マイアミ・キーウエスト

滞在4日目。 せっかく「遠いアメリカ」まで足を運んでもらったのだから、と、
ダーリンが休みを取って、2泊3日でマイアミとキーウエストを案内してくれることになった。

オーランドからマイアミまでは230マイル(約370km)。 
「フロリダ・ターンパイク」なる有料の高速道路を使って、約3時間の道のりである。 
ちなみに、「ターンパイク」に並行して「州道95号線(I-95)」なる道も走っており、こちらは無料。 
でも、車線も少ないし制限速度も遅いから、ターンパイクの方が断然便利なのだ。 
それに、いくら「有料」と言っても、
オーランドからマイアミまでの料金は僅か10ドル90セント(約1300円)しかかからない。 
さすが、「自動車王国」。 
練馬から前橋までの100km弱で、2750円も取られる日本とは比べものにならない安さである。 
・・・ちったー見習えよー、道路公団〜。

初日は、マイアミでお昼ご飯を食べてから、一気にキーウエストまで走ってしまう予定。
「9時に出れば十分ですから」と、前日話をしたにもかかわらず、
パパとママは朝早くからそわそわモード。 
逸る気持ちを抑えきれないのは分かるけど、
そんなパパに「足を踏んづけて」起こされたダーリンは超不機嫌。 
何とか宥めて荷造りを済ませ、ダーリンの愛車、「ムスタング・コブラ」に乗り込んでいざ出発!! 
・・・のハズだったんだけど、これまたパパが、ダーリンの大嫌いな「ドアのバッタン!!
閉め」をしちゃったもんだから、またまた不機嫌になっちゃった・・・。  
何か、イヤ〜な雲行きだぞー・・・。

マイアミ市内に入ったのは12時チョット過ぎ。 
アメリカの「海の玄関」とも言われ、
世界でも1、2を争う豪華客船の発着港ともなっているマイアミ港には、
週末になると決まって大型クルーズ船が停泊する。 
「ホラ、一番手前に泊まっているのが世界最大の客船、11万トンの“ディスティニー号”。 
その後ろが7万トンの“ファンタジー”。 
それから、一番後ろに泊まってているのは、世界初の禁煙船、“パラダイス”ですよ」と、
パパたちに説明するダーリンは、何を隠そうオーランドに来るまでの6年間、
このマイアミ仕事をしていた「元ガイド」。 
さすがである。 
メーコなんて、「あれは船ですよ〜」としか言えないもんねーと、
カンドーしていた矢先に、パパの声が轟いた。
「おい! マサル! あの船はやたらデッカイが一体何万トンくらいあるんだ??」
「・・・・・。」 
ダーリン、無言。
黙ったまま、車を「アール・デコ地区」へと走らせる。

「アール・デコ地区」は、1900年代の初め、当時フランスで流行していた建築様式、
「アール・デコ様式(=直線を生かした設計)」で建てられた建物が800以上も残されている地区である。 
市の条例により、外観はそのままで保存され、
中だけ手直ししてお洒落なカフェやホテルに使われているこの一帯は、
マイアミの中でも最も賑やかな場所。 
「・・・この一帯が、“アール・デコ地区”ですよ。 ほら、全部直線的に作られてるでしょ? 
それから、壁の色がみんなとってもカラフルでしょ? 
これもね、アール・デコ様式の特徴なんですよ」と、
ようやく口を開いてくれたダーリンではあったが、
次の瞬間またまたパパが、
「で、マサル! “アール・デコ”っつーのはどれだ??」と聞いた途端にまたまた無言。 
重苦しい空気が漂う車は、さらに「サウスビーチ」へと向かう・・・。

「サウスビーチ」に沿って走る「オーシャンドライブ」は、マイアミの目抜き通りだけあっていつも渋滞。 
車をノロノロ走らせながら、「ホラ、あそこが有名な“NEWS CAFE”。 
それから、その先が”ベルサーチ・ハウス”ですよ。 知ってるでしょ?ベルサーチ。 
有名なデザイナーで、家の前で撃たれて死んじゃった人。」と、
一応説明しているダーリンではあるが、その口調からは「怒り」に近いものが感じられる・・・。 
お願い、パパ。 もうこれ以上何も言わないでね・・・と、必死に祈ったメーコではあったが、
真横で話している説明すら聞いてないパパに、メーコの「心の叫び」が聞こえるハズはなかった。
「う〜ん。 何かなぁ、マサル! ここはさしずめ“別府温泉”っつーカンジだなー!!」
・・・・やっちった・・・・。

市内のレストランで食事を取り、
その後「セブンマイルブリッジ」に差し掛かるまでの2時間弱、
ダーリンは一言も話さなかった・・・。 
とは言え、そこはやっぱり「元ガイド」。 
セブンマイルブリッジでは詳しい説明に熱が入る。
「これから車で渡るのは一番新しい橋。 
今、立っているのは二番目に作られた橋ですよ。
ほら、ここを見て下さい。 
鉄道の線路が手すりに使われてるでしょ? 
新しい橋に作り変える時に、昔使っていた鉄道の線路を手すりに利用したんですよ。 
この後橋を渡っていくと、一番最初に作られた橋も見えてきますからね。 
さ、写真を撮ったら行きますよ」
再び車に乗り込み、全長7マイル、約11キロの橋を渡る。 
ちなみにこの橋は、アーノルド・シュワルツェネッガーが主演した映画、
「トゥルーライズ」にも使われている。 
そんな話をしているうちに、「一番最初に作られた橋」が見えてきた。 
「ほら、あそこに見えてるのが一番最初に作られた部分ですよ。 分かりますか?」 と、
尋ねたダーリンにパパは言った。
「う〜ん、さしずめアレだな、マサル! この橋は、昔電車か何かを走らすために作ったんだな!」
・・・・ここまでくると、スゴイ・・・・。

その夜、モーテルの部屋でダーリンが呟いた。
「もし、俺がガイドをしている時にあの二人がお客さんで来たら、俺は絶対に口をききませんね」。   
う〜ん、メーコも同感。 
でも、もしかしたら、パパは「耳掃除」ができてないだけかもしれないから、
来年の父の日には「電気耳掻き」をプレゼントしてあげよう! 
そしたらきっと、ちゃ〜んと話も聞いてくれるよ。
・・・んなワケ、ないか・・・。
「・・・あと何日で帰るんだっけ・・・」
いつからか、これがメーコとダーリンの合言葉になってしまった・・・。

パパたちの帰国まであと5日。 まだまだ先は長い・・・。 

                                        つづく




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