PC18禁 <特別編>

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○ 「FifteenHounds -フィフティーンハウンズ-」



「FifteenHounds -フィフティーンハウンズ-」

(ブランド) MUYM(Make Up Your Mind)
(ジャンル) ノベルタイプバトルADV
(発売日) 2010年2月26日
(スタッフ) 企画・脚本=森廣達哉。原画・彩色=kaiga、鍋焼き猫、加画都、吉岡よしこ、水月、ハル。音楽=M@SATOSHI。歌=ALICE。ムービー=東海道中肘栗毛、tukuyo。
(声優) なし。
(システム) 対応OS=Windows2000/XP/Vista。HDD容量=1GB以上。画面解像度=800×600。バックグラウンド動作可能。ディスクレスプレイ可能。マウスホイールテキスト読み進め不可。セーブコメント記入不可。最新セーブデータに「NEW」表示なし。シーン回想・エンディング回想なし。定価=3000円。全年齢対象。修正ファイルあり。
(ランク) Aクラス
(付記) エロゲーレビューサイトであるウチがこの作品を取り上げる事になったのには、サークル代表の森廣達哉氏からのレビュー依頼があったからだ。商業でもなく、ましてや18禁でもないこのゲームを掲載する事に、正直少なからず抵抗があった。氏の熱意の籠められたメールを読み、サイトを見て興味を惹かれ、「これならば」とお受けした経緯がある。こうしてプレイし終えた今、全く後悔などしていない。そして声を大にしてこう言いたい。「エロゲーメーカー、手ぇ抜いてんじゃねえ!!」と。フルプライスPCゲーム級のパッケージの大きさにまず驚いた(*掲載CGがネタバレし過ぎな気がするが)。これだけでもその気合いが伝わってこようというものだ。この内容で定価3000円……なんと奥ゆかしい!ミドルプライスに設定しても誰からも文句が出ないだろうに。恐らくは普通にプレイして約25時間前後ぐらいのボリュームがある。ならば微力ながら全力全開で協力しよう。このレビューを読んで少しでも興味を持った人達よ、さあ今すぐ購入し、楽しみ、感心し、布教するのだ。
 第一印象は、漫画「ぼくらの」の設定で行われるバトルロワイアル物。しかし違った。確かにバトル要素はかなり強いが、そこにミステリ的なエッセンスを含める事により、ただ淡々と左クリックを続けるゲームではなくなった。「この先どうなるの?」「早く続きを知りたい!」と思わせるだけの筆力と作品全体の魅力がある。読点の打ち方なども巧い。ボイスなしの作品ではあるが、それをマイナス要素と感じさせないだけのシナリオとテキストだった。コメディシーンは時々挿入タイミングを疑問に思った事もあったが、近年の他作品にありがちなネット用語に走り過ぎる事なく、適度なパロディネタを仕込んでいて肩の力を抜かせてくれる。下ネタは多目。――ライターとしての力は大した物だが、あくまでCGありきのゲーム用のテキストスタイルであるため、絵に頼り過ぎており、描写が足りずにプレイヤーの想像力に依存する場面も多い。この問題は、台詞の後に「○○はそう言って肩をすくめた」などのフォロー文を1行入れる事でかなり変わるだろう。誤字脱字の多さ改善を含め、今後に期待する。
 「30年後から来た」という、妙に近未来の設定が巧い。これは「やって来た」と言うのがポイントで、もし「30年後が舞台」としていればありふれた駄作になっていただろう。このライターは、そういういい意味でちょっとしたアイデアが光。もう散々手垢の付いたモチーフである「タイムマシン」「平行世界」「進化するクリーチャー」などを使いながらも、きちんと制限された中での超人異能力バトルを成立させている。ご都合主義がほとんど存在しないのも高評価に値するが、最大のキーマンかもしれない「高階愛夜」がこの扱いなのはいただけない。「想像の余地を残す」のと「説明不足」とでは大きな隔たりがあるのだから。エンディングだけを見れば、ともすれば「後味が悪い」と評されかねない構成だが、これは設定上仕方がない。とは言え、ないと思っていたヒロインとのハッピー(?)エンドがいくつかあったので溜飲は下がった。
 主人公は典型的な巻き込まれ型で、その生い立ち以外は性癖を除くと何の特徴もない。身体能力が高い訳でもなく、頭脳担当でもない。美形でもなく、無駄にモテたりもしない。ADVではとかくこういった主人公は嫌われる傾向にあるが、それでいて無個性に映らないのは得難い資質と言える。特殊な境遇にある彼は、それ故に斜に構えている。ある程度納得はできるのだが、それでもあまりにも冷静過ぎるのはいかがなものか。緊張感があるのかないのか分からなくなる場面が時々あった。そもそも、自ら別れ話を切り出し、未練もほとんどなさそうな彼女のためにここまでやるだろうか?最後まで釈然としなかった点がそこだ。「普段の態度はポーズで実は熱い奴」的な描写がもっとあれば、より彼を受け入れやすくなった事だろう。
 この作品は、とにかくキャラが多い。さぞかし難産であっただろう。その怒涛の登場ラッシュに序盤は戸惑うだろうが、どのキャラも非常に立っており、没個性なのは1人もいない。バトル物である以上どんどんリタイアしていくが、使い捨て感がなく、好感が持てる。原画家が複数携わっているが、全体として絵の違いによる違和感は少なかった。ちなみに私は男性キャラでは橋本、女性キャラでは彼方が好きだ(ヒロインは○○……ネタバレになって言えない!)。選択肢によって髪型が変わるキャラが2人もいるのもがんばっている。
 エンディングは全部で10あり、大きく3つのルートに分類できる。エンディングを迎える度にルートが開放される形式の1本道ではあるが、即バッドエンド行きの選択肢など、しっかりと分岐があり、デジタル紙芝居では終わっていない。惜しむらくはスタッフロールをスキップできない点で、周回プレイ前提の作りでこの仕様は不親切。CG達成率が表示されるはいいが、シナリオ達成率の表示も欲しかった。設定資料が見られるミニゲーム(リバーシ。最強レベルの強さはまさに『インフェルノ』)を含めて見ると、ゲームとしてなかなかに歯応えのある物に仕上がっている。一部バッドエンド後に裏話コーナーがあるのだが、かなり物語の核心に突っ込んだ内容で、できる事なら本編に盛り込んでもらいたかった。
 「本当にこれで『全年齢対象』?」と苦笑させられるラインを狙ったエロ要素(足コキなど)とグロ描写にただならぬセンスを感じた。こういう書き方はしたくないのだが、あえて分かりやすく他作品名を評してみよう。「あやかしびと」クラスの熱さがある。「月姫」ファンディスク「歌月十夜」の「遠野家のコン・ゲーム」以来味わえなかった、「同人なのにすげえな!」と言う手応えがあった。「キラークイーン」?あの程度の物と比べないであげてください。
 この作品の最大の難点は、システムのダメさである。せっかくこれだけのシナリオと演出が楽しめるのに、それが快適に没頭できる環境がない。タイトル画面のコンフィグは「Extra」内から独立させるべきだし、(「ゲームスタート」内の「ニューゲーム」と「ロード」も同様)、セーブ&ロードはせめて1ステップでできるようにさせるべき。毎回何かの度に右クリック×2はかなりの苦痛だった。他には、シーンが変わるごとに現在位置と時刻表示が出るのだが、それをクリックで飛ばせないので、ゲームテンポをかなり悪くしてしまっている。ページが変わるごとのテキスト表示レスポンスの悪さや既読スキップ判定の甘さなどなど、これらを改善すれば一気にストレスがなくなるのは間違いない。
 CG総数は差分を含めて123枚で、イベントCGの他にもカットインが実に効果的に使われていて、視覚的にも飽きさせない。実写をベースにした背景にも臨場感があった。が、背景CGは豊富なのに、「このシーンでイベントCGが欲しい!」と歯噛みする場面が多いのが無念。あとコメディパートでのSD絵は違和感があり過ぎたような気がした。残念なのは、時々テキストとCGの整合性が取れていない場面が発生してしまっている事。眼帯をしているはずなのにしていなかったり、仮面を飛ばされたはずなのにしたままだったり、斬られたはずの腕があったり。スケジュールや予算の都合などの問題はあるだろうが、これらは「作り込みが甘い」と取られても言い訳ができないのでがんばって欲しかった所だ。
 ぶっちゃけ、なんと売上が思わしくないらしい。なんてこった!そんじょそこらの定価9240円エロゲーどもなんぞ鼻で笑える出来なのに。色々厳しい指摘はしたが、これが売れないなんておかしい。間違っている。ではなぜか、宣伝が足りないのだ。もったいないのは、公式サイトやパッケージ裏の煽り文。これでは「あー、ありがち」とスルーされてしまう可能性が高い。違うんだ。違うだろう?ただの超人バトル物ではない事をもっと匂わせるべきだ。そしてもう1つそこに付随して私の好み丸出しで苦言を呈するのであれば、タイトルが弱い。確かにミスリードのカタルシスは味わえる。だが、物語の真相を鑑みても、15人の未来人押しは外していると思う。売れるかどうかは目立ってナンボ。インパクト重視かつオリジナリティがそこにはないと。せっかく各エンディング名がかっこいいのに。
 ――代表、ここは一念発起して18禁要素全開にして商業に殴り込むべきなんじゃ?もしくはPSP移植、絶対行けますって!こちとら心中する覚悟完了しております。


「FifteenHounds -フィフティーンハウンズ-」(MUYM)



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