ター助

ダーリンのパパとママの壮絶なフロリダ旅行が終わり、
鋭気を養う間もなく「地獄の夏休み」に突入してヘロヘロになっていたら、
あっ!っと言う間に9月も10日を過ぎてしまっていた。 ・・・ヤバイ! 
このままだとまたなお姉さんに、勝手にメーコのコーナーを終了されてしまうではないか。 
メーコも相当自分勝手だが、この姉も長女のくせにすんごい自分勝手。 
チョット原稿を送るのが遅れると勝手にメーコのコーナーを消し、
かと思えば復活して快調に原稿を送り続けると、
今度は「壁紙探すのが間に合わないでしょ!!」と怒って文句を言ってくる始末なのである。 
その昔、テレビのチャンネルを変えるためにメーコをアゴで使い、
「あはははは、“リモコン”じゃなくて“イモコン(=イモートコントロール)”だー」などと、
とんでもないことを言って一人で大笑いしていたのも、紛れもないこの人。
メーコは、絶対に「自分よりも遥かにセーカクが悪い」と信じているが、
どうやら向こうも同じことを思っているらしい。 
・・・う〜む、やはり姉妹なのか・・・?

こんなキョーレツな姉が二人もいたせいか、子供の頃から今ひとつ目立たなかったのが弟のター助である。 
肩書きは「長男」であるけれど末っ子の彼は、気が強くて活発だったメーコからすると、
良く言えば「大人しくて甘えん坊」であり、悪く言えば「ちょっとトロくてワガママ」な弟であった。
(←でも絶対、これをター助が読んだら、
「アナタにだけは言われたくないね」と言うこと間違いナシであるが・・・) 
スポーツや遊びでは絶対に負けない自信のあったメーコは、
子供の頃はいつでも「お姉さん風」をブリブリ吹かせていたが、
ター助が中学生になる頃には勉強ですっかり抜かされてしまっていたので、自ら「双子」に格下げた。 
がっっ! 今も昔も、メーコはター助のことを「勉強はできるけど頭は悪いヤツ」だと信じて疑わない。 
子供の頃、ター助が生まれる前の家族旅行のアルバムをみんなで見ていた時に、
ター助の大のお気に入りだった「ピンクのセーラーシャツ」をメーコが着ている写真を見つけ、
その時になって初めてそのシャツが「お下がり」であったことに気づき、
イジケてタンスの隅に縮こまったまま無言の反抗でその場でウンチをたれたのはこやつだし、
学生の時に、所持金と終電がなくなるまで飲んだくれ、
ポケットの中に一枚だけ残った50円玉を握り締めながら、
「さみしーよぉー」と呟いて東横線の線路を渋谷から都立大学まで歩いて帰ってきたのも、
「常に学年で三本の指に入る」成績優秀な弟であった。 
そんなター助に対し、「だいたい男の子がピンクのシャツなんて着せられるワケがないじゃーん、ば〜か」、と言いながら、
ご丁寧にお姉のアルバムまで持ち出して、「ほ〜ら、ナー姉だって着てるんだよ〜」と言って
さらに奈落の底に突き落としたのもメーコだったし
「アタシなんて、“ゼッタイにお金返しに来ますから電話かけさせて下さ〜い!”って頼み込んで、
交番から電話したことあるんだからね〜! 50円も持ってたのにバカじゃない??」と、
全然自慢にはならないだろうことを引き合いにだして自慢してみせたのもこのメーコである。  
・・・やっぱり、今も昔も、メーコはセーカクが悪いらしい・・・。

そんなター助が、お嫁さんのサーちゃんを連れてオーランドに遊びに来ることになった。 
「地獄の夏休み」がようやく終わり、これからのんびり渡米の準備をしようとしていたメーコは大慌て。 
何とか出発日だけは合わせてチケットを取ったものの、フライトは別々。 
しかも、ター助たちの方が3時間以上も早くオーランドに着いてしまうため、
仕方がないのでダーリンに頼み込み、休みを取って出迎えてもらうことにした。 
・・・ダーリンのパパ・ママといい、ター助たちといい、
どーしてこうもメーコの周りには「周りの人のことを考えない自分勝手な悪魔」が多いのだろう・・・と、
一瞬自分を取り巻く環境を嘆いたメーコではあったが、百人の人が百人、
口を揃えて間違いなく「類は友を呼ぶからねぇー」と冷ややかに言う姿が目に浮かんだので公言するのはやめといた。 
・・・最近のメーコは、少しずつ「大人」になっているのである。 えっへん!  
それに、「家の片付けをきちんとしてからでなかったらアメリカになんて行かせませんよ!!」と、
目クジラを立てているママちゃんから逃げ出してダーリンの所に行くいい口実にもなるし、
山のように積んであるメーコの荷物を運ばせるいい「荷物持ち」にも使えるではないか・・・。 
うっしっしっしっし。
言うまでもなく、そうほくそ笑むメーコ自身が、
「世界最強の悪魔」であることに全く気づいていないのは本人だけだったりもするのだが・・・。 
ま、いっか・・・。

そんなこんなで出発当日。 
ダーリンの写真と、「ねーちゃんって、本当に悪魔みたいな人だな」と、罵られるほどの量の本をター助に持たせ、
「オーランド空港の荷物の受け取り所降りるエスカレーターの手前」で
待ち合わせるよう打ち合わせてメーコは家を出た。 
3時間早い飛行機に乗るター助たちはそろそろ搭乗かな・・・?と思いながら
スカイライナーに揺られていたら、突然当の本人から電話が入った。 
時計を見れば出発時間の10分前。 オイっっ! 
こんな時間にナゼに電話ができる?? 
でも、もしかして飛行機が遅延になったりしてるのだろうか?? 
そう思いながら恐る恐る電話に出たら、相変わらず呑気そうな声で、
「ねーちゃん、ゴメン! 時間なくってマサルさんにおにぎり買えなかったから、
ねーちゃん買ってってあげてねー」、と話すター助の声。 
「そんなんどーでもいいけど、アンタ一体今何処にいるのよっっっ??」、と聞けば、
これまた呑気にも、「今、出国審査場だよ〜」などと言ってるではないか! 
・・・やっぱりこいつはバカだ。 
何処の世界に、出発時間の10分前に出国審査に並ぶバカがいるだろうか?? 
神様仏様、頼むから二人を飛行機に乗せてくれ〜!!

その願いが通じたのかどうかは定かでないが、ともかく二人は何とか無事にオーランドに到着した。 
3時間遅れて家に着いたメーコがコトのいきさつを聞くと、
「時間があったので成田で食事をしていた」そーだ。 
本当にバカである。 
メーコのお客さんだったら、一番に“要注意人物ナンバーワン”のレッテルを貼られるタイプ間違いナシだ。 
でもま、そこは何だかんだ言っても可愛い弟、「遠いアメリカ」まで無事に着いたことを労ってやろう・・・、
と思い、「ビールでも飲む??」と聞いたら、彼はもう、既に3本も空けていた。 
母親がいつも、「ターちゃんは、悪いとこばっかメーちゃんの真似をするから困るわ」と嘆いていたことに対して、
常に反論していたメーコではあったが、この時ばかりは素直にそのジジツを認めてしまった。 
・・・やはり、姉弟なのである。 
気を取り直し、「で、オーランドではマサルさんのことすぐに分かった??」、と聞いたら、
ター助は子供の頃と全く変わらない笑顔で、
「それがですねー、エスカレーターの降り口に“写真にソックリ”の人がいたんで
“あっっ!マサルさんだ!!”って思ったんだけど、誰かと楽しそうに話しをしてたから、
“二人でいるワケないから別人かもなー”って思って声を掛けられずにいたら、
マサルさんの方から声を掛けてくれましたー」と、嬉しそうに話してくれた・・・。 
メーコだったら、絶対に逆立ちしても思いつかないような考えである。 
こんなター助だからこそ、「50円も」持っているのに電話も掛けられずにわざわざ線路を歩いて帰ってくるのだろう。 
そんなター助を見つめるダーリンの眼差しも、
「本当にメーコと姉弟なの??」と問いかけている。 
・・・はぁ〜っっ。 先が思いやられるねぇ・・・。 
でも、次の瞬間、そんなメーコとダーリンの様子には全く気づかずに、
「すいません、ビール、お代わりもらっていいっすか〜??」と聞いたター助の姿を見て、
「紛れもなく、アンタたちは姉弟だよ・・・」と、ダーリンが無言の呟きをしていたのをメーコは見逃さなかった・・・。 

かくして、「ター助とサーちゃんの珍道中」は始まったのである・・・。  つづく。   
   




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