半クラッチ。マニュアルで免許を取ろうと志した者がおそらく最初にぶち当たる壁である。ちなみに私の所有している国語辞典には「半クラッチ」という項目は載っていなかった。ということはそれほど市民権を得た言葉ではないのだろう。
そうなってくると、車に全く興味の無かった人間をつかまえて半クラッチをしろというのはとうてい無茶な話なのだ。ちゃんとこの連載を読んでいて、記憶力の良い方なら「シュミレーターでやったんじゃないの?」と思われるかもしれない。しかし、ここで大切なことを思い出さなければならない。あれから既に一ヶ月が経過しているのである。そんなもん憶えているわけがない。
では、実際に「半クラッチ」とはどういうアクションなのであろうか。教本によると『「完全に動力が伝わっていない状態」*発進するときなどに使います』とある。つまり、この「半クラッチ」をマスターしないと極端な話出発さえも出来ないのである。右足をブレーキからアクセルへ。これもそんなに強く踏んではいけない。クラッチペダルからじっくりと足を離していく。これが動力につながると・・・「ブロロロー・・・」と、車はスムーズに発進することができるのである。走り出せばあとは加速していくわけだが、ローからセカンドにギアチェンジする際も再びクラッチの登場となる。
ローというやつは発車専用というレベルのギアであるので、どんなに踏みつけてもブーブー言うだけで全然速くない。そこから更にセカンドにチェンジする為には、一度動力から切り離さなければならない。以下同様に繰り返し。ロー、セコ、サード、トップと、徐々にスピードが出るようになる。更にハイ(オーバー)トップというやつもあるが、これは50km/h以上の高速走行以外では使わないので、教習所内で使うことはない。
「はい、クラッチ踏んでー。ギアをセカンドにいれるー」
左足をぐっと踏み込む。そして左手でレバーを・・・レバー・・あれ? どこだ??
西尾環那、レバーを探しているうちに助手席の教官の太股を触る(冗談みたいだが本当の話)。
気を取り直して加速チェンジ。ロー、セコ、イカンガー・・・じゃねぇや。セコ、サード。本当なら直線道路でトップまで入れなければならないのだが、なかなかタイミングがわからずに、サードまでが限界である。
だんだんと加速チェンジに慣れてくると、今度は減速チェンジという壁にぶち当たる。たとえば右左折の際、スピードを落とさなければならないのは誰でもわかると思うのだが、その際ギアがたとえばトップにはいっていたりすると、まだ速度が上がっていないのにギアをトップに持っていったのと同じ状態になるのである。するとどうなるか? 毎度おなじみのエンジンストップ。俗に言うエンスト。ガコッガコッとまずは車全体がノッキングを起こす。ちなみにこの様子は外からでも「あ、ノッキングしてら」とわかるぐらいスイングをする。そして最後に止まってしまうのである。至極格好悪い。ただし、止まっている車が上下にスイングしているのはエンストではない。決して車のライトをアップにして照らし出すようなまねをしてはいけない。なぜならお楽しみの最中だからだ。
このエンストというのはオートマではまず起きない現象である。オートマが楽だというのはつまりそーゆーことなのである。後輩でも「エンスト恐怖症」にかかっているのがいる。後輩?
ということで次回「後輩がいるやんけ」の巻。お楽しみに。
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