少年Hタイトル画像
開局40周年記念
平成11年度文化庁芸術祭参加作品

◆原 作 妹尾 河童  「少年H」講談社刊 ◆脚 本 竹山 洋
◆制 作 フジテレビ第1製作部 参考 ◆放送日  ’99.11.5

◆キャスト◆
妹尾 盛夫役 中井 喜一 妹尾 肇役(現在) 津川 雅彦
妹尾 敏子役 桃井 かおり 妹尾 肇役(H、子供時代) 久野 雅弘
山本 新造役 陣内 孝則 山本 勝造役(子供時代) 加藤 祐輝
小林 繁夫役 吉岡 秀隆 鈴木 信介役 大高 洋太
花房 恵三郎役 窪塚 洋介 山崎先生役 小市慢太郎
金田 正之役 杉本 哲太 花房 タツ役 岩崎加根子
山本 勝造(現在) 田中 邦衛 髭ヅラの先生役 佐川 満男

花房 恵三郎:通称“オトコ姉ちゃん”
以下この通称名で表記します。

ライン

「少年H」上巻より、オトコ姉ちゃんの想い出のシーンです。
この作品のすばらしさはさることながら、
洋介君演じる“オトコ姉ちゃん”の感動を、今も忘れることが出来ません。
こんなにステキな笑顔の、こんなにステキな役者さんがいるんだ、
この作品でファンならずともそう思った人は、本当に多いことと思います。
未だに、再放送やビデオ化の要望の多い作品です。
(あらすじは、上の参考の所で、チェックしてみてくださいね。)
全てを網羅してなくてごめんなさい。耳コピしたものなので、所々わからないところがあったり
不完全なところがあったりですが、いっしょにあの感動のシーンを思い出してみませんか?

ぜひ再放送、そしてビデオ化されることを心から祈る気持ちで
ここにUPしました。


ライン

 少年Hのうちの近所に、皆から“オトコ姉ちゃん”と呼ばれる青年が、歳とった母と住んでいました。なんでも、ここに来るまでオトコ姉ちゃんは、旅の一座で女形をやっていて、歳とったお母さんが病に伏せ、この町に移り住んだそうです。ある日、南京陥落の祝賀行列のあと、町の演芸会でお化粧をして女の着物を着て踊ったその姿が、他の女の人の誰よりもとても綺麗だった・・・そんな“オトコ姉ちゃん”でした。

オトコ姉ちゃん画像


 オトコ姉ちゃんは、ある映画館に勤めていました。そこへ、映画の大好きだった少年Hが、映画館へ行った時のシーンです。映写室から、テキパキと働く声のオトコ姉ちゃんの声がしていました。・・・
   
少年H 「オトコ姉ちゃん、ここで働いてたん。」
オトコ姉ちゃん 「そうや。」
少年H 「ちょっとやらせてんか。」
オトコ姉ちゃん 「これは仕事やで。」
少年H 「ちょっとだけや、ちょっとだけや。」
オトコ姉ちゃん 「しゃーないな。僕が“はい”って言ったら、このスイッチを入れて。他、触ったらあかんで。」
〜緊張する少年H〜
「緊張しなくてもええから。・・・さあ、映画が始まるよ。5・4・3・2・1・はいっ。」
フイルムが回りはじめた。暗闇から一筋の光がスクリーンを照らしました。
少年H 語り:感動した。・・・僕が映画、つくったみたいや。まるで、夢みたいや。
オトコ姉ちゃん 「そうや、映画は夢や。」
「いつでも好きな時においで。ただで見せてあげる。」
少年H 「ほんまか?約束やで。“♪ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。ゆびきった♪”

区切り

 オトコ姉ちゃんが、いつも近所の少年たちに“オトコ姉ちゃん”とからかわれている事に、バラケツ(やくざ)の新造(陣内孝則)に路地裏でどつかれるシーン
新造 「ちんちん見したれや!!男やろ、われっ、ガキがお前のこと、何と言うてるか知ってるか!?」
オトコ姉ちゃん 「オトコ姉ちゃんでしょ?。いいよ、なんて思われたって。」
新造 「あほんだら!!男が“姉ちゃん”言われてくやしいないんか!!俺は男やて、ばーんと、ぶらさがっとるもん見したれ!ほら!」

区切り

 
 そんな“オトコ姉ちゃん”だったから、子ども達は興味深々でした。銭湯でもいつもオトコ姉ちゃんはしっかり手ぬぐいで前を隠していたので尚のこと。そんな折、近所の悪ガキと少年Hは、銭湯で確かめてみようと、かき氷一杯を賭け、手拭を剥がそうということになったんです。
 銭湯に悪ガキと少年Hが入っているところに、オトコ姉ちゃんが入ってくるシーンから。

オトコ姉ちゃん 「あらこんにちわ」
悪ガキ達 「こんにちわ」
オトコ姉ちゃん 「みんな、仲良しやねえ。よう焼けてるな。毎日海へ行ってるの?。」
少年H 「たまにゃ・・・。」
〜そこへ、バラケツの新造が入ってくる。〜
新造 (ナハ歌♪)「ぉおう!おう!ぼー達も来とったんか。」
少年ら、返事の意味合いで苦笑い
新造 「声が小さい!」
悪ガキ (小声で悪ガキ「お前が早く言わんからや」)
〜さんざんどつかれた少年Hは、様子をうかがい、オトコ姉ちゃんの手拭を一気に抜き取る。〜
少年H 「めしとたで!」
悪ガキ 「でかい」
少年H
悪ガキ達
「大きい、大きい。大き・・・」と皆ではやし立てていると新造がいきなり少年Hを張り倒した。
びっくりして泣き出しそうな少年H。
新造 「弱いもんいじめするんは、日本男児やないっ!!よう覚えとけ!男は、弱いもんいじめたらあかんのや。」
そう言って新造は、オトコ姉ちゃんに手拭を渡し肩をポンとたたいて、出ていった。
泣き出してしまった少年H
少年H 「姉ちゃん、かんにんして・・・。」
オトコ姉ちゃん 「気にせんでええ、気にせんでええから。泣かんといて、Hくん。ばあ」

区切り

 少年Hは、そんなオトコ姉ちゃんが好きでした。たびたび映画館へ通っては、映画をこっそり見せてもらったり、フィルムの切れ端をもらったり。そんなシーンから・・・。


オトコ姉ちゃん 「へえ、すごいね、エルサレムか。まるで「出エジプト記」の再現ね。
ユダヤの人達は信じてるんや。またいつか、モーゼの奇跡が起こることを・・・・。」
少年H 「なんや?それ。」
オトコ姉ちゃん 「ん?モーゼって言う人がいてな。その人が杖をかざすとな、海が真っ二つに割れるんや・・・。」
少年H 「へえ。」

区切り

 町の演芸会でオトコ姉ちゃんが女形の舞台を演じていた時、少年Hの友だち勝造の父(バラケツの新造)がやくざの争いで切られ、勝造を父(新造)が帰ってくるまで、オトコ姉ちゃんが預かっていました。そんなシーンから。映画館の映写室で。


オトコ姉ちゃん 「新造が戻ってくるまで、僕が親が親代わりなんやから。」
勝造 「ふん、父ちゃんか母ちゃんか分からんようなんか、いらんわ。」
少年H 「オトコ母ちゃんでええやん。」
勝造 「何やて!」
オトコ姉ちゃん 「けんかしないの。・・・ちょっと待ってて。ええもんあげる。」
「あった。(勝造に向って)あんたの父ちゃんの好きだった“人情紙風船”のフィルムよ。(Hに向って)こっちはH君の好きな“李こう蘭”。仲ようしたらあげる。」
勝造 「いらん!」
少年H 「ぼくもいらん!」
オトコ姉ちゃん 「そっ?、ざーんねん。」
二人 「ああーーーっ」
オトコ姉ちゃん 「仲ようする?」
少年H 「そっちが謝ればいい。」
勝造 「なんでや!」
オトコ姉ちゃん 「いらんのね。じゃ・・・」オトコ姉ちゃんは、わざとお互いに違う方のフィルムを渡す。
少年H 「時代劇や・・・。」
勝造 「李香蘭や・・・。」
オトコ姉ちゃん 「あら!?交換しないとっ。さっ?・・はい、なんかゆうて?」
少年H 「・・・よろしくな・・・・。」
勝造 「・・・ああ、よろしくや・・・。」

区切り

 少年Hが四年生になったばかりの春、とうとうオトコ姉ちゃんのところにも“召集令状”が届いてしまいました。オトコ姉ちゃんはご近所への最後の挨拶を済ませてから、夜、Hに映画館までひとりで来てと言ったのでした。そして夜、その映画館で・・・。

オトコ姉ちゃん 「よう来てくれた。・・・見せたい映画があるんや、ちょっと待ってて。」
H語り:それは“風の又三郎”だった。
オトコ姉ちゃん 「Hくん、・・・“風の又三郎”って、誰が書いたか知ってる?」
少年H 「宮沢賢治やろ?」
オトコ姉ちゃん 「さすが。・・・」
「宮沢賢治、大好きなの。・・・知ってる?この詩。」
 
 雨にも負けず、
 風にも負けず、
 雪にも、
 夏の暑さにも負けぬ、
丈夫な体を持ち
 欲はなく、
 決して怒らず、・・・
 いつも静かに笑っている・・・

 そういうものに、
 私はなりたい・・・。
「はい・・・」
「子供のように、純真な心を持っているから、賢治はすばらしい詩が書けるんや。・・・君も、・・・いつまでも、純真で、無垢な心を持っていてくれることを祈る。・・・」
少年H 「お母ちゃんは、どうするんや?」
オトコ姉ちゃん 「・・・・・」「映画は夢や・・・。」
少年H 「生きて、かえってや」
オトコ姉ちゃん 「うん」
少年H 「弾に当たらんように、気をつけてや。」
「白木の箱になんか、入って帰ってきたらあかんで。手柄なんかたてんでいいから、故国の盾になんかならんで、出征の挨拶もせんでええ。弾に当たりやすいんやて。豆腐やのおばちゃんがゆうとった。」
オトコ姉ちゃん 「わかった。」
少年H 「なあ、約束や。・・・♪ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。ゆびきった♪」
「軍隊に行っても、姉ちゃんは大丈夫や。芝居、うまいから、きっと皆にかわいがられる。」(H心のつぶやき:本当は、いじめられるやろうと思った)

区切り

 いよいよ、オトコ姉ちゃんの出征に日が来てしまいました。駅のホームで見送られるシーンです。
町の人達に見送られ・・・


小父さん 「花房恵三郎君の出征を祝って、ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい。」
「どうぞ」
オトコ姉ちゃん
(花房恵三郎)
「待ちに待った、召集令状がきました。(Hつぶやき:あかん、ゆうたら、あかん)天皇陛下の兵士として召されることは、日本男児の本懐とするところであります。兵国軍人として、生還はきさず、立派に戦って参ります。では、行ってまいります。」
小父さん (あまりの立派な挨拶にびっくりして)、「花房恵三郎君、ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい。」
少年H H語り:オトコ姉ちゃんはきっと、お母ちゃんの面倒を頼みますと、言いたかったんやろう。
少年Hと勝造は、列車の進む方へ走り出した。
少年H
勝造
H語り:姉ちゃん、死んだらあかん、死んだらあかん、死んだらあかんで。
「オトコ姉ちゃーん、おーい、」
それを見つけたオトコ姉ちゃんは、列車の窓から見を乗り出しました。手を振り、・・・そして敬礼・・・。

区切り

 その後、やはり軍隊という所に行くには、あまりにも彼にとって辛いことだったのでしょう。脱走兵として追われる身となり、・・・ある日、少年Hは、彼の首をつった姿を発見してしまうのです。脱走兵として、彼は、鷹取の海で荼毘にふされました。少年Hの父は「ここで、死にたかったんやろう。お母ちゃんの傍で。」と。

区切り
涙が、
・・・・止まりませんでした。



こんなすばらしい演技を見せてくれた彼に、
私のつたない感想など述べるまでもないような気がします。

心から、
ありがとうの言葉を
送ります。

今でも、あのオトコ姉ちゃんは、
わたし達の心の中で

静かに微笑んで・・・・

確かに
生きているのですから。

この作品を、ぜひ、もっと多くの人に
見てもらいたい。
そう思ってやみません。
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区切り
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