9月11日

月日の経つのは本当に早いもので、あの、全世界を震撼させたアメリカ同時多発テロから丸一年が過ぎてしまった。

一年前のこの日、メーコはラスベガスの街にいた。 
サンフランシスコからラスベガスへと周るツアーを終え、まさに「さぁ! いよいよ帰国です!」という日の朝に、事件は起こった。 
「どーせ後は帰るだけだし、飛行機の中で眠れるからねー」と、
いつもの如く明け方まで現地のスタッフと飲んだくれ、
「目の下クマ子」状態で回収した荷物の数を確認していたメーコの元に、ベルキャプテンが走ってきたのは午前6時半。 
「メーコ!大変だ! ニューヨークの貿易センタービルに飛行機が突っ込んだぞ!」、と、
彼は興奮気味に話していたが、せっかく「じゅーなな」まで数えていた所を遮られたメーコにとっては、
もう一度最初から数え直すことの方がよっぽど大変なコトだった。 
仕方なく、再び数え始めてようやく「にじゅーさん」までいったと思いきや、今度は別のベルボーイが飛んできて、
「大変だ! また別の飛行機が突っ込んだぞ!」と言うではないか。 
コイツら、メーコにそんなに嫌がらせをしたいのか? 
メーコにとって、「さんじゅー」まで数えることがどれだけ大変なことか奴らは分かっていないのだろうか? 
それに、東海岸のニューヨークで起こった事故が、西海岸のラスベガスに影響を及ぼすワケがないだろが。 
2回も勘定を妨げられ、睡眠不足も手伝って思いっきり不機嫌だったメーコは、
彼らの言葉をさほど気にも留めずに、ようやく「さんじゅー」まで数え終わってホテルを後にした。

空港に着いたのは西海岸時間の7時チョット前。 
いつも通り、顔見知りの航空会社の係員を見つけ、
「はろー、でーびっど。 今日は30人ねー。 よろしくぅ。」と、チェックインをしようとしたメーコに、
彼は暗い面持ちで言った。 「メーコ。 キミは今、ニューヨークシティで何が起こっているのか知らないのかい? 
ハイジャックだよ。 テロによるハイジャックが起きたんだ。 
貿易センタービルに2機が突っ込み、ペンタゴンにも墜落した。 
まだ定かではないけれど、あと数機がハイジャックされているらしい。 
FAA(=アメリカ連邦航空局)の通達で、今日は全てのフライトがキャンセルになり、間もなくこの空港も閉鎖される。 
後1時間したらまたFAAの声明が出るから、それまで待機しててくれ」、と。 
これまた朝方まで夜遊びしていた寝不足が手伝って、彼が早口で喋った言葉を理解するまでにメーコは相当の時間を要した。 
3時間前まで、メーコが遊んでいたのは「ブラックジャック」。 「ハイジャック」はそれとは違う。 
「ペンタゴン」。 
何だか聞き覚えはあるけれど、一体何だったっけかな? 「カネゴン」だったらスグに分かるんだけど。 
それから何だっけ?? 
「全てのフライトがキャンセルになる」?? がぁぁぁぁぁ・・・っっっ!!
=イコール「メーコは日本に帰れない」ではないかぁぁぁぁっっっ!!!

メーコの周りで、航空会社の係員に噛み付かんばかりに詰め寄っている他社の添乗員さんたちを見て、
「どーしてあの人たちはあんなに騒いでいるんだろー?」、と、フシギに思っていた理由が、メーコにはようやく理解できた。 
今にして思えば、こんな添乗員に付き添われた29名のお客さんはさぞかし不幸だったろうと思うのだが、
これまた添乗員が添乗員ならお客さんもお客さん、
やいやい騒ぐ他社の添乗員さんたちと事態が理解できずにポヘー・・・っとしていたメーコを見比べて、
「やっぱりメーコさんはスゴイねー。 こんな事態になっても全く動揺してないんだもんなぁ」、と、
スナオに感動してくれていたのだ。 ・・・持つべきものは、スナオなお客さんである・・・。

でも、事態を把握してからのメーコの頭は、人生史上これ以上ナイ!というくらいフル回転したと思う。 
やいやい騒ぐ他社の添乗員さんたちを押しのけ、「でーびっどー。 アンタとアタシの仲じゃんよー。 
忙しいとは思うけど、30人分の予約を明日に入れてー」と、
ありもしない「仲」を作って無理矢理翌日のロスアンジェルスから成田までの国際線の予約を入れさせ、
さらにその後、公衆電話に続く長蛇の列を横目に隣りのターミナルまで一気に走り、
誰もいない電話をゲットしてロスアンジェルスまでのバスとロスでのホテルをしっかり予約した。 
そして、国家的規模の事件が起こった事態をお客さんに説明し、
この先にかかる費用が全てお客さん負担になってしまうことも了承してもらった。
(お客さんにはヒジョーに申し訳ないのだが、暴動・テロといった災害時に関しては、
旅行会社及び航空会社は全て「免責」なのである・・・) 
・・・と、ここまでは、自分で言うのもナンだが、全て「完璧」だったと思う。 
だが、その後、一通りの目先がついて、会社に連絡を入れる前にタバコを一服しようと外に出た瞬間に悲劇は起こった。

カバンからタバコを取り出そうとした瞬間、メーコの瞳に写ったものは、
無我夢中で走り回ったせいでフタが開いてしまったペットボトルの水にぐっしょり浸された、
パスポートの次に大切なパソコンの無残な姿であった・・・。  
2001年9月11日、アメリカ西海岸時間午前9時40分。 
大枚18万円を払ったメーコのパソコン、死亡。

その後、会社に連絡を入れ、「お客さんは全員落ち着いていらっしゃいますが、
メーコは全く落ち着いておりません・・・」、と、報告したメーコの悲劇はこれから始まったのである・・・。

激動の、ロスアンジェルス編へつづく。   





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