REMNANT


海から風が吹いている 風と共に砂が吹き込んで来る

砂が枯れ草と共に、崩れた壁の周囲に積もって行く

足の下で薄い貝殻が砕け 砂に似た形に散って行く

ここには誰もいない 誰の声も聞こえない

それでも 誰かを待ち続けている

どこか遠くの方から 鳥の鳴く声がする

甲高い叫び声のような かつて僕の口から漏れた叫びに似ている

誰もいない 誰も見る事の無い絵が壁に架かっている

誰もいない 誰も触れる事の無い花の香りがする

そして この残骸の中で

誰も触れる事の無い 僕自身の肉体が打ち捨てられている

海から風が吹いている 時折 強い風が吹く