〜兄のささやかな仕返し・千影編〜

作・梨

− Sister Princess Side Story −



今回のターゲットは、日ごろから俺を呪いまくってる妹ナンバー9、千影だ。
え?「なんでいきなり一番手ごわい千影なのか」って?
それにはちゃんと理由がある。

妹たちは、なんつーか、個性派ぞろいだ。
なかでもすごいのが千影と四葉(俺私見)だろう。
で、どっちが手ごわいかと言ったら千影ではないだろうか。
と、いうことはだ。
「千影への仕返しが成功する」=「他の妹は結構余裕」という式が成り立つだろ?
つまり、ラスボス(千影)を倒せればゲームクリア(残りの妹への仕返し)は確実ってわけだ。
だから最初は千影。納得してくれたかい?
まあ、納得できなくても話は進むんだけどね。


さて、今回の仕返しの内容を説明しよう。
いきなり変なことを聞くが、あなたは「ゲ○」になったことはあるだろうか。
おっと、伏字を使ったら分からないか。
腹が「ぎゅるるる」と鳴ったかと思えば、急に痛みだし、猛烈にトイレに行きたくなるアレだ。
あれ、つらいよね〜。車で高速走ってるときにアレが来たらたまらない。
地獄っていうのはきっとああいうのを言うのだろう。

おっと、話がそれたな。元に戻そう。
さて、仕返しとゲ○と何の関係があるか、疑問だろ?
気になるあなたにお教えしよう!
なんと、今回は!あの!クールでミステリアスなあの千影を!


ゲ○にしてしまおうという作戦なのだああアアアぁぁ!


神も、全国の兄くんたちさえも恐れないこの大作戦、今回俺は実行に移す。
根っからの玄人だぜ、俺ぁ。
ただ気をつけるべきは、本人にこのことがばれないようにすることだ。
もしばれたら「死んだほうがマシなんじゃあないか?」っていうぐらい強烈な報復が待ってるだろうからな。

次に、それをどうやるか説明しよう。
え?「おまえ、しゃべりすぎだ。早く千影を出せ」って?
まあまあ、これが終わったら出てくるから、もう少ししゃべらせてくれ。

やはり日ごろ呪われてるわけだから、俺も呪いで返さなきゃ不公平ってもんよ。
え?「おまえ、呪いできるの?」だって?
ふふん、その辺は任せてくれ。地元の図書館でそれ系の本をすべて立ち読みしたから大丈夫だ。

ここにりんごがある。だが、ただのりんごじゃない、「呪いのりんご」だ。
とあるルートで仕入れた幻のアイテムだ。このりんごに一つの行動を強く念じかければ、これを食べたものはたちまちその行動をとってしまうという。
つまり、このりんごに「ゲ○になれ〜!」と念じれば、これを食べたものはゲ○になってしまうのだ。
今、このりんごは青い。念をかければ赤くなるらしい。早速やってみるか。
はああぁぁぁ…!


ゲ○になれ〜 ゲ○になれ〜 ゲ○になれ〜 ゲ○になれ〜!!


おお、赤くなったぞ!成功だ!どれ、試しに一かじり…パクっ。


 ぎゅるるるるるる…


ぐおおああ!なんて効き目だ!早くトイレに行かなくては!


だだだだ…(←走る音)バタン!(←トイレに入る音)
ぎゅるるるる(←……)ジャアアア…(←流す音)


…ふふふ、素晴らしい。あとはこのりんごを使ってアップルケーキを作るのみだ!



数時間後…



くくく、出来た。プロ顔負けのおいしいアップルケーキが!修行したかいがあったぜ。
そろそろ千影が帰ってくるころだ。準備しなくては…

 (がちゃり)

「……ただいま…」
「おう、お帰り」
「!…兄くん…帰ってきてたのかい……?」
「え?ああ、うん」

言い忘れてたが、俺がこの家に帰ってきたのは1ヶ月ぶりなのだ。
今日は俺は学校休み、妹たちは学校があるので、なんなく潜入成功というわけだ。
今日は千影が一番に帰ってくるのも調査済みだ。

「ふふ…今夜は眠れないな……」
「え?なんで?」
「…分かってるくせに…ふふ」
「…ああ、そういうことね」

要は「今日も生贄にしてやるゼ、覚悟しナ!」と言いたいのだろう。
だが、今日の夜はそれどころじゃなくなるんだぜ、ふぉっふぉっ。

「まあいいや、ケーキ買ってきたから一緒に食おうぜ」
「…着替えてくるから……待ってて…」

そう言って千影は2階に上がっていった。
…さっき俺はケーキを買ってきた、と言ったが、ちゃんとそう見えるように演出してある。作った、と言ったら怪しまれるからな。
それに他の妹たちが帰ってきても言いように、一人一個ずつ、13個のケーキも用意済みだ。
それぞれ種類は違うが、千影はりんごが好きだから(一期第4回誌上ゲーム参照)必ずアップルケーキを選ぶはず!完璧だぜ、俺って奴ぁ。

「「ただいま〜」」

お、誰か帰ってきたぞ。声からして、衛と花穂だな。

「おう、お帰り」
「あ、あにぃ!帰ってきてたの!?」
「お兄ちゃま!?」

…なんで皆俺を見るだけでこんなに驚くんだろう…まあいいか。

「ケーキあるから、一緒に食おうぜ」
「あ、待ってて、着替えてくるから」
「…ケーキかあ…」
「ん?どうした花穂、ケーキ嫌いだったっけ?」
「好きだけど、いまダイエット中なんだぁ…」

しまった…このままでは花穂は「おあずけ」状態ではないか…
ちょっとかわいそうな事をしたな。

「お、お兄ちゃまがダイエット付き合ってくれたら食べれるんだけど…」
「付き合うってジョギングかなんか?」
「う、うん」
「ああ、そんくらいなら構わんぜ」
「ホント!?」
「うん。」

しかし珍しいな、花穂がこんなこと言い出すなんて。

「待ちなさい、花穂!抜け駆けは許さないわよ!」
「お、お姉ちゃま!」

咲耶…いつの間に…

「そうやって夜な夜なお兄様を連れ出して、あの手この手で誘惑するんでしょ!
 そうはいかないわ!」
「そ、そんなことしないもん!お姉ちゃまじゃあるまいし」
「なんですってぇ!」
「こらこら、喧嘩はやめて早く着替えてこいよ」
「「はーい」」

俺が言うとさっきの雰囲気はどこへやら、二人してにこやかに自分の部屋へ戻っていった。
なんなんだ、一体。



そうこうしているうちに全員帰ってきた。いやいや、13個用意しておいて正解だぜ。
結局皆で食べることになったが、作戦通り千影はアップルケーキを選んでいた。

「…じゃあ、食うぞ〜」
「「「「「「「「「「「「いただきま〜す」」」」」」」」」」」」

う〜ん、大音量。
いや、それより千影を観察だ。どんな反応をするか、楽しみだ。
おっ、食うぞ!よし、そうだ、そのまま一気にいけ!いっちまえ!

「…………?」

なに!?止まった!なぜ!?ま、まさか気づかれた…?いや、そんなはずは…

「あ、兄くん…」
「ななななんだい、千影?」
「…そう見つめられると……食べづらいのだが…」
「お、おお。悪い悪い。」

あっぶっね〜!バレたわけじゃなかったのか。もしバレたらとんでもないことになるからな。
っつーか千影以外の妹よ、「ぎろり」と俺をにらむのはなぜだ?

「も、もう見ないから、安心して食べてくれたまへ」

しまった…動揺のあまり変な言葉を使ってしまった。怪しかったかな?

「………」

千影は怪訝な顔をしているが、ケーキ事態を怪しいとは思ってないらしく、その口にスプーンを近づけていく。よし!もらった!

(パク)

よおおおおおおし!勝った!
ここで、このシリーズのために考えた決め台詞!


俺の苦しみは神の嘆き!その身をもって罪を償うがよし!


ふ…キマった…。
さあ、血相を変えてトイレへ駆け込むのだ。
……………………………あれ?何も起きないぞ?なんで?

「千影…なんともないの?」
「…何がだい…?」
「いや、体の具合とか」
「?…いたって…良好だが……」

なぜ!?どうして効かないんだ!?おかしいぞ、さっきはあんなに…


 ぎゅるるるるるる…


はおおおお!?な、なぜ俺に!どうして俺にゲ○の呪いが!?
ぐううぅ、たまらん!


だだだだ…  バタン!  ぎゅるるるる…


「兄上様、突然どうなさったのでしょうか?」
「変なものでも食べたんでしょ、アニキのことだから」


「そういえば兄チャマ、千影姉チャマがケーキ食べるとこずっと見てたみたいデシタけど、なんだったんデスかね?」
「…さあ……?」
「はっ!きっとそのケーキに何かあるんデス!姉チャマ、そのケーキをチェキです!」
「…ケーキ?………これは!…そうか…そういうことか……ふふ……四葉くん…君の目……あながち節穴でもないようだ……」
「ホームズの再来と言ってくだサイ!」


「ふふふ…兄くんも……馬鹿な真似をしたものだ……」




「…現在はどういう状況なのでしょうか?」
「姫にもさっぱり…」
「ヒナもわかんな〜い」
「わけがわかりません……くすん」


その日の深夜 兄の部屋…


おのれ〜、なぜ呪いが効かなかったんだ…!納得がいかないぞ!


 (コンコン)


ん?誰だこんな夜中に。


 (がちゃ)


「はい、誰?…!ち、千影…ど、どうした…?こんな夜中に」

ドアを開けたら、冷たーい笑顔の千影が立っていた。どのくらい冷たいかっていうと、「夜中急にラーメンが食べたくなって夜の街をラーメン屋を求めて何十軒も回ったが、どこの店も閉まっていて仕方なくコンビニでインスタントラーメンを買って作って食べたが、そのときに吹きすさぶ心の風」ぐらい冷たい。…わかりにくいか。

「…昼間の件で…話がある……」

!やばい…ばれたか!?…落ち着け、平静を装ってごまかすんだ…

「昼間…私が食べたケーキの中に……呪いのりんごが使われていた……」
「へえ、なんだその呪いのりんごってのは?」
「説明は……必要ないと思うがね…」

ひいいいイイぃぃ!なんかばれてるっぽいいいぃ!

「私は日頃…悪魔等を召喚するから……万一のために…『呪い返し』の術を…自身にかけている…兄くんの呪いがはね返ったのは…そのせいだ…」

なにいいいい。そんな理由があったとは…くっ、呪いで千影に仕返ししようとした俺が浅はかだったか……

「……そして君は……次に『なら、下剤入りケーキで再挑戦だ!』と…思考する…」

なら、下剤入りケーキで再挑戦だ!……はっ!!?

「ふふ…私にこんなことして……無事ですむとは…思うまいね……?」

も、もうだめだ!誠意をもって謝るしかない!

「す、すみません!許してください!ほんの出来心なんです!」
「今夜は……いい夜になるな…」
「問答無用ですかあああアアアぁぁぁぁぁぁーーー〜〜〜〜!!??」



…こうして兄の計画は失敗に終わり、このあと千影の部屋で「死んだほうがマシなんじゃあないか?」っていうぐらいの呪術実験をされたと言う…







「ぐふっ…さ、最初にラスボスに手を出したのが間違いだった… だがあきらめんぞ!次は咲耶だ!首洗って待ってろ! …えええ〜!?千影、まだやるのおおおぉ〜!?や、やめろ!それだけはやめてくれ! …ぎにいいやあああぁぁ!!」




…続く…らしい






あとがき

梨です。いや〜文書くのって難しいですね〜。
全然思ったとおりに行きませんでした。
他のSS作家さんを尊敬してしまいます。
まあこれがはじめてのSSなんで、今後成長すればいいかな〜と思ってます。
それではここまで読んでくださった人、ありがとうございました!


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