オーランド

アメリカ・フロリダ州オーランド。
ミッキーマウスと湿原とワニに囲まれたこの街は、
日本から見ると、「最も遠いアメリカの街」にあたる。 
日本からの直行便はなく、サンフランシスコやニューヨーク、
シカゴやヒューストンなどで乗り継いで最低でも16時間弱、
接続が悪ければ20時間以上もかからなくては辿り着くことができないという、
本当に「遠いアメリカ」なのだ。 
一般的に、日本からアメリカに向かう飛行機はその殆どが夕方日本を発つのだが、
アメリカ本土と日本の間には、冬場で14時間から17時間、
サマータイムを導入している夏場でも13時間から16時間の時差があるため、
西海岸のサンフランシスコやロスアンジェルスならなら出発したその日の午前中、
東海岸のニューヨークやボストンでも午後3時くらいまでに現地に到着する「逆戻り現象」が起こり、
何となく一日得をしたような気分になるのが常である。 
ところが、乗り継ぎを必要とする、「遠いアメリカ」のオーランドにはそれが通用しない。 
一番早い到着でもその日の午後8時過ぎ、遅ければ11時を回ってしまうため、
ちっとも「得した気分」になれないのだ! 
アメリカ広しと言えど、「観光都市」でありながら「得した気分」にさせてくれないのは、
メーコが知る限りではこのフロリダ州の2つの街、オーランドとマイアミだけ。 
3、4年前に、アメリカン航空が成田からマイアミまでの
直行便を飛ばそうという話も出ていたらしいんだけど、
いつの間にか立ち消えになっちゃった。 
これ、テロの影響ももちろんあったらしいけど、ウソだかホントだか知らないけれど、
日本からマイアミまでだと、直行便じゃ燃料がもたないからムリだ、っつーウワサも飛び交った。 
本当に、フロリダは「遠いアメリカ」なのだ。

そんな、「最果ての地」で暮らす息子の生活ぶりを見ようと、
ダーリンのご両親がメーコと一緒にオーランドに行くことになった。 
3年前にハワイで会って以来の息子との再会、
しかも、行ったことも見たこともない「オーランド」なんていう場所で、
ちゃんと暮らしているのだろうかと心配になる気持ちはよぉ〜っく分かる。 
でもね、ママ、貴女の息子はオーランドで食料品店を開いているんじゃないんだから、
特大のスーツケースの丸々半分、「つくだ煮」だの「餅」だのと持ってこなくてもいいんだよ。 
それからね、パパ、「富山の薬売り」じゃないんだから、
そんなにたぁ〜っくさんお薬持ってきてどーするの。 
オーランドにもね、ちゃ〜んと薬屋さんはあるってば。 
それよりもさー、二人とも、「右も左も分からないから、
黙ってメーちゃんに付いてくだけだよ」とか何とか言っといて、
チョロチョロいなくなるのはやめてくれー。
お客さんだったら、「仕事だから」とガマンもできる。 
自分の親だったら、面と向かって文句も言える。 
が、しかし、「他人の親」、
しかも「未来の義理の親」になるかもしれない二人を前にしては、
そのどっちもできんではないか。 
いや〜ん、メーコのストレス、出発前から最高潮なりぃ。

今回は、デトロイト経由のオーランド行き。 
成田からデトロイトまで約12時間、
「飛行機にさえ乗ってしまえば眠れるぞー」と期待していたメーコの目論みは、
離陸後1時間で消え去った。
苗字が異なるため、ご両親とメーコは並びの席が取れず、
間にお客さんを2人挟んで座っていたにも拘らず、
窓側に座るパパから矢継ぎ早の質問が飛んでくる。 
「メーちゃん、フロリダは今何時だい?」 
「メーちゃん、デトロイトには何時に着くんだっけか??」 
「メーちゃん、悪いけどお水もらってくれるかい、お水。 薬飲むのに水忘れちゃってさー」
・・・パパ、飛行機に乗る前に全部説明したよね。 
デトロイトまでは約12時間、デトロイトもオーランドも時差は同じで日本マイナス13時間。 
日本が昼の12時だったら向こうは前日の夜の11時ですよ、って。
それからさー、「機内は乾燥しますから」って言って、
さっきペットボトルのお茶を買ってあげただろーーー!!! 
お茶では薬が飲めん、っつーんかい!!
メーコが低血圧でなかったら多分、血管がブチ切れて脳溢血になっていたであろう。 
いや〜んもう、「老人会」のお客さんより手がかかるやんけーーー!!!

結局デトロイトまで一睡もできず、メーコは意識モーローの状態で飛行機を降りた。
いよいよ、入国と税関審査である。 
アメリカでは、たとえ乗り継ぎ便であっても、最初の寄港地で入国と税関の審査を受ける。 
よって、今回は経由地のデトロイトで入国を済まし、一旦荷物を受け取って税関の審査を受け、
その後にもう一度荷物を預けなおすのだ。
・・・って、これまた飛行機に乗る前に一通り説明したけど、絶対パパは聞いてくるぞー・・・。
と、思った瞬間に、やっぱりパパは聞いてきた。
「何だメーちゃん、ここで入国するのかっっっ??」  
ほぉ〜ら、きた。 んで、振り返るとママがいないんだよねー、と見越して振り返ると、
やっぱりママはいなかった。 
ふふふんっっ、もう驚くもんか。 
半日一緒にいれば、アナタたちの行動パターンなんて読めちゃうんだよー。  
・・・と、自信満々で、メーコは入国審査に向かった。 
「苗字は違うけどファミリーだよ」と大ウソをついて、ママたちと一緒に審査を受ける。 
「入国の目的は?」、
「アメリカにはどの位滞在するのか?」等々、
いつも通りの質問を聞かれ、答えようとした瞬間にまたまたパパから横槍が入った。 
「おい、メーちゃん、何て言ってるんだ??」
「え?? いや、“どうしてアメリカに来たのか?”って聞かれてるんですよ」
「あら、じゃあ、“息子に会いに来た”って言わなくちゃいけないの??」と、
ママまで口を挟む。 
「いや、大丈夫、私が全部説明してますから・・・」と二人に日本語で説明していたら、
今度は入国係官に、「一体何を話してるんだ??」とケゲンそうに聞かれてしまった。 
おまけに、アメリカでの滞在先がダーリンの住所になってるのまでチェックされちゃって、
「ここには誰が住んでいるのか」だの、
「オマエはやたらとアメリカに来ているな」だの、余計なことまで調べられまくり。 
もう、いや〜ん! 
「黙って付いてくよ」っつったのは誰だよーー!!!
メーコの血圧、再び急上昇。

どうにか入国のスタンプをもらい、荷物を受け取ったらお次は税関審査。 
実はコレ、パパの「質問攻撃」と並んでメーコを眠れなくさせた原因の一つ。  
今回、「同じ布団じゃ寝られない」というパパとママにベッドを2つ使わすため、
ダーリンとメーコが寝るための布団一式と枕を持ち、
その他にそれぞれのスーツケースを含めた荷物は計6個。 
アメリカ線では、一人2個まで荷物を預けることができるため、個数の上では別段問題ないのだけれど、
どう見ても「買出しに行って帰ってきた中国人家族」にしか見えない荷物の量なのだ。 
さり気なく「JAPAN」のパスポートをチラつかせ、
「私たちは日本人だよー」と無言の訴えをしていたメーコだったが、やっぱりチェックされちゃった。 
しかも、これまた予想通り、
「食料品屋」のママのカバンと、
「富山の薬売り」のパパのカバンを調べられ、メーコ、説明に汗だく。 
公私合わせて、今までに何十回ってアメリカに来てるけど、
入国と税関審査で1時間半もかかったのなんて初めてだぞーーー!! 

デトロイトからオーランドまでは2時間ちょい。
夕方の4時半に成田を出発してから延々17時間、夜の8時過ぎにようやくオーランドに到着した。 
・・・いつものことながら、遠かった・・・。 
そして、いつもの3倍くらい疲れたぞ・・・。 
でもま、無事に到着したことだし、
パパたちも長い移動で疲れてることだろうから、今日は早めに休んでもらいましょ。
メーコももう、グッタリだもんねー。 
が、しかし、メーコは「最後の難関」をすっかり忘れていた。
ダーリンの家は3階立ての3階。 
そして、「エレベーター」は付いてない。 
「未来の義理の親」に重たい荷物を運ばさせるワケにもいかず、
「買出しに行って帰ってきた中国人家族」並みの荷物を抱えて階段を上がるメーコにとって、
成田〜オーランドよりも、1階〜3階の方が遥かに遠く感じられたことは言うまでもない・・・。 
そして、心底グッタリして部屋に入ったメーコに向かって、
「メーちゃん、疲れてるのに悪いけどさ、水一杯くれるか、水」と叫んだパパに対し、
「睡眠薬も飲ませよう」と真剣に考えてしまったのも紛れもないジジツである。

・・・メーコの苦悩は、まだまだ続く・・



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素材はアンの小箱さんからいただきました