狼男
怪談百物語  

        




                         狼男 「怪談百物語」
スーパー時代劇 『怪談百物語』 フジテレビ系 ※TVオンエアーされたものをチェックしています。
「狼男」   第6話 2002年10月29日放送  演出:河毛俊作、脚本:三宅隆太


<キャスト>
正吉・・・・・・・・・・・・・・窪塚洋介   鍛冶職人、やさしいが気の弱いところのある青年
                       親方の娘、お袖とは内心好きあっている


蘆屋道三・・・・・・・・・・竹中直人   平安時代の陰陽師・蘆屋道満の末裔
                       ちょっとインチキくさいところがある


お袖・・・・・・・・・・・・・・水川あさみ   正吉の親方、善吉の娘
                        お袖も正吉に内心好意を持っている


伊勢屋喜左衛門・・・・奥田瑛二   米問屋の主人。正吉を幼い頃から可愛がっている
                        が、その正体は・・・


善吉・・・・・・・・・・・・・・平田満      鍛冶職人で正吉の親方。お袖の父


小夜・・・・・・・・・・・・・大村彩子    道三の娘

セリフチェック:アリス
OnllyOne! TVオンエア−チェック

 <物語>
鍛冶職人の正吉は、心根はやさしいが気の弱い青年だ。
親方の善吉は、仕事の腕は確かだが内気なところのある正吉に、今ひとつ物足りなさを感じている。そして親方の一人娘のお袖とは互いに憎からず思っている仲だったが・・・。
その頃、江戸では強盗に一家が惨殺されるという事件が相次いでいた。そんなある夜、正吉は悪夢にうなされて目覚める。その悪夢とは、織田信長が本能寺の変での最後を遂げるという烈火の中に消えてゆく場面・・・。倒れた信長の腕から、腕輪が蛇のようにするりと外れていく・・・。
同じ頃、お袖の幼馴染のお稲も奉公先に強盗が入り、皆殺しにされていた。
酒問屋
 
お稲達の亡骸が運び出されようとしているのを 見守っているお袖と善吉達。
そこへ駆けつけて来た正吉も 手を合わせて冥福を祈る。


善吉    さあ仕事がたまってるぞ。
正吉      へえ。
お袖    正ちゃん。
正吉      お嬢さん。
お袖    お稲ちゃん、まるで眠ってるみたいだった。


そう言って悲しそうに去って行くお袖の背中をただ見守る事しか出来ない正吉だった。


正吉が、町のならず者にからまれている困っているところを 米問屋の伊勢屋喜左衛門が
通りがかって助けてくれる。正吉は、伊勢屋にとても可愛がってもらっていた。伊勢屋は、
正吉を家に連れて帰り、傷の手当てをして、「お袖に何か買ってやれ」と小遣いまでくれるの
だった。

鍛冶屋

お袖    私なら もう大丈夫。
       いつまでもくよくよしてたらお稲ちゃんに笑われるもんね。
善吉    どこで油を売ってやがったんだ。
       さっさと仕事に戻りな。
正吉      すいません。
お袖    気にしないでね。
正吉      いいんですよ、お嬢さん。
お袖    だから止めてって言ってるでしょ。
正吉      何をです、お嬢さん。
お袖    その呼び方。
正吉      はぁ。
お袖    昔はお袖ちゃんて呼んでくれてたじゃない。
正吉      あれはガキの頃のことですし。
善吉    何べんも言わせるな。
       遊んでねぇで、仕事しろ、仕事を。
正吉      へい。

そう言って仕事に取り掛かろうとした正吉の目に 仕事場の隅に置かれていた鎧が目に入る。

正吉     親方・・・
善吉   ああ
正吉     この鎧は。
善吉   なんでも 織田信長候の鎧らしい。修理を頼まれてな。

上野の市

数日後、上野の市で正吉は伊勢屋からもらった小遣いで、お袖のためにかんざしを買う。
その帰り道に、同じ市で陰陽師の道三に呼び止められる。

道三    お主、くっきりと女難の相が出ておるの。
       拙者が払って進ぜよう。こっちへ来い。
正吉     いえ、結構です。
道三    ほお〜いいかんざしじゃないか。
そう言って、正吉が手に持っていたかんざしを取り上げて行ってしまう。
正吉     ちょっと。(道三を追いかけて陰陽師の占い場へ来る。)
        返してくれ。
小夜     いらっしゃい。
道三     悩み事や願い事の一つや二つはあるだろ。
        まじないで解決して進ぜよう。
        な、ほれ(正吉にかんざしを返す)
        よし! あ〜ぁ。
        さあ、なんでもいい、言ってみろ。
        どうした。何だよ。はっきりしない男だな。
        何かあんだろ。言ってみろよ。
正吉     つ、強くなりたい。
道三     えっ?聞こえない。
正吉     強くなりたい。
道三    ほう・・・強くなってどうする。
正吉     今よりもっと、俺に 力や勇気があれば・・・。
         これ以上悲しい顔させずに済む。それに・・・

道三     それに何だ。
正吉      お稲ちゃんを殺した連中をこの手で・・・。
道三    何があったか知らんが、お主がそれを望むならもっともっと
       おのれを鍛えねばならん。心身ともにな。
正吉      はあ。
道三    強さの裏には必ず犠牲がつきものだ。
       苦しみや悲しみを乗り越えてこそ、人間は真の強さを
       得ることができるんだ。
正吉     はあ。
小夜    へえ、おとっつあんもたまにはいい事言うのね。
道三    三百文だ。
小夜    おとっつあん?
正吉      高過ぎだ。第一まじないしてないじゃないか。
道三    いやいや、お前にはまじない必要ない。
       説教料だ。なっ、三百文。
       (大きな声で)三百文。なっ。
       (正吉の財布を広げて)なんだこれしかないのか。
       残りはつけにして進ぜよう。
       ありがたい話であった〜(と正吉に向かってお辞儀をする)
正吉     ええっ!

その帰り道、正吉が一人で神社の石段を降りてくると、突然つむじ風が巻き起こり、蛇の
細工が施された銀の腕輪が空から降りて来る。その腕輪を家に持ち帰り、飽かず眺めて
いた正吉だったが、ふと興味を持って、腕輪に腕を通してみる。すると突然、腕輪が正吉
の腕にぴったりと巻きついてしまう。苦しみもがき始める正吉。その手からは長い爪が伸び、
口は裂け、牙が生え、全身が銀色の毛で覆われて・・・ついに正吉は狼に変身する。
外には満月が煌々と輝いていた。・・・

伊勢屋といっしょに女遊びをしていた仲間の一人、矢平が帰り道、突然何者かに襲われる。
一夜明けて、草むらの中に倒れていた正吉が目覚めると、その手は身に覚えのない血で
汚れているのだった。驚いて立ち上がった正吉は、頭に割れるような痛みを感じる。そして
その手には蛇細工の銀の腕輪が・・・・。もしかして自分には得体の知れない力が備わった
のではないかと思い、木に思いっきり拳をぶつけて力を試してみる正吉だったが・・・。
その頃、矢平の死体も発見されて町は大騒ぎになっていた。そしてその体には、獣の爪か
何かで引っかいたような深い大きな傷痕が何本も残っていた。

池のほとり

釣り糸を垂れてる伊勢屋のところへ相談に行く正吉。

伊勢屋   でどうした?
正吉     それがどうにも・・・おかしいというか。自分が自分で無くなって行くような。
伊勢屋   ああ、人間なんてそんなもんじゃないのか。
       誰だって自分のことなんか わかっちゃおらん。
       わかったような気がしているだけだ。まして人の事なんかなおさらだ。
正吉     はあ。
伊勢屋   おい、やれ。(釣りを正吉に勧める)
正吉     いえ、そろそろ戻らないと親方が。
伊勢屋   何を言ってるんだ。少しならいいだろう、おい。
       ほら、昔のように付きあえ。
仕方なく釣りを始める正吉
伊勢屋   それはそうと、聞いたか。
正吉     何をです。
伊勢屋   夕べな、岡場所のはずれでやくざ者が一人殺された。
正吉     まさかまたあの盗賊。
伊勢屋   (かかった魚を釣り上げながら)その逆だ。
       やられたのはその盗賊の一味だ。
正吉     ほんとですか。
伊勢屋   ああ、やったのはどうも人間じゃないらしい。
正吉     といいますと・・・。
伊勢屋    獣(けだもの)だ。
正吉       獣?
伊勢屋    ああ、何でもな。爪で引っかいたような深い傷がかっきりとあったらしい。
        山犬か何だか知らないが、へへ・・・分るのかねぇ。悪い奴っていうのは。
正吉      あ・・・。

今朝、自分の指や爪に血がこびりついていた事を思い出し動揺する正吉に。

伊勢屋   あせるな、正吉。じっとしてれば獲物は動く。
        獲物の方から近づいてくる。そういうものだ。

盗賊達の隠れ家

仲間の矢平が残忍な殺され方をした事で、盗賊達が集まっている。
そこへ首領として現れたのは・・・裏の顔を持つ伊勢屋だった。

鍛冶屋

お袖   (正吉にもらったかんざしをつけて)どう、正ちゃん。

気づかずにぼんやり座ったままの正吉。

お袖   正ちゃん。
正吉   (びっくりして振り返り) はい。
お袖   はいじゃないわよ。
正吉    すいません。何ですか。
お袖   もういい。なによ、せっかくつけたのに。
正吉    すいません、お嬢さん。
お袖   (正吉の腕輪に気づき)どうしたの、それ。
正吉   (腕輪を隠して 後ずさりながら)あ、いえ、別に何も・・・
お袖   ちょっと隠さなくてもいいじゃない。
      (土間に下り立ち)何なの、見せてよ。
      お守りか何か。
正吉     まあ・・・何というか・・・。
       お嬢さん。
お袖   ん。
正吉    もしも・・・もしも俺が俺じゃなくなったら、どうしますか。
お袖   え、 何言ってるの。ふふ、正ちゃんは正ちゃんじゃない。

何かいいたそうな正吉だったが、突然頭を抱えて座り込む。
少しずつ狼に変身し始める正吉。

お袖   (心配そうに)正ちゃん・・・正ちゃん。
      どうしたの、大丈夫?正ちゃん・・・。

突然正吉が立ち上がり、苦しそうにうなりながらお袖に抱きつく。

お袖   (戸惑いながら) 何よ、急に・・・。

仕事場を飛び出す庄吉

お袖   正ちゃん。
正吉    来るな!(と叫んで闇の中に消えて行く)

民家

盗賊の一味の佐助と次郎平衛が強盗に入ろうとしていると、突然、次郎平衛が何者かに殺さ
れる。難を逃れた佐助が、血の滴り落ちてきた屋根の方を見上げると、そこには両手が血だ
らけの正吉の姿が・・・!。それを見て驚いて逃げる佐吉。

正吉   (屋根の上で腕輪をはずそうとする。)何だよ、これ・・・何なんだよ、これ。
      これ・・・これのせいだ。これのせいだ〜。
        痛〜、痛い。
(腕輪をはずそうとするが・・・やはり腕輪は外れない。)

盗賊の隠れ家

佐吉は仲間のところへ戻って、首領の伊勢屋に正吉の事を話すが・・・逆に逆上した伊勢屋に
殺されてしまう。

道三の家

腕輪の取れない正吉が 道三のところを尋ねて来る。

正吉    すいません・・・すいません。
道三  誰だ、おっ、お前か。 どうした。つけ払いに来たのか。
正吉   この腕輪をはずしてほしい。
道三  なんだよ。そんな事頼みに来たのかよ。
     そんな事、自分でやってよ。俺は忙しいんだよ。
正吉   お願いします。

ふたりで必死に腕輪をはずそうといろいろ試みるが、まったくはずれない。
そこへ娘の小夜が帰って来て、いとも簡単にはずしてしまう。
古い文献で、銀の腕輪のいわれを調べ始める道三。

その文献には・・・・
『これ元より遥か遠き異国に生まれしものにて、その手にするを許されるは選ばれし者なり。
これ、ひとたびはめるや、はなはだ獣のごとく強大な力を得る。選ばれし者、その力を用い
て今生の悪事を裁こうとする運命なり。
しかしこれ常に危うき調和の上に成り立つものにて存分に心すべし。
すなわちこれこころ正しき者用いりし時、光となるもの。悪しき者手にすれば、すべてを闇と
変え今生を破滅に導くは、畢竟なりと。』
と書いてあり、銀の腕輪や見た事もない獣の絵が描かれていた。

道三   とまあ、いろいろ記してあるが、お主はすでに選ばれてしまった
      という事じゃないのか。
正吉     選ばれた・・・冗談じゃない。俺はただの鍛冶屋ですよ。
        そんな大それた筋違いの運命背負わされるいわれはないでしょ。

道三   それはそうだけどよ。でもなあ、今生の悪事を裁くなんてよ、
      お前なかなかかっこいい運命じゃないか。
正吉    そもそも何で俺なんだ。どうして俺がそんな大役に選ばれなきゃ
        いけないんですか。

道三   そりゃあ、あたしだって知らないよ。
      でもよ〜、お主は力がほしいって望んでたじゃないか。
正吉     まあ・・・。
道三   ちゃんとここに書いてあるぞ。
      力を求めし者、これその意志を試さん・・・・とな。 
      あれ、お前腕輪はずしちまったんだよな。
      じゃあ、お前もうその運命背負う必要ねえって事じゃねえか。
正吉    そうだ。
道三   なんだ、 ちょっと勿体ないって気はするがな。
      小夜、お前がはずしたからいけないんだぞ。
      こら、だめじゃないか、まったく。ははは・・・。

神社

正吉は、ようやくはずれた腕輪を持って神社に行き、金槌でこなごなに割ってしまう。

鍛冶屋

飛び出したまま戻らない正吉を、お袖が心配している。すると表に人の気配が。てっきり正吉
が戻って来たと安心するお袖と善吉だったが、そこに立っていたのは伊勢屋と手下の者達だ
った。正吉がお袖にどう謝ろうかと思案しながら帰って来ると、家の入り口のところに善吉が
倒れている。
正吉が駆けつけると、「伊勢屋にやられた」と言い、連れ去られたお袖を頼むと言い残して息
絶える。後にはお袖のかんざしで止められた手紙が残されていた。放心状態のまま、腕輪を
捨てた神社に戻る正吉。

神社

正吉   (砕け散った腕輪の前で)受け入れるよ・・・受け入れるよ。
      受け入れるよ。  受け入れるって言ってるだろうが。
      運命だろうと何だろうと全部、受け入れてやるよ。全部だ、全部。
      犠牲がつきものなら、払ってやるよ。
      何だって払ってやるよ。何払えばいいんだよ。
      どうすりゃいいんだよ、俺は〜。 頼むよ、力くれよ。


絶望的な心境で嘆き叫ぶ正吉の前で、こなごなに砕け散っていた腕輪が不思議な呪文と共
に、再び元通りになる。
腕輪を手にはめ、夜の月明かりの中をお袖の元へとひた走る正吉。
その姿は徐々に狼男へと変身して行くのだった。・・・


お袖が捕らえられているのは人気のない寺。そこには、伊勢屋とその一味の者が待ち構えて
いた。狼男になった正吉は、次々と見張りの者達を殺して行く。ついにはお堂の中に、伊勢屋
本人とさらわれて来たお袖だけとなる。うなりながら正吉がお堂に足を踏み入れると、そこに
は(四肢を)梁から吊り下げられたお袖の姿が。そしてその下には、幾本もの刀がお袖に向
かってそそり立っていた。
正吉が狼男になったのを知って驚くお袖だったが、その表情を見て・・・正吉に変わりはない
事を知る。だがお袖を助けようにも、銃を持っている伊勢屋の前では無力の正吉だった。そん
な正吉に、お袖は自分の身も顧みず「正ちゃん、逃げて。」と叫ぶ。その時、伊勢屋の撃った
銃が正吉に命中する。もがき苦しむ狼男正吉の目からひとしずくの涙がこぼれ落ちる。
続けて撃った伊勢屋の銃が、お袖を吊り下げていた(最後の)縄を切ってしまう。そそり立つ刀
の上に落ちてゆくお袖。命をかけて守る正吉。
そしてついに伊勢屋も、自ら仕掛けた刀に突き刺さってしまう。お袖と狼男の姿をした正吉の二
人だけになる。

正吉    これが・・・おれです。もう正吉じゃない。
お袖   (正吉の頬に触れながら)それでも・・・。

その時、最後の力を振り絞って、伊勢屋がお袖を背後から撃つ。
崩れ落ちるように倒れるお袖。怒りに満ちた正吉が伊勢屋に襲い掛かる。

伊勢屋  よく見ろ。これがお前のした事だ。結局お前は 誰も救えなかった。
       そして・・・お前・・・自身もな・・・。
正吉     化け物はお前だ。

息絶える伊勢屋

お袖    それでも正ちゃんは正ちゃんよ。

そう言って微笑みながら正吉の腕の中で息絶える。
すべてを失った正吉は、お袖を抱きかかえて月明かりの中に消えて行く・・・・。

山里

あくる日、人里離れた山の中に正吉はお袖と善吉の墓を作る。
お袖の墓に思い出のかんざしをそっと供える正吉。
そこへ道三がやって来て、二人の墓に手を合わせる。
正吉は無言で立ち去り、まるで狼のように竹やぶの中に走り去って行く・・・。

エンドロール

数日後・・・市で

(一瞬、青く光る狼男の正吉の目がフラッシュではいる)
後日、市でいつものように呼び込みをしている道三と小夜。
彼らの前を、少し逞しくなったように見える正吉が通り過ぎて行く。
おわり   




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