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パネキット〜コーンロータのメカニズム(仮説)〜

t[sec]時間にθ[rad]だけ回転する物体の角速度は
 (式1)ω=θ/t[rad/sec]
一回転(2π[rad])するのにかかる時間をT[sec]とすると
 (式2)ω=2π/T[rad/sec]
回転半径がr[pm]のとき、一周の距離は2πr[pm]だから、一周するのにかかる時間がT[sec]ならば、[距離]=[速度]×[時間] ⇒ [速度]=[距離]/[時間]より、回転軌道の接線方向に向かう物体の移動速度は
 (式3)v=2πr/T=r(2π/T)[pm/sec]
式2を式3に代入すると
 (式4)v=rω[pm/sec]
 (式5)ω=v/r[rad/sec]
等角速度円運動する場合、向心力Fiと遠心力Foはつりあっており、それらの大きさは
 (式6)Fi=Fo=mrω^2
式6に式5を代入すると
 (式7)Fi=Fo=mr(v/r)^2=mv^2/r[Pa]
ところで、[力の大きさ]=[質量]×[加速度]だから
 (式8)F=ma
式6、式7と式8を比較するとFはFi(またはFo)に対応するから
 (式9)a=rω^2=v^2/r[pm/sec^2]
ということが分かり、等速円運動では式9で示すような加速度が物体に発生していることとなる。
では、この加速度とは何を表しているのか?

 物体に加速度が生じていないとき、物体は静止しているか慣性の作用によって等速直線運動をしている。等速円運動はこれらのどちらにも該当しないので、確かに加速度が発生していることは間違いない。
 等速円運動している物体は慣性の作用によって円軌道の接線方向に動き続けようとするが、加速度が発生しているためその運動方向が変化する。ある瞬間の物体の運動を捉えれば、物体は円軌道の内側を向くように移動方向が修正され、こうした運動方向の修正の連続系が等速円運動になる。
 そして円軌道の内側を向くような移動方向の修正をもたらしているものが、この物体に発生している加速度であり、その発生源が向心力である。
 なお、遠心力はこのとき向心力と同じ大きさで反対向きに発生しおり、合力としては完全に打ち消しあっているが、加速度は残る。「合力0なのに加速度がある?」というのは不可解にも思えるが、それが「円運動」というものの特殊な性質であると、この場では説明しておく。
 さて、円運動する物体には軌道の内側を向く加速度が発生することが分かった。
 ところでパネキットでは、パネルに働く力の大きさと向きは、実験室で赤い矢印(三角形)によって表されることとなっているが、F=maであることからも明らかなように力と加速度は比例関係にあるのだから、この矢印は同時に加速度の大きさと向きを表していると解釈してよい。
 また仮説として、パネキットにおいて力とは単純に加速度に係数を掛けたものとして内部で処理されているのではないかと推察する。
 この場合、円運動する物体については、力は向心力と遠心力の2つがあるが、加速度は回転の内側を向くものしか存在しない。加速度をそのまま力として置き換えた時点で、遠心力の概念が抜け落ち、物理シミュレーションとして最初の不備が生じることとなる。
 なお、パネキットにおいて遠心力が作用しないことは、フリージョイントで接続されたパネルを回転させる実験によって確認できる。本来、物体を円運動させるために第一次的に必要な力が向心力であり、この向心力に対抗して発生する反作用の力が遠心力である。向心力は物体を支えるものに剛性(変形することに抵抗する性質)があって初めて発生しうる力である。フリージョイントは剛性の低い(外力に対して変形しうる)物体と見なせるので、その先にパネルを繋いで円運動させれば、その半径・回転速度で円運動させるのに必要な向心力が十分に発生せず、パネルは外側に広がるはずである。しかし実験結果では、回転半径が小さくなるよう内側へと狭まってしまうのである。
 パネキットにおいては、円運動では向心力とそれに伴って発生する加速度のみが考慮されているものとして考察を続ける。
 試しに円筒を作って回転させてみると内向きに矢印が伸びていることが確認できる。これが即ち向心力、またはそれによって発生した加速度を表しているのではないだろうか?
 だとすれば、パネキットでは少なくとも向心力に関してはきちんとシミュレーションが行われていそうである。
 しかし、問題はここからである。
 円筒の縁を外向きに折り曲げて同じように回転させてみると、確かに内向きに加速度(向心力)を生じることとなるが、その向きが回転軸に向かって垂直に伸びておらず、パネルの折り曲げ方向にずれた向きを指している。
 実はここが誤りであり、物理シミュレーションとしての第二の不備である。
 この場合の加速度(力)はパネルの折り曲げ角度に関わらず、回転軸に対して垂直な方向を向いていなければシミュレーションとして正確とは言えない。
 しかし物理演算処理を実装するに当たって、少しでも処理の負荷を低減させるため、パネルに働く加速度(力)の向きは(重力を除いて)一律にパネル平面から垂直な向きに働くように、処理が丸められたのだろう。あるいは、パネルに作用する力は重力と空気抵抗の2種類のみとし、それぞれ別の演算を用いてシミュレーションを行っているが、向心力に関する演算を追加するだけのパフォーマンス上の余裕がなく、仕方なく空気抵抗と同じ処理を用いることにしたのだろう。(少なくとも重力と同じ処理を用いるよりは、現実に近いものとなるだろう。)
 これが結果として、コーンロータが揚力を発生させるメカニズムになっていると解釈する。
 @遠心力、A向心力の向き(ベクトル)、少なくともこのどちらかが考慮され現実の物理に照らし合わされた実装が成されていれば、即ち向心力や遠心力といった重力とも空気抵抗とも異なる力学上の力に関する特別なシミュレーションがされていれば、このようなパネキット特有の現象は発生しなかったものと思われる。

向心力発生図

本来は青矢印のような力が働くが、処理を丸めた結果、赤矢印の成分のみを採用している可能性がある。
その結果、パネルを上向に引き上げる力(揚力)が発生してしまっている可能性がある。

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