イラク戦争に対し日本政府が英米支持表明 2003/03/21 |
小泉総理の外交感覚に大いに落胆 |
日本時間で昨日午前11時30分過ぎ、アメリカとイギリスの軍隊がイラクに対して攻撃を始めました。唯一の超大国であるアメリカが国際法上説明のつかない戦争を始めたことに対し、私は強く抗議します。また同時に、私自身、一政治家としてこの戦争を回避させられなかった事が、無念でなりません。始まってしまった戦争を、直接の当事国ではない国の政治家がコントロールする事は極めて困難ですから、今となっては、一刻も早く戦争が終結し戦争被害が最小限に止まることを願ってやみません。
ブッシュ大統領の政治判断は、今後の国際社会の平和と安定に大きな影を落とすことになると思いますが、それとは別に、今回の日本政府の対応も今後の日本外交のあり方を議論する上で、大きな汚点になる可能性があると思います。 昨日の午後、総理は記者会見を開きアメリカ支持を表明し、その後衆議院本会議においても政府の方針を説明しました。その演説を私も議場で聞いておりましたが、総理の演説で今回ほど腹の立ったことはありません。政治家としての真価が問われるこの場面で、ああも簡単に嘘を付くことには本当に腹が立ちますし、こんな人間が日本のリーダーであることに、心底恥ずかしさを覚えます。数日前の予算委員会での答弁と全く違うことを言ったり、やってないことをやったと言うなど、全く支離滅裂です。 開戦前の政府の問題点 日本政府の対応として問題なのは、まず、開戦前にやるべき事をやっていないという点です。イラクを説得したと言うのならば、フセイン大統領との会談でも申し込んだのか。自らイラク入りをして時間をかけて説得することも出来たはずです。国連による査察が進行中であった時は、「査察に全面協力をするべき」との声明を出すだけでも良かったかも知れませんが、アメリカが国連の査察をうち切らせようと動き始めた以降は、日本は直接イラクに働きかけるべきでしたし、その時間はありました。 いくらブッシュ大統領でも、日本の総理大臣がイラク滞在中に戦争は仕掛けなかったはずです。私は「人間の盾」という手法は決して得策とは思いません。総理が「盾」としてイラクに入るべきなどとは、もちろん微塵も思いません。そうではなくて、開戦数日前に政府が言ったように、「僅かだが平和的解決の道はあり、その決断ができるのはイラクだけである」と考えるならば、座して展開を見守るのではなく、直接イラクに働きかけることが出来たはずであり、それはアメリカを支持すればこそ意味のある説得になり得たのではないでしょうか。 開戦後の政府の問題点 そして開戦後の政府の姿勢も問題だと考えます。「日本の安全は米国次第なのだから付いていくのは当然だ」というのは、自ら日本の主権を放棄する暴言です。「もっと時間をかけて国際協調の下に平和的解決を望んだが、日本の安全保障体制の現状から判断して米国を支持せざるを得ない」というのならまだ理解できますが、米国が苦渋の選択をしたので日本は黙って付いていくと言うのでは、もはや独立国かどうか怪しいのではないでしょうか。 戦後50年の日米関係から考えれば黙って支持するしかないというのなら、それこそ自民党長期政権が犯した最大の失政ではないでしょうか。開き直って言う話しではありません。日米関係を対等な関係にすることは出来ないと開き直るような政府は、日本の将来を考えて、即刻退陣すべきです。 政治家としての役割 しかし、先日の本会議でも述べたとおり、私自身、政治家として政府を批判し、べき論を主張さえしていればよいというものでないと考えます。他の問題であれば、一般的には政策の責任は政府にあり、だめならば政権交代するというのが筋であり、政府の失政の責任を野党にまで負わせようとするマスコミの風潮は筋違いです。しかしこと戦争に関しては、もし自分が止めさせられるかも知れないと考えられるなら、いかなる立場の人であってもその努力を惜しんではならないと思うのです。 そして政治家は、一市民よりもはるかにそれが可能であるはずであり、その努力をしなければならないと考えます。私は今回、戦争に拠らず平和的にイラクの大量破壊兵器を廃棄させるべきと主張する議員を集め、クエートで会議が出来ないかと考えました。フセイン大統領を擁護する気など更々ありませんが、もしアメリカなどがイラクを攻撃すればイラクの反撃が及ぶと思われる地域まで行って、議員が議論しようというアイデアです。日本だけでなくフランスやロシア、更には米英の議員も含めて、アメリカに対して抑止力を働かせながらイラクを説得する。これはいけるかも知れないと考えたのです。 時間がなかったのと、「ブッシュはそれでも攻撃を躊躇しない」という意見もあり、結局は実行できませんでした。ブッシュ大統領が48時間の期限を宣言した後も色々検討しましたが、残念ながら時間切れとなってしまいました。始まった戦争を止めさせるのは、戦争を始めさせないことよりはるかに困難です。あとは現場の戦況とブッシュ大統領の決断次第になってしまいました。 政治家は開戦を決断しても、戦場には行きません。戦場に行くのは兵士であり、戦災に遭うのは市民です。湾岸戦争のような突発的に始まる戦争ではなかった今回のイラク戦争を止められず、ただ批判することしかできなかったことに、私自身忸怩たらざるを得ません。まずはイラク戦争が早期に終結することを望むと共に、朝鮮半島を始めとする他の地域で、今回と同じような事を起こさせないよう、政治家としての責任を果たして参ります。 →(参考)小泉総理の予算委員会で民主党前原議員とのやりとり2月6日、2月7日 →小泉総理の本会議での説明はコチラ →民主党の質問と総理の答弁の様子はコチラ |