『ラテンダンス』
 皆様こんにちは、及川です。 今 回は、私の観点でラテンアメリカンダンスについてお話したいと思います。皆様もご存知と思いますが、ボールルームダンスのラテンアメリカンというのは、いろいろな国 のダンスから、音楽、踊り、雰囲気などを取りこみ、イギリスでペアダンスとしてベーシックステップを作り、そこから発展したダンスです。
 まず、ラテンアメリカンとは南北アメリカ大陸の内、カナダとアメリカ合衆国を除く西半球全体を言い、ラテン系の言語(スペイン語、ポルトガル語等)を話す中南米諸国と、その人々、音楽を言います。社交ダンスでは、スペインやポルトガルなどのダンスやアフリカの伝統的な踊りを取り入れて、またアメリカに移ってきた新しい踊りを中心に作られてきたダンスを指します。現在は競技ダンスであり5種目(チャチャチャ・サンバ・ルンバ・パソドブレ・ジャイブ)が含まれています。ここからは種目ごとにお話させていただきたいと思います。
 まず、ラテンダンスの元になるルンバというダンスの説明をしたいと思います。キューバの伝統的なルンバとは、元々はキューバに奴隷として連れられたアフリカ系住 民の間で生まれた音楽と踊りであり、ボールルームダンスのルンバとはかけ離れた踊りです。実際私もキューバのルンバを踊ったことがありますが、深 く膝を曲げ、腰を落とし、いろいろな感情(例えば、男が狩に行くことや戦いのことや神様への祈りのことなど)をそのままに表現して踊っていく野性味あふれるダンスです。ボールルームダンスのルンバとは、男女のペアダンスで あり最も男女の絡みや葛藤を中心にしてスローテンポの曲で情熱的に踊るダンスです。
 サンバは、17世紀にブラジルのバイーア(現在のサルバドール)に 住んでいたアフリカ人奴隷の踊りが元になっているダンスだと言われています。今のリオのカーニバルのサンバダンスの元にもなっています。伝統的には、色んな楽器を使い、リズムを演奏しながら輪を作って周りで手をたたきながら踊り、 交代で人が中に入って踊ります。踊り方はほとんど即興です。ボールルームダンスのサンバのバチュカ ーダに似たようなステップです。ボールルームダンスのサンバもリズムが多く細かいために、ステップや腰・体からの色んなより細かい動き(鳩尾のあたりなど)が要求されます。
 チャチャチャは、キューバのルンバ、マンボから派生したダンスです。リズムの語源は、キューバの人が「4&1」のところで床を叩く音を「チャチャチャ」とういう擬音語と言いそこから始まったのです。よりチャチャチャらしく踊るには、「4&1」のリズムを連続して使ったり、シンコぺーション等を使って音楽表現 に変化をつけて踊ることが最も重要だと思います。
 パソドブレは、スペインの闘牛とフラメンコをイメージしたダンスで、男子がマタドールやフラメンコ的な踊りをし、女子がケープや時には闘牛、フラメンコ的な表現をすることは皆様ご存知と思います。基本的に闘牛ですので,他の種目には無い,鬼気迫った感じのダンスになります。
 闘牛は、一日にだいたい6回のショーがあります。私も何回か見たことあるのですが流れはまずゲートから闘牛が飛び出し、ピカドールが銅板の鎧を着た馬に乗って登場し長槍で闘牛の肩の筋肉を斬り、次にバンデリリェーロが3人出てきて背中に銛を約6本撃ち込んで行きます。背中から血を噴き出しながら暴れまわる闘牛が段々弱り、首が下がってきた時にマタドールが登場します。左手にサーベル、右手には赤いケープを持ち、突進して来る闘牛をすれすれの所でかわす「さばき」を見て、観客は興奮します。この後、最後の時が来るわけですが、それをMOMENT OF TRUTH(真実の瞬間)と言います。人間と牛が命を賭けた戦いで、どちらかが息絶えるわけです。
 また,パソドブレのポーズの中には,スペイン伝統舞踊と音楽のフラメンコのテクニックも取り入れられています。フラメンコは歌、踊り、ギターの演奏とパルマという手でリズムを取る人の4要素で成り立っています。フラメンコ舞踏は音楽との結びつきが深いのです。つまり、ダンサーは出来上がった音楽に乗って踊るのではなく、歌い手やギタリストやパルマとともに音楽を作っていくのです。フラメンコといえば、抑圧の中で生きてきたジプシーたちの赤裸々な喜怒哀楽の感情表現が根底にあるという話があります。
 競技会で頻繁に見るのですが、これを踊りとして表現する時に、恐い顔だけでなく、シリアスで緊張感のある表現を考えてドラマチックに踊ってみては如何でしょうか?
 ジャイブは、比較的に近代のダンスです。1920年代にジャズ音楽が広まってゆく中、スイングジャズの演奏をバックに女性を左右に振って踊る「リンディホップ」というステップが流行します。この リンディーホップは年を経るごとに進化し複雑化されて様々なダンスが生まれてゆきました。その中の「ジッターバグ」のダンスが1940年代後半にイギリス へ渡り、イギリスの民族ダンスを元に歩数やリズムを改良されて「ジャイブ」が生まれました。ジャイブの魅力は、軽快に、躍動的、よりリズミカルに見えることです。
 ボールルームダンスのラテンアメリカンは、元々のラテンダンスのスタイルからイギリスに渡り、より広いフロアを使い、スピーディーに、ダイナミックに、よりエレガントに踊るペアダンスとして進化してきました。現在のダンサーはコーチャーのレッスンを受ける以外に、様々なトレーニングで身体を鍛えたり他のダンスから色んなテクニックや雰囲気を取り入れたりする選手もたくさん見られます。私がダンスを始めてから約30年になりますが、テクニックや、コリオグラフィ、エキスプレッション等が非常に早いスピードで変わっているように思いますが、一つだけ忘れないでほしいことがあります。私達のダンスは競技ダンスとして進化して来ましたが、ペアダンスであるということが最も重要です。つまり、男女がペアになり音楽を感じながら美しいストーリーを作り、感情的に表現していくのが人に感動を与えるダンスになるのではないでしょうか。