理なくトップの位置でしっかりと胸が張られた状態になる.
胸を張ることばかり意識すると、初めから肘を後ろに引いてしまい、上腕が肩甲骨面よりも後ろに入ってしまう("引いてから上げる"動作に).
そうすると、肩には無駄な力が入り、後ろ側の筋肉(三角筋後部,棘下筋,小円筋)に早く疲労をもたらすだけでなく、肩の前側(上腕二頭筋腱、特に長頭腱)にも悪影響を及ぼす.
c. テイクバック動作の際の肘は、下から斜め後ろに直線的軌道を描くこと(下の写真参照).
⇒"引いてから上げる"動作だと、肘の軌道は"L字"を描くことになる.
d. トップの位置では、ボールは投げる方向と逆を向いており(右ピッチャーは遊撃手の方向、左ピッチャーは二塁手の方向)、できるだけ手の甲(投げる方向を向いている)を頭に近づけること.


テイクバックは、トップの位置まで腕を肩甲骨面内(上)で動かせ!



×Bad!

テイクバックの軌道が肩甲骨面より後ろに逸脱.
投球腕が上げ辛いため、体が1塁側に倒れてしまう.
Good!

テイクバックの軌道が肩甲骨面内(上).
トップの位置まで投球腕が楽に上がるため、
しっかりと肩甲骨が引き付けられ、胸も張れている.


テイクバック動作の"無意識化"
 これは2005年11月に出版された『メジャーリーグのバッティング技術』という本に書かれている「ピッチングについて」というコラムから抜粋したものですが、テイクバック動作の注意点としてとても興味深いことが述べられているので紹介させて頂きます。
 バッティングでもピッチングでも部分的な動作を見る前に「全体として何をしているのか。どこからどのようにして力が生まれているのか」という事を理解するのが大切なのですが、ピッチングでは重心移動から回転運動を導き、体幹部で生み出した大きな力を利用して末端部を加速しているという事がまず大前提としてあるのです。
 ですから、腕を後ろに引いてから前に出すのではなく、重心移動によって残された腕が、重心移動の完了と共にその間で伸ばされたバネを戻すように前に出て来るのです。末端部の動作は常に体幹動作の結果として反射機能や物理的法則の元に動きますから、「動かす」のではなく「動かされる」のです。
 ピッチングに限らず、競技動作を考える上で、絶対に忘れてはならないことですよね。しかし、最初からこの感覚でボールを投げられる人は少ないというのも事実でしょう。動作には意識できるところと意識できないところがあり、後者、つまり動作の中で最も加速しているフェーズで修正を試みても、うまく行かないことが多いのです。それにはやはり、動作が加速する前の段階で理に叶っていない動きを正し、意識化と反復練習を繰り返しながら、最終的に無意識化することが重要です。そして、そのあとの動作が自然に合理的かつ効率的なものになるよう導くのです。
 上記は、テイクバック動作を修正する過程で、まず最初に何を意識すればよいのかということについて大きなヒントを与えてくれています。
「前脚を踏み出すことで体幹部が前方に移動し、投球腕が残される」。その残された感覚がテイクバックの初期動作となり、自ずと体幹の移動方向と逆の方向に腕が振られるのです。そうすると、投球腕は「上げる」のではなく、勝手に「上がる」のだということが徐々に体感できるはずです。そのためにも、腕は脱力しておいた方がよいということがわかると思います。ぜひやってみて下さい。

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② 肘の高さとリリースポイント(ゼロポジション)
 トップの位置からボールリリースまでの注意点です。
a. トップの位置において、肘はできるだけゼロポジションの高さまで上がっていること.少なくとも、両肩を結ぶラインまで上がっていることが望ましい.
b. トップの位置からその高さをキープしながら、リリースポイントまで急加速し、肘の内側から腕が前に出るようにすること(下記ワンポイントアドバイス「"肘から腕を前に出す"ことの真意」参照).
ここから、腕は肘を中心に鞭のようにしなり、体幹の回転と腕の加速と共に、肩甲骨は前方に移動する(肩甲骨外転).
肘が下がると肩の外旋可動域は減少し、肘の外反ストレス(肘内側への牽引ストレス)が増して、肘の内側を痛めやすくなる(関節ネズミ,内側側副靱帯損傷など).

ゼロポジションでの外旋可動域

肘を下げたときの外旋可動域
(前腕の回外なし)

肘を下げたときの外旋可動域
(前腕の回外あり)

【参考】肩の最大外旋可動域とボールスピードの関係
(『ATHRA』2001年6月号より)
c. リリースポイントでは、ボールを離す位置が視野の中(斜め上)に入ること.
d. ボールリリース時、肘は若干曲がっていること(肘頭と肘頭窩の衝突を防ぐ).


ボールリリースはゼロポジションで!






"肘から腕を前に出す"ことの真意
 トップの位置からボールをリリースする際、「肘から腕を前に出せ!」という指導がよく成されます。しかし、この指示だけを聞くと、選手(特に子供)の中には、せっかく上がった肘を下げ、ダーツ投げのように肘頭を前に出してボールを投げる人が出てきてしまいます。これでは、肘から先(前腕)だけの動きとなり、近い距離しか投げることができません。そこで、「肘から出す」という言葉の意味を、ここで改めて考えてみたいと思います。
 ちょっとやってみましょう。まず、投げる方向に対して横向きに立ち、頭の後ろで手を組んで下さい。このとき、肩や肩甲骨周りは脱力させます(
ハンモック肢位:肘の向く方向が肩甲骨面を指し、肩はだいたいゼロポジションとなる)。その状態から前足を踏み出し、体重移動と共に腰を回転させ、投げる方向と正対します。そして、投球腕側の肩甲骨を前方にスライド(外転)させると、肘がさらに前に出てきます(上腕を肩甲骨面上にキープ)。この動きが、"肘から腕を前に出す"ことの真意です。そうすると、肩は無駄な外旋をせずに済み、負担も減るというわけです。

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③ グローブ腕の使い方(体の開きのコントロール)
 ボールを持っている方ではなく、グローブをはめている方の腕(グローブ腕)の使い方です。これは体の開きをコントロールすると共に、しっかりゼロポジションでボールリリースするための補佐的役割をします。
a. 振りかぶった状態からいったん下に降ろす動作は、①-aおよび①-bと同じで、ボールを持った方の腕と同期して対称的に動くこと.
b. 下に降ろした状態から、踏み出した前脚と共に腕を前方に出すときは、肘を若干曲げ、腕を内側にひねり(前腕回内)、肘から上げていくこと(肩甲骨面).
⇒このとき、手首はまっすぐにし、グローブの捕球面が投げる方向を向く.
⇒あまり上に上げすぎると、反対側の肩が下がりすぎてしまうので注意する.
c. ボールがトップの位置に来たとき、グローブ腕の肩越しに相手(狙った場所)を見つめ、しっかりターゲッティングをおこなうこと.
d. そこからボールリリースに移行するとき、内側にひねった腕を、今度は外側にひねり(前腕回外)、脇を締めること.
ここでグローブ腕の脇が甘いと、体幹の回転と共に肘が後ろに引かれてしまう.
こうなると、余計に体幹の回転が加速してしまい、体が早く開くことになる.
ボールリリースの前に体が開いてしまうと、ゼロポジションでのリリースができなくなり、肩の前側に負担がかかる(半身で投げる意識を持とう).
イメージ1…腕相撲で台の端を持つ手(相手と組まない方)の使い方.
イメージ2…柔道で相手と組んだとき、前襟をつかんで引き寄せる動作.
このとき、腕は無理に折りたたむ必要はなく、むしろ体の前に残す.
グローブ腕(前腕)に上体がのっていくようなイメージ.


リリース時、グローブ腕は外側にひねって脇を締め、体の前に残せ!



正しい使い方を動画でチェック



IBM HotMedia®
アメリカの教科書『THE PITCHING EDGE』から
 このホームページでも御紹介している『THE PITCHING EDGE』には、"GLOVE POSITIONING"と題して、グローブ腕の使い方についてきちんと説明がなされています。以下にその原文を載せますので、ぜひ参考になさって下さい。
GLOVE POSITIONING
 After lining up elbows at foot strike, keep glove over the landing foot as much as possible as body rotates around head/c.g.
* axis to direct and deliver energy into the baseball toward the plate. Bring throwing arm elbow to a fixed glove-side elbow. Keep it firm and out front at whatever height comes natural.
 Pre-set forearm, wrist, hand, and grip angles on all pitches in the glove during skill work, at separation during competition.
 *c.g. = the center of gravity


現役メジャーリーガーによる実際のイメージ


肩―肩―肘のライン形成
 テイクバック(1)からボールリリース(6)までのフォームチェック法の一つに、スローイングを頭上から見た際の「肩―肩―肘のライン形成(S-S-E:Shoulder-Shoulder-Elbow)」があります。トップの位置(3)では、左右の肩甲骨が内側に最も引き付けられているため、両肩を結ぶラインよりもわずかに肘が後ろに入りますが、それ以外ではできるだけ両肩と肘が一直線上に並んでいることが望ましいのです。特に、投球肩の最大外旋ポイント(5)からリリースポイント(6)でこのライン形成が崩れ、両肩を結ぶラインよりも肘が後ろに入っている(投球腕の出が体幹の回転より遅れすぎる)場合は、投球肩への負担が大きくなります。さらに、ここで肘が下がっていると、肘の内側にも大きな負担をかけてしまいます。そのため、テイクバックが体の後ろに入りすぎないようにすることが何よりも大切であり、体幹の回転をコントロールする正しいグローブ腕の使い方もこのライン形成には絶対不可欠なのです。

上腕が常に肩甲骨面内にあれば、障害のリスクは減るのです!

「肩―肩―肘のライン形成」に関する医科学的検証については、『コーチング・クリニック(2003年12月号 P.6~9)』および『肩 ―その機能と臨床』(共に信原 克哉・著)を御参照下さい.

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④ フォロースルー(腕の振り方)
 ボールをリリースしてからの注意点です。
a. ボールリリースしたあとは、腕を反対側の体側に巻き付けるように最後までしっかり振って、勢いを逃がしてやること.
リリース後、腕は自然に内側にひねられる(前腕回内・肩内旋)が、鞭を打ったときのように腕の振りを急激に止めてしまうと、肘の後ろ側や上腕二頭筋への負担が増大する.
b. 肩甲骨が相手に見えるくらいまで腕を振り、肩甲骨と腕は常にペアで動かすことを意識する.
もし、肩甲骨が後ろに残った状態で腕だけが振られると、肩の関節が引き伸ばされて、インナーマッスルがダメージを受ける.これが繰り返されると、いわゆる"ルーズショルダー"になってしまう.
きちんと最後まで腕を振るためには、前脚にしっかりと体重がのっていなければならないことも忘れないように.そのため、適正なスタンス幅も重要なポイントとなる.


フォロースルーは腕と肩甲骨をペアで動かせ!



投球フォームは上半身だけがきちんとできていてもダメで、下半身でいかに大きな力を蓄え、それを効率よくボールに伝えるかが大切です。そのためには、後ろ脚の股関節でしっかりとタメを作り、そこで蓄えた力を前脚への体重移動と共にボールに伝えます。
例えば、二塁手あるいは遊撃手が、二遊間あるいは三遊間のゴロを正面で捕り、右脚で踏ん張ってからスローイングをおこなうイメージです。下半身の粘りとタメがなければ、上半身だけでボールを投げるようになり、肩・肘への負担が増大します。上記のチェックポイントと併せて、
股関節を意識した体重移動を心がけましょう。


前脚の使い方(前足着地からボールリリースまで)
 次項の"投球相による解説"でも説明していますが、前足接地の際には、単に足全体をポンと置かずに、足底の内側から接地し、わずかに地面をかきながら(右ピッチャーの場合は反時計回りに、左ピッチャーの場合は時計回りに)足全体を着地させてつま先を前に向けます。前足のつま先は投げる方向をまっすぐ向いているのが基本とされていますが、左の写真のようにほんの少し内側を向いていることが望ましいのです。
 そしてさらに、ボールを投げる瞬間は、力の入れ方として
前脚の膝を若干内側に入れるとよいでしょう(つま先と膝の向く方向は同じ)。ボールリリースまでに上体が開いてしまっていると、このような前脚の使い方はできません。要は、ボールリリース時、四肢(両腕と両脚)に内転方向の力が瞬間的に加わればよいのです。

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 (3)投球相による解説
  ① wind-up phase ⇒ ボールがグローブに入っている間
投球動作に入る直前、キャッチャーの構えをしっかり確認し、ボールの軌道をイメージする.
両腕を振りかぶる際、股・膝関節を伸展させて、重心の位置をできるだけ高くする.このとき、手に持ったボールはグローブの捕球面を向く.
前脚を上げると共に、重心軸は後ろ脚の股関節へ.このとき、後ろ脚を内旋させ、内転筋群を緊張させる.また、後ろ脚の股関節と膝は、若干のゆるみを持たせておき、故意に突っ張らせないようにすること.
前脚を上げ切ったとき、つま先を若干内側(セカンド方向)に向け、下腿を内旋させる.そうすることにより、骨盤の中心で力を蓄えることになる("第1のタメ").このとき、上体は後傾しすぎず、後ろ足のウナ(脛骨直下)に体重がのること.

  ② early cocking phase ⇒ 前足が着地するまで
ボールがグローブから離れ、テイクバック動作に入る際、左右の上肢が同じ弧を描きながら同期する.このとき、投球腕は脱力し(前腕回内回外中間位・肩内旋外旋中間位)、投げる方向と反対の方向に腕を振る.
テイクバックの際、投球側の肘の描く弧が肩甲骨面内にあること.肘が肩甲骨面より後ろに行けば行くほど、腕は上がりにくくなる.
グローブ腕は内側にひねり、上体は半身のままグローブ側の肩・上腕越しにキャッチャーを見る形となる(ターゲッティング).
ここで"第2のタメ"が完成し、重心軸が前脚の股関節に移動する.前足着地の際は単に足をポンと地面に置かず、足底の内側から接地し、右ピッチャーの場合は反時計回り、左ピッチャーの場合は時計回りに地面をかきながら全体を着地させる.さらに、足全体が着地したら、手前方向に力を入れるとよい.このとき、つま先と膝の向く方向は同じであること.

  ③ late cocking phase ⇒ 投球側の肩が最大外旋するまで
着地した前足に求心的な力を入れることにより、それが股関節に伝わり、骨盤が急激に回旋を始める.このとき、上体だけで腰を回さないこと.
ボールがトップの位置に来たとき、ボールは右ピッチャーの場合遊撃手の方向、左ピッチャーの場合二塁手の方向をそれぞれ向き、できるだけ頭に近づける.
前足の着地をきっかけに、内側にひねった状態で前方に伸びたグローブ腕を、今度は外側にひねり、脇を締めること.そうすることで、重心軸が完全に前脚側にシフトする.
投球側の腕はしっかりとゼロポジションをキープし、最もしなる状態を作る.

  ④ acceleration phase ⇒ ボールリリースまで
トップの位置で内側に引き付けられた投球側の肩甲骨が、ボールの加速と共に外側へ移動し、リリースまでゼロポジションを維持しながら、肩甲骨と上腕がペアで動く.
投球側の肘は若干屈曲させ(約25度)、肘頭が肘頭窩に衝突するのを防ぐ.
ボールリリースの瞬間、グローブ腕は外側にひねられ、前脚と共に内転方向に力が入ること(脇を締め、膝を内側に入れる).このとき、グローブ腕の外側へのひねりが甘いと、脇が開いて肘が後方に引かれてしまう.こうなると、上体がより速く回転してゼロポジションでのボールリリースが困難となる.いわゆる"体の開きが速い投げ方"となる.

  ⑤ early follow-through phase ⇒ 投球側の腕が地面と水平位になるまで
リリースの直前では肘に外反力が、リリースの直後では肘に内反力がそれぞれかかり、肩にも体重の約1.5倍の牽引力が加わる.そのため、フォロースルーをしっかりとらずに鞭を打つようにして腕の振りを止めてしまうと、投球腕への負担が増大する.
ボールリリース後、肩は自然に内旋し、前腕は回内する.このとき、肩の後ろ側の筋群と上腕二頭筋(長頭)が、強く伸張性の収縮を起こす.
引き続き前足のウナ荷重を維持し、膝が外側に割れないよう意識しておく.

  ⑥ late follow-through phase ⇒ 最後まで
投球腕を反対側の体側に巻き付けるようにしっかりと腕を振る.投球側の肩甲骨がキャッチャーに見えるまでしっかりとフォロースルーをおこなえば、肩甲骨が最大外転して固定されるため、体幹と上肢が交差することにより上腕骨大結節と烏口肩峰アーチ間の力学的ストレスを減じ、ローテータカフ(肩回旋筋腱板)を保護する.
このとき、前脚の筋力が十分でないと、上体をのせ切ることができず、前足が小趾側に荷重して膝が外側に割れ、からだ全体が外側に倒れてしまう.こうなると、ボールのベクトルが右投手の場合は1塁側、左投手の場合は3塁側にそれぞれずれて、シュート回転しやすくなる.
力のベクトルがきちんとキャッチャー方向に向いていれば、後ろ足はプレートを離れて前に出てくるはず.後ろ脚が前脚とクロスするような形になると、投球の効率が悪くなるばかりでなく、打球への対応にも悪影響を及ぼすことになる.


頸反射から見た投球時の顔の向き
 姿勢反射における頸反射は、以下の2つに分類されます。
 ●対称性頸反射
   【Symmetrical Tonic Neck Reflex】
 ●非対称性頸反射
   【Asymmetrical Tonic Neck Reflex】

 前者は、首を前屈すると上肢屈曲および下肢伸展がしやすくなることと、首を後屈すると上肢伸展および下肢屈曲がしやすくなることを意味しています。また、後者は、顔を向けた側の上肢・下肢は伸展しやすく、反対側の上肢・下肢は屈曲しやすいことを意味しています(⇒両者とも、それぞれそのような肢位にした方が、力も伝達されやすくなるということです)。右上の絵は、力強さの象徴としてしばしば目にする雷神図(俵屋宗達・作)ですが、この絵をよく見ると、上述の非対称性頸反射のことが如実に描かれているのがおわかり頂けるでしょう。
 これは投球動作においても同様のことが言え、グローブ腕を前方に差し出した(伸展)とき、投球腕は屈曲していた方がよいのです。しかし、トップポジションからボールリリース以降は、左右上肢の肢位は逆転し、グローブ腕は屈曲、投球腕は伸展となります。顔は始めからキャッチャーの方向を向いているため、投球腕がトップの位置に来るまでは、自然に上肢は雷神図のような形になるのですが、それ以降は顔の向きをどうすればよいでしょうか?体幹の回転や素速い投球腕の振りにつられて、顔をグローブ腕の方向(右投手の場合は1塁側、左投手の場合は3塁側)に向けてしまう投手をたまに見かけますが、これは頸反射に反する動きです。正しくは、できるだけ
顔を投球腕の方向に残すとよいでしょう(右下の写真参照)。もっと簡単に言えば、終始、顔はキャッチャーの方向に向けておけばよいのです。

俵屋宗達『風神雷神図屏風』の左半分.雷神図


現役メジャーリーガーによる実際のイメージ
(顔の向きに注目!)

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 (4)肩・肘の張り・痛みと投球フォームの関係
① 投球後に張りや痛みが出てもよい部位、いけない部位
 ●張りが出てもよい部位(痛みの場合は要チェック)⇒下図桃色の部分
   ④肩の後ろ側(三角筋後部・棘下筋・小円筋),
   ⑪肩甲骨の内側(大・小菱形筋)と⑬外側(前鋸筋・広背筋),
   ⑦肘の内側(内側上顆周辺),⑩前腕の小指側(尺側手根屈筋)
 ●張りや痛みが出てはいけない部位⇒下図赤色の部分
   ①肩の前側(上腕二頭筋腱),⑤上腕の前側・⑥外側(上腕二頭筋),
   ③胸(大胸筋・小胸筋),⑧肘の後ろ側(肘頭付近)と⑨外側(外側上顆周辺),
   ②肩の深部(肩峰下部・上腕二頭筋長頭起始部),⑫首の付け根から肩にかけて(僧帽筋)

② 張りや痛みの出ている部位と予想される投球フォーム
 張りや痛みの出ている部位から、自分の投球フォームが今どうなっているのか、イメージできるようにしましょう!
張りや痛みの出ている部位
[悪化したときに起こりうる症状]
予想される投球フォーム
肩の前側・深部,胸(肩に近い部位)
[上腕二頭筋腱炎,関節唇損傷,胸郭出口症候群など]
肘が下がった状態で体が開いている.
テイクバックが肩甲骨面より後ろで、肩の前側を支点とした、いわゆる"かつぎ投げ"をしている.
肘のしなりや肩の外旋がうまく使えていない.
肩の後ろ側
[四辺形間隙症候群,外旋筋群萎縮など]
肘が下がり、肩の外旋に負担がかかっている.
肘の内側
[内側上顆炎,関節ネズミ,内側側副靱帯損傷など]
肘が下がり、肩の外旋が制限されるため、肘の外反ストレス(肘内側への牽引ストレス)が増している.
上腕の前側,肘の後ろ側肩の深部
[上腕二頭筋肉離れ,関節ネズミ,ルーズショルダー,腕を上げたときの肩峰下でのクリック音など]
フォロースルーが中途半端で、鞭を打つような腕の止め方をしている.
肩甲骨と腕をペアで動かしていない.
前脚に体重がのっていない.
上腕の外側,肘の外側
[外側上顆炎,関節ネズミなど]
ボールリリース後、肩の内旋・前腕の回内(内側へのひねり)を強調しすぎている.
投球腕側の首の付け根から肩にかけて
[寝違えの慢性化,頸椎のズレ,片頭痛など]
⇒前脚の膝にも影響が出る可能性あり
 
[半月板損傷など]
肩をすくめてテイクバックしている.
テイクバックが肩甲骨面より後ろで肘がゼロポジションの高さまで上がらず、投球腕と反対側に体を倒すことで、見かけ上肘が上がっているように見える.
そのため、無意識のうちに投球腕側に首を傾ける動作が起こり、首から肩にかけて負担がかかる.
前脚の膝が外に割れている(toe-in/knee-out).


     このページの参考文献
      ●『スポーツ外傷・障害の理学療法』 臨床スポーツ医学編集委員会 (文光堂)
      ●『肩診療マニュアル』 橋本 淳,信原 克哉 (医歯薬出版)
      ●『肩 ―その機能と臨床』 信原 克哉 (医学書院)
      ●『スポーツ傷害の手術テクニック』 Frank W.Jobe (医道の日本社)
      ●『野球障害予防ガイドライン』
                   日本臨床スポーツ医学会,整形外科学術部会 (文光堂)

      ●『THE PITCHING EDGE』 Tom House (Human Kinetics)

      ●『メジャーリーグのバッティング技術』 塚口 洋佑 (JDC)


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