東京拘置所視察 2005/03/04 | |
矯正プログラムの現場視察をしました |
今国会で、「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案(仮称)」いわゆる「監獄法改正案」が法務省より提出される予定です。この問題は、近年の刑務所の過剰収容状態問題や塀の中での人権問題など、刑務所などの行刑施設のあり方について近代的に見直すことを目的とした法律案です。
近代化というのも妙な感じがするかもしれませんが、実はこの「監獄法」は1908年明治41年に施行されて以来、ほとんど手を着けれこられなかったいわゆるカタカナ法で、現在の日本社会にそのまま適用するにはなんとも不都合が多く、まさしく近代化が必要な法律でした。 また、今年に入って発生した大変痛ましい事件の中に、性犯罪を犯してしまった受刑者が、仮出所中に性犯罪を繰り返してしまった事件があり、性犯罪者の再犯状況について注目され、その流れの中で行刑施設(刑務所等)における再犯防止のための矯正教育がどの様に行われているかが注目を集めました。 そこで、現場で実際のどの様な矯正教育が行われているかを調べるために、本日、民主党の同僚議員と共に東京小菅にある東京拘置所を視察してきました。 結論から言えば、残念ながら試行錯誤であることを差し引いても大変お寒いものでした。東京拘置所での矯正プログラムは「異性問題指導」と言われ、指導職員による個別指導形式で面接と課題作文の作成を行います。課題作文とは、自身の体験を作文にすることで、自分の半生を振り返って自己の人生を客観的に洞察して異性との関係を振り返ったり、受刑の原因となった事件を思い出しながら自己の問題性を認識したり被害者への共感力を発達させることを目的とするものです。1回50分、週1回、全8回で全体で約2ヶ月を指導期間としていますが、残念ながら現時点では肝心の効果はどうも不明のようです。 具体的な問題点としては、まず専門家がいないという事。この東京拘置所で実際に性犯罪者に対する矯正教育を行っている教育統括矯正処遇官という方が、自らそう仰っていました。海外で実績を上げているシステムを参考にしたり、国内で他の行刑施設において行われている指導法を持ち寄って検討しあう機会などが極端に少ないらしく、率直に言って、あのシステムで再犯率低下に効果があるか疑わしいと感じました。 しかし、「現場の刑務官がいい加減でケシカラン」とばかり言っていられない根本的問題が背景にあり、それを変えなければ、恐らくこの現状は改善されません。それは日本の刑法の問題で、刑務所に入っても「懲役・禁固」しか刑の種類がない点です。つまり、日本の刑務所は、自由を制限して朝から晩まで強制的に働かせることだけが本来的な役割になってしまっており、法を犯してしまった人を如何にして反省させ、罪を償わせ、再度法を犯さないように矯正した後に社会復帰させるかという、本来あるべき使命が果たせない状況になっているのです。 「刑務所に数年入って出てきても、本人が心を入れ替えるかどうかは本人の努力しだい」という現状から、国が責任を持って改心させて再犯率を低下させるように、根本的な政策転換が必要です。同時に、私たち国民の出所者に対する意識を変えることも不可欠のようです。なぜか今、マスコミでは性犯罪者の再犯率だけが注目を集めていますが、性犯罪に限ることなく、広く犯罪の防止と再犯の防止を真剣に考え直す必要があります。 今国会でもできる限り改善を目指して議論してまいりますので、法務委員会での議論にご注目ください。 |