塩の塩化ナトリウム含有率がんゆうりつの推移



1.はじめに
 日本の塩専売制度は、明治38年(1905)6月1日にはじまり、平成9年(1997)3月31日に終了し、実に91年10か月にもわたり、日本の塩業界に貢献してきた。
 この塩専売時代にいろいろな塩商品が需要と供給のなかで生産され売られた結果、平成8年度末現在の塩商品に至り、結果として良質な塩商品が時代とともに生まれてきた。
 次に塩の主要な品質の一つである塩化ナトリウム含有率を通して、国内で生産された専売塩がどのような推移をたどったか、みてみよう。


2.明治38年度(1905)〜昭和25年度(1950)
 明治38年度(1905)〜昭和25年度(1950)の収納塩(専売塩)の塩化ナトリウム含有率の推移は、表1のとおりである。

                     
表1 専売塩(収納塩)の塩化ナトリウム含有率の推移          (単位:%)
年 度 塩の塩化ナトリウム含有率
90%以上 85〜90% 80〜85% 75〜80% 70〜85% 70%未満
明治38年度1905 0.6 4.5 15.1 21.4 55.5 2.9 100.0
大正元年度1912 0.1 3.1 25.4 8.0 63.3 0.1 100.0
大正5年度1916 0.1 4.7 37.1 7.6 50.4 0.1 100.0
大正10年度1921 0.1 3.7 46.4 7.9 41.8 0.1 100.0
大正11年度1922 0.3 4.8 72.8 6.8 15.4 100.0
大正12年度1923 0.1 7.5 70.2 2.8 19.4 100.0
大正13年度1924 0.1 5.7 83.0 1.5 9.7 100.0
大正14年度1925 5.9 89.9 0.7 3.5 100.0
昭和元年度1926 0.2 12.3 86.8 0.5 0.2 100.0
昭和2年度1927 2.0 27.5 70.2 0.2 0.1 100.0
昭和3年度1928 3.1 38.8 57.8 0.2 0.1 100.0
昭和4年度1929 5.5 50.5 43.9 0.1 100.0
昭和5年度1930 8.0 56.0 35.9 0.1 100.0
昭和6年度1931 10.8 56.6 32.6 100.0
昭和7年度1932 8.7 58.1 33.1 0.1 100.0
昭和8年度1933 9.2 58.2 32.5 0.1 100.0
昭和9年度1934 8.7 59.4 31.8 0.1 100.0
昭和10年度1935 11.4 60.8 27.7 0.1 100.0
昭和11年度1936 16.7 63.2 20.0 0.1 100.0
昭和12年度1937 27.3 60.3 12.2 0.1 0.1 100.0
昭和13年度1938 20.1 69.3 10.4 0.1 0.1 100.0
昭和14年度1939 14.9 67.8 17.3 100.0
昭和15年度1940 24.3 75.6 0.1 該当なし 100.0
昭和16年度1941 32.0 68.0 100.0
昭和17年度1942 31.3 68.7 100.0
昭和20年度1945 40.9 27.2 31.9 該当なし 100.0
昭和21年度1946 39.8 29.1 31.9 100.0
昭和22年度1947 57.7 20.3 22.0 100.0
昭和23年度1948 51.4 24.7 23.9 100.0
昭和24年度1949 57.7 27.5 14.8 100.0
昭和25年度1950 56.5 34.0 9.5 100.0
※ 表中の「−」は、0でないが、若干あるという意味で用いている。


 なお、収納塩というのは、全国で生産された塩が専売局へ収納(販売)された塩のことである。
 また、図1は、表1をグラフにしたものであるが、昭和15年度(1940)〜17年度の塩化ナトリウム含有率80〜90%については、便宜上、塩化ナトリウム含有率85〜90%として表示した。




 この図から、塩専売制度実施当初の明治38年度(1905)の塩の品質は、塩化ナトリウム含有率80%未満の塩が全体の80%近くを占めていたが、年の経過とともに減少し、昭和元年度(1926)にはほとんど姿を消していることがわかる。
 また、明治38年度(1905)、塩化ナトリウム含有率80%以上の塩が20%程度であったが、その後、昭和元年度(1926)まで急激に増加している。
 その実態は、塩化ナトリウム含有率85%以上の塩が3.2〜7.6%とほぼ横ばいで推移し、ほとんどが塩化ナトリウム含有率80〜85%の塩で占めている。
 ところが、昭和元年度(1926)以降、その様相が変わり、塩化ナトリウム含有率80〜85%の塩が年の経過とともに減少し、塩化ナトリウム含有率85〜90%の塩が昭和17年度(1942)まで急激に増加している。
 また、同時期の塩化ナトリウム含有率90%以上の塩は、部分的に減少した時期もあるが、徐々に増加し、昭和14年度(1939)以降、急激に増加している。
 このように専売塩の塩化ナトリウム含有率は、年の経過とともに向上している。
 この大きな要因は、塩専売制度の塩化ナトリウム含有率の違いによる収納価格や、専売局の指導による煎熬せんごう技術の向上、ST式平釜(平釜の改良型)・蒸気利用式・カナワ式・真空式蒸発缶しんくうしきじょうはつかんなどの煎熬せんごう工程の技術発達などによるところが大きい。


3.昭和26年度(1951)〜平成8年度(1997)
 昭和26年度以降については、手元に専売塩の品質を示す資料がみあたらないので、塩の品質規格からみていきたい。
 昭和29年(1954)9月、品質規格塩化ナトリウム含有率95%以上の「上質塩」が販売開始となり、食料塩は、白塩と上質塩の2種類となった。
 なお、この白塩の品質は、製塩方式別により異なっていた。 
   真空式は、塩化ナトリウム含有率90%以上
   平釜式および蒸気利用式は、塩化ナトリウム含有率80%以上
 さらに、昭和30年(1955)4月、白塩の品質規格が次のようになった。
   真空式は、塩化ナトリウム含有率93%以上
   蒸気利用式は、塩化ナトリウム含有率88%以上
   平釜式およびその他は、塩化ナトリウム含有率85%以上
 昭和34年(1959)10月、品質規格・塩化ナトリウム含有率99%以上の「精製食塩」が販売開始となり、食料塩は、精製食塩・上質塩・白塩の3種類となった。
 昭和35年(1960)11月、精製食塩が「食塩」に名称変更となり、平成8年度末現在に至っている。
 当時の食料塩の品質規格は、次のとおりである。
  食塩は、塩化ナトリウム含有率99%以上
  上質塩は、塩化ナトリウム含有率95%以上
  白塩は、塩化ナトリウム含有率93%以上
 昭和37年(1962)4月、白塩が規格外となり、食料塩は、食塩と上質塩の2種類となった。
 昭和40年(1965)4月、上質塩が「並塩なみえん」に名称変更し、平成8年度末現在に至っている。
 なお、塩の品質規格には、塩化ナトリウム含有率のほかに粒度も規定されている。平成3年度の品質規格を次に示す。   食塩は、塩化ナトリウム含有率99%以上および粒度600〜150ミクロン80%以上
  並塩は、塩化ナトリウム含有率95%以上および粒度600〜150ミクロン80%以上
 このように戦後は、塩の品質規格の向上とともに塩化ナトリウム含有率も向上してきた。もちろん、その背景には、日本専売公社による技術指導や煎熬せんごう技術・製塩設備などの発達などによるところが大きい。
 ところで、昭和46年度(1971)に第四次塩業整備が行われたあと、国内の製塩企業は7社になった。
 塩業整理交付金の根拠法として昭和46年(1971)4月に制定された「塩業の整備及び近代化の促進に関する臨時措置法」により、新たに販売特例塩制度が設けられた。
 その結果、製塩企業7社では、並塩や食塩のほかに販売特例塩の製造がはじまった。
 販売特例塩は、法律の条項から、俗に1号塩や4号塩といわれ、1号塩は「塩化ナトリウムの含有率が百分の99.5以上の塩」と、4号塩は「粒形が正六面体で、かつ、粒度が200ミクロンをこえ590ミクロン未満である塩以外の規格を有する塩」と規定されている。
 この販売特例塩制度は、昭和59年(1984)8月に全部改正された「塩専売法」に引き継がれ、同法が廃止されるまで続いた。この1号塩や4号塩は、業務用塩として製造・販売された。
 また、食塩は、並塩を乾燥機にかけたものである。並塩に含まれるニガリは、ほとんどが水分として含有しているが、乾燥することにより、ニガリ分がほとんどなくなり、結果として、塩化ナトリウムの含有率が99%以上となる。
 並塩・食塩をはじめとする専売塩には、表2のような塩製品がある。これらの塩製品は、家庭用塩と業務用塩の二つに区分される。


表2 平成8年度末(1997年3月31日)現在の専売塩の一覧表
区   分 商品名 包装単位 品 質 規 格 販売開始年月
原塩を溶解し、再製加工したもの 食卓塩 100g 塩化ナトリウム99%以上・炭酸マグネシウム基準0.4%
粒度500〜300ミクロン 85%以上
1950年10月
ニュークッキングソルト 350g 塩化ナトリウム99%以上・炭酸マグネシウム基準0.4%
粒度500〜300ミクロン 85%以上
1982年8月
キッチンソルト 600g 塩化ナトリウム99%以上・炭酸マグネシウム基準0.4%
粒度500〜300ミクロン 85%以上
1987年8月
クッキングソルト 800g 塩化ナトリウム99%以上・炭酸マグネシウム基準0.4%
粒度500〜212ミクロン 85%以上
1976年12月
特級精製塩 25s
散 塩
塩化ナトリウム99.8%以上
粒度500〜180ミクロン 85%以上
1956年12月
精製塩 1s 塩化ナトリウム99.5%以上・炭酸マグネシウム基準0.3%
粒度500〜180ミクロン 85%以上
1950年10月
25s
散 塩
塩化ナトリウム 99.5%以上
粒度500〜180ミクロン 85%以上
イオン交換膜法による鹹水かんすい煎熬せんごうしたもの 新家庭塩 700g 塩化ナトリウム 95%以上
粒度600〜250ミクロン 80%以上
1994年4月
食 塩 1sほか 塩化ナトリウム 99%以上
粒度600〜150ミクロン 80%以上
1960年11月
並 塩 25sほか 塩化ナトリウム 95%以上
粒度600〜150ミクロン 80%以上
1962年4月
さしすせそると 500g 塩化ナトリウム98.5%以上・炭酸マグネシウム基準0.4%・リン酸水素二ナトリウム基準0.3%
粒度600〜150ミクロン 80%以上
1994年4月
原塩を洗浄し粉砕したもの つけもの塩 2s 塩化ナトリウム95%以上・リンゴ酸基準0.05%・クエン酸基準0.05%
粒度800ミクロン程度
1974年11月
外国から輸入した天日塩 原 塩 25s
散 塩
塩化ナトリウム 95%以上 1945年5月
原塩を粉砕したもの 粉砕塩 25s
散 塩
塩化ナトリウム 95%以上
粒度1,180ミクロンを超えるもの 15%以下
粒度500ミクロンを通過するもの 40%以下
1949年10月

※1.家庭用塩には、食卓塩・ニュークッキングソルト・キッチンソルト・クッキングソルト・精製塩(1s袋入)・新家庭塩・食塩(1s・5s袋入)・さしすせそると・つけもの塩がある。
 いっぽう、業務用塩には、並塩・特級精製塩・精製塩(25s袋入・散塩)・原塩・粉砕塩がある。
※2.この表は、平成8年度末(1997年3月31日)現在の専売塩を示しているが、平成9年度以降、「塩専売法」の廃止に伴い、「専売塩」という表現はなくなっている。ただし、商品名はこの表とほとんど変わっていない。


【引用文献(表および図を含む)】
 『日本塩業の研究第26集〜塩専売法廃止記念特集号〜』(1998年・日本塩工業会発行)103頁〜114頁収録の「塩専売制度について思うこと」(小橋 靖著)



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