NARA ACCOUNTING JOURNAL
編集 奈良 洋
今月のテーマ  「会社は誰のもの?」

★★ 東京スタイル事件を追う。 ★★
アパレルメーカーの東京スタイルという会社をご存知だろうか。
去る5月28日、この会社の株主と経営者との間で、熾烈な戦いが繰り広げられた。

■会社 VS 株主

東京スタイルは、不況著しいアパレル業界の中で堅実に成長を維持している優良企業だ。
無借金経営で、この2月決算でも着実に利益を計上し、
預貯金と有価証券を合わせた残高は、1100億円に達する。
(年間売上高の約2倍!)
この東京スタイルに目をつけたのが、
投資会社M&Aコンサルティング代表 村上世彰氏。
外資をバックに、ここ1年半で全体の12%の株式を取得した。
その大株主が1株12円50銭の配当を500円に増配せよ などと会社に提案した。
これまで、安定経営を突き進んできた会社と、
株主の利益を主張する村上氏が真っ向から反発した格好だ。

■村上氏のこと
M&Aコンサルティング代表の村上氏は、東大卒業後、通産省を経て、現在にいたる。
小学校3年生のとき、貿易会社を経営する父親から突然100万円を渡され、
「もう小遣いは渡さない」
と宣言されたという。
皆さんだったらどうするでしょうか?
村上少年はこれに衝撃を受けたが、必死に考え、株式投資を始める。 
大学卒業のころにはそのお金で自宅を購入するまでになっていた。

■会社の主張
東京スタイルの高野社長は高校を卒業後、
たたき上げで現在の地位に上りつめワンマンながらも
着実に実績を上げ長い間社長に君臨してきた。
「規律、あいさつ、礼儀など厳しい反面、
社員のクビをきったりしない『社員は家族』といった考え方を持っている」
(元社員の言葉  週刊朝日より)
高野社長の手腕で無借金経営を続け、内部留保を厚くし、安定経営を維持してきた。
突然現れた株主になぜそこまで経営に口出しされなければならないのか。

■会社と株主
会社が、今後2年間で400〜500億のファッションビルを取得する計画を
打ち上げたのに対し、村上氏は、本業でもない不動産事業に投資して、
株主の利益を損ねてしまう、と主張した。
本来株主から受託した資金を運用して株主に十分な配当や株主価値の向上
を図るべきなのに、日本の多くの上場企業は金融機関との相互持ち合いで、
それ以外の株主はおてもりの配当に甘んじている。 
これまで、株主である金融機関の多くは、
資金を貸し付けて利息収入を確保できれば、高配当は2の次でよかった。
(4月号のNAJ参照)

企業が出資してくれた投資家に報いる為、
株主への責任を果たすという土壌が十分でなかったこと
株主価値の創造や高収益への意識が低かった(含み資産経営)ことが、
現在の日本企業低迷の一因だと村上氏は考えるのだろう。

■株主総会の結果  
さて、株主総会開催まで、両者は株主からの委任状の取り合い合戦を繰り広げ、
結局は、数で優位の会社側が村上氏の主張をほとんど退け、体面を保った。
大株主であるUFJ銀行などは沈黙を守り、村上氏に加担することはなかった。
もし、株主の多くが村上氏の主張に賛同して議論を戦わせたら、
他の上場企業の株主総会にも波及する可能性があったかもしれない。

経営者の立場、株主としての立場、それぞれの主張があり、それを戦わせていくことが
大企業を強くする。 

■歴史が変わるプロセス

?     吉田松蔭のような斬新な思想家が生まれ
?     西郷隆盛・坂本竜馬のような革命家が戦いを挑み
?     伊藤博文のような実務化が改革を成し遂げる 

(明治維新の場合)と考えるなら、  
会社のあり方が変わるにはなお時間を要する。
(参考資料 週刊朝日4月号、日経新聞他)

お読み頂き、ありがとうございます。

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