オーストラリア


「中国四千年の歴史」にまたも敗北を喫して帰国した翌々日、メーコはオーストラリアへと飛んだ。
 ・・・オカシイ。絶対におかしいぞー! 
メーコが行かなくてはならないのは「オーランド」であって「オーストラリア」ではないのだ。
それに、「仕事を辞める」と言ったにもかかわらずこの過密なスケジュールは一体ナンなのだ??
そう、担当者のA君に文句を言ったら、「“オーランド”も“オーストラリア”も似たようなモンじゃないですか」と言われてしまい、単純なメーコは、「う〜む、確かに」と、つい納得してしまった。
 その上、「第一、みんなメーコさんに頼ってるんだから、辞められちゃったら困りますよ」。とまで言われてしまい、
単純な上におだてに弱いメーコは、これまたついうっかりと、乗せられていー気になってしまった・・・。 
 こんなメーコは絶対、「悪徳商法」に騙されて、破滅の人生を歩んでいくタイプの人間だと思う・・・。

でも、実際問題、添乗の仕事というのは「麻薬」と同じでなかなかやめられない。
 しかも、メーコのように単純でおだてに弱い人間は、例えどんなに辛いツアーであろうと、お客さんから
「メーコさんが一緒で本当に楽しかった」と一言言われてしまうとすっかりいー気になり、さらに
「次からもメーコさんにお願いしたいわ」などとまで言われてしまうと、ガゼンやる気を出してしまうのだ。 
そんなメーコの性格を知ってか、聞くところによるとメーコが
「本当に仕事を辞めるか辞めないか」の賭けまで行われているらしい。
 しかも、「辞めない方」に賭けている人間の方が多いというのだから、
メーコを囲む人間たちは、本当にメーコのことを良く知っていると思う・・・。くっそ〜。

そんなメーコではあったが、今回の仕事の内容を聞いた瞬間に、「今度こそ辞められるかも」と自信を持った。 
なぜならば、今回の仕事は15名の「議員さん」を連れて行くツアー。 そして、行き先は「シドニーとケアンズ」である。  
メーコは、「議員」だの「局長」だの、役職に就く人間がキライである。
議員さんに限らず、先生だの警察官だのと普段抑制された生活を送っている人間は、一度解放された旅行に出ると、
途端にワガママになることは、周知のジジツであろう。
そして、その「議員さん」たちを連れて行くシドニーは、メーコにとって、今となってはとぉ〜っても切ない思い出しか残っていない場所である。 
去年、急逝してしまったオバちゃんと、初めて一緒に行った旅行先のシドニー。
 オバちゃんが亡くなって半年が経って、ようやくオバちゃんがいなくなってしまったことを実感できるようになったメーコにとって、あんなに元気に、あんなに楽しそうにしていたオバちゃんの姿を思い出させる場所には、もう二度と行きたくなかったのさ。

キライなお客さんに行きたくない場所。 う〜む、これなら未練なく仕事を辞められるぞ〜。
そう固く信じていたメーコではあったが、現実はそうも優しくはなかった。
参加された15名は、「議員」は「議員」でも、山奥の小さな村の議員さん。 
成田に向かうバスの中から、「メーちゃん、一緒に飲むっぺや〜」の大騒ぎ。
 シドニー到着が近づくにつれ、ナミダが溢れてくるのを抑え切れなかったメーコに気づき、
「嫌なことがあるんだったら飲んで忘れっぺ〜」と、フォローまでしてくれちゃった。 
メーコも単純だからして、「うん、そうすっぺ〜」と一緒になって飲むわ飲むわ。
 ねぇ、だぁ〜れ? 
「議員さん」はイヤなヤツだ、って言ったのは??

単純な上に酒に弱いメーコは、「切ない思い出」は何処へやら、毎昼毎夜、お客さんと一緒になって飲みまくった。
 しかも全て、お客さんのオゴリである。
 オバちゃんが一生懸命歩いたハーバーブリッジを見ながらワインを煽り、オバちゃんと一緒に行ったブルーマウンテンでビールを飲みまくった。
 そして、ナミダの代わりにアルコール臭い汗を流し、シドニーでの2日間を終えてしまった・・・。
 その上、次の滞在地のケアンズでは、これまたお客さんのお金でカジノで遊びまくり、さらにチップまでもらってまんまと買い物までしてしまった。

帰りの飛行機の中で、ルーレットで勝った小銭を握り締め、
「日本に帰ったら、私も“辞めない方”に賭けよう」と思ったメーコであった・・・。  とほほ。




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